物質・材料研究機構 ナノマテリアル研究所
ナノ電気計測グループ 主任研究員
科学技術振興機構 ICORP
ナノ量子導体アレープロジェクト 研究員(兼務)
内橋 隆 氏
ナノ電気計測グループ 主任研究員
科学技術振興機構 ICORP
ナノ量子導体アレープロジェクト 研究員(兼務)
内橋 隆 氏
半導体表面超構造から創製された
原子スケール低次元導体の電子輸送現象
半導体清浄表面に異種原子を単原子層程度堆積させて適切な処理を行うことで、多種多様な表面超構造を形成することができる。表面超構造は一般に、堆積した異種原子と基板との強い相互作用および系の低次元性に起因して、もともとのバルク物質とは本質的に違う特異な原子構造と電子状態を有している。
われわれは、この中でも特に一次元的な性質をもつ原子スケールのナノ細線構造に注目して、その電子輸送特性を実験的に解明し、さらにはナノエレクトロニクスへ展開することを目指している。
このような一次元超構造の代表例として、わずか2列の原子鎖の集合体であるシリコン表面上のインジウム原子細線列をとりあげ、その電気伝導特性の解明に初めて成功した。測定の結果、室温付近では驚くべきことに巨視的なスケールにわたって、約30kΩの面抵抗に相当する高い電気伝導度が観測された。さらに、この原子細線列を通過する電流は、表面ステップ付近での欠陥や細線上に導入したわずかな点欠陥によって強く抑制されることを見いだした。
また、電気伝導度の温度変化を測定したところ、約130Kで伝導度が急激に減少し、細線が絶縁体化することを発見した。これは、1次元電子系に特有のパイエルス不安定性によるものと考えられ、基礎電子物性の観点から興味深い。
さらに、個々の原子スケール細線の電気伝導特性を測定するため、試料表面を汚染することなく微細電極を接続する手法を開発している。これまでにシリコン表面上に成長した単独のエルビウムシリサイドナノ細線に電極を取りつけることに成功している。将来的には有機分子と組み合わせ、ナノ細線のもつ磁性を発現させることも視野にいれて研究を行っている。



