画像:内部空間に有機分子が挿入されたカーボンナノチューブの構造模式図 (東北大学岩佐義宏教授らのカーボンナノチューブと有機分子の複合材料の研究から、岩佐教授の許可を得て掲載)
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Japan Nanonet Bulletin 第21号 : 2003年 6月10日

研究者通信

水野 清義 氏
水野 清義(みずの せいぎ)氏
九州大学大学院 総合理工学研究院
物質科学部門 助教授
科学技術振興事業団 さきがけ研究21「ナノと物性」研究員
1990 北海道大学 触媒化学研究センター 助手
1997 九州大学工学部 応用物理学教室 助教授
1998 現職
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九州大学大学院 総合理工学研究院
物質科学部門 助教授
科学技術振興事業団 さきがけ研究21「ナノと物性」研究員
水野 清義 氏

固体表面の原子配列決定と表面微小領域の構造解析法の開発

固体表面に形成される構造を原子レベルで解明することは、その物性などを評価する第一段階として避けて通ることのできない課題である。私は低速電子回折と走査トンネル顕微鏡を用いて、表面上に形成される、基板原子の移動を伴った構造について研究を行ってきた。図1はCu(001) 表面上のリチウム原子吸着についての研究結果である。低速電子回折では単位格子内の原子座標を0.01 nm程度の精度で決定することができる。図1(a) が回折パターンで、(b) は解析により決定した構造モデルである。この表面を走査トンネル顕微鏡で観察すると図1(c) の像が得られた。明るい点が4つの吸着リチウム原子に相当する。走査トンネル顕微鏡ではステップや欠陥などの様子を直接観察することができる。単位格子内の構造が低速電子回折により明らかになっているので図1(d) のようなステップ近傍や欠陥を含んだ原子レベルのモデルを作ることができた。現在は2種類の吸着原子が作るmixed ordered structureの形成とその構造解析に力を入れている。

一方、周期性を持たないナノ構造や、ドメインの小さな構造は、通常の回折法が使えないため、その構造を原子レベルで決定することは一般に困難である。透過電子顕微鏡において収束電子回折法による解析が試みられているが、薄膜でなければ適用できない。また、低速電子顕微鏡により100 nm程度の狭い領域からの回折パターンの測定も可能となってきているが、私はさらに狭い領域からの低速電子回折パターンを得るために、走査トンネル顕微鏡探針からの電界放出電子ビームを利用した装置の開発を行っている。図2に開発中の装置の概念図を示す。まだ明瞭な回折パターンを得るには至っていないが、電界放出電子が試料表面で弾性散乱されて検出されたと認められる散乱パターンを得ることができた。今後、探針先端の形状を制御して良質な電界放出電子ビームを取り出し、微小領域からの回折パターンの検出を進めて行く予定である。


図1.
図1.
(a) Cu(001)-(4x4)-Li 表面の低速電子回折パターン。
(b) 低速電子回折により決定した構造モデル。
(c) その走査トンネル顕微鏡像。(d) 白い長方形の中の原子配列モデル。
図2.
図2.
開発中の、走査トンネル顕微鏡探針からの電界放出電子線を用いた低速電子回折装置の概念図。

関連論文:
  1. Mizuno, S., Tochihara, H., Matsumoto, Y. & Tanaka, K.
    STM observation of restructured Cu(001) surfaces induced by Li deposition.
    Surf. Sci. 393, L69-L76 (1997).
  2. Mizuno, S.
    Development of an advanced low-energy electron diffraction technique using field-emitted electrons from scanning tunneling microscope tips.
    J. Vac. Sci. Technol. B 19, 1874-1878 (2001).
  3. Mizuno, S., Fukuda, J. & Tochihara, H.
    Extraction of scattered low-energy electrons in field emission conditions.
    Surf. Sci. 514, 291-297 (2002).