画像:内部空間に有機分子が挿入されたカーボンナノチューブの構造模式図 (東北大学岩佐義宏教授らのカーボンナノチューブと有機分子の複合材料の研究から、岩佐教授の許可を得て掲載)
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Japan Nanonet Bulletin 第61号 : 2004年 4月 6日

研究者通信

早稲田大学大学院理工学研究科 助教授
谷井 孝至 氏

シリコンナノ構造配列の作製と生体分子への応用

我々はシリコンやガラス基板上へのナノ構造一括形成技術の構築、ナノ構造上への生体分子の高密度配列固定、およびナノ空間における一分子相互作用の観察と解明を目的に研究を進めている。生体は表面の形状、親水性・疎水性などの化学的性質によって相手を認識し、触媒反応や抗原抗体反応を発現する。そこで、人工的にシリコンやガラス基板上にナノ構造配列をつくり、凹凸や化学的性質を与えることにより、生体分子を整然と配列させたり、任意の形状にパターニングしたり、電子デバイス上に固定したりしている。

人工的にナノ構造配列を作るために、リソグラフィーを中心とする従来のトップダウンアプローチを用い、そこに化学的性質を与えるために、有機分子や生体分子の有する自己集合化または自己組織化をうまく用いて、これらの分子にとって居心地のよいナノ空間を任意のパターン上で作り、パターン通りにDNAを配列させたり、タンパクを一分子ずつ選択的に固定させたりできる手法を構築している。

有機シラン自己組織化単分子膜に電子ビームを照射すると、単分子膜を取り除いて極微小なパターンを作ることができる。疎水性の単分子膜は親水性の生体分子を吸着せず、親水性の単分子膜は様々な生体分子と反応しやすい。したがって、疎水性の単分子膜と親水性の単分子膜の領域をパターニングした基板を生体分子の溶液につけると、親水性の領域にだけに生体分子を選択的に固定することができる。例えば、親水性のアミノ末端基を有する単分子膜とアミノ基を末端につけたDNAとを架橋剤でつなぐと、この領域だけにDNAを固定することができる。DNAに限らず、アミノ基をつけた分子ならその機能を失うことなく何でも固定できる。

生体分子は、分子認識能・触媒能・自己修復機能など洗練された機能を有することが知られており、パターン上への選択的な配列固定は、生体分子の機能をデバイスと統合するための基盤技術となると考えている。

谷井 孝至 氏
谷井 孝至(たにい たかし)氏
早稲田大学大学院理工学研究科 助教授
 
1996  早稲田大学大学院理工学研究科 電気工学専攻 修了
日本電信電話(株)入社
2001  早稲田大学理工学部 助手
2002  博士(工学)
2003  早稲田大学大学院理工学研究科 ナノ理工学専攻 講師
2005  同助教授
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図1
図1.
電子線リソグラフィーにより作製した有機単分子膜パターン(サイズ:250nm、ピッチ:2.5μm)上へのDNAの高密度配列固定とハイブリダイゼーション(蛍光顕微鏡像)。
図2
図2.
金属微小開口部に固定したGroELタンパクの蛍光顕微鏡像。量子退色から開口部にはタンパク一分子が固定されている。溶液中には高濃度の蛍光分子を浮遊させているが近接場で観察しているためノイズにならない。

関連論文:
  1. Tanii, T., Hosaka, T., Miyake, T., Zhang, G-J., Zako, T., Funatsu, T., Ohdomari, I.
    Preferential immobilization of biomolecules on silicon microstructure array by means of
    electron beam lithography on organosilane self-assembled monolayer resist.
    Appl. Surf. Sci. 234 (2004) 102-106.
  2. Zhang, G-J., Tanii, T., Zako, T., Hosaka, T., Miyake, T., Kanari, Y., Funatsu, T., Ohdomari, I.
    Nanoscale patterning of Protein Using Electron Beam Lightography of Organosilane Self-Assembled Monolayers
    Small 1 (2005) 833-837.