小松 正二郎 氏
ナノチューブを超えるFED向け電子放出材料 新型窒化ホウ素薄膜の開発
窒化ホウ素(BN,熱力学的平衡相は六方晶-sp2結合により構成される)は、いわゆる高温耐火物として知られ、ルツボにも使用される等、抜群の化学的・物理的安定性を誇る。さらに、その高温高圧相として合成される立方晶窒化ホウ素は、シリコン・ダイヤモンドと同様の四面体配位型のsp3結合によって構成され、ダイヤモンドに次ぐ硬さを持つことが知られている。一方、ダイヤモンド、AlN、BN等のワイドバンドギャップ物質は負性電子親和力(negative electron affinity, NEA)を持つことが経験的に知られており、これによる電界電子放出特性の向上が期待され、電子放出材料としての可能性も検討されている。
われわれは、このようなBNのもつ著しい機械的特性とユニークな電子特性をうまく結びつけることで、従来にない特性を持つ新物質の開発に成功した。即ち、プラズマにより発生した前駆体ラジカルからのCVD(化学的気相成長)において、193nmの紫外エキシマレーザー光により表面反応を選択的に励起することで、sp3-結合性5H-BNという新型のBNを世界で初めて合成したのである。さらにこの薄膜はカーボンナノチューブに優るとも劣らない電界電子放出特性(低閾値、大電流密度)を持つことが分かってきた。これまで電界電子放出特性において、8V/μm で0.9A/cm2 という大電流密度が得られ、閾値も6V/μmと低い。この優れた特性は、電界電子放出 (FE)に適した紡錘形のエミッター的モルフォロジー(表面形態)が自己造形的に形成されることと、この物質特有の物性によるものと考えられるが、電子放出特性の発見後日が浅く、本質的には未解明な部分も多い。
この新型窒化ホウ素薄膜は、エミッター形状の自己造形性による低コスト化、BN自体のタフネス、優れた FE特性等のコンビネーションを生かした応用がディスプレイ、照明、ナノリソグラフィーなど、広い分野で期待できる。現在、ここで紹介したデータを大きく上回る結果が出てきており、今後の研究の展開が大いに楽しみである。



