画像:内部空間に有機分子が挿入されたカーボンナノチューブの構造模式図 (東北大学岩佐義宏教授らのカーボンナノチューブと有機分子の複合材料の研究から、岩佐教授の許可を得て掲載)
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Japan Nanonet Bulletin 第81号 : 2005年1月26日

研究者通信

斉藤 美佳子 氏
斉籐 美佳子(さいとう みかこ)氏
東京農工大学大学院 共生科学技術研究部 生命機能科学部門 助教授
1994年3月東京農工大学大学院工学研究科 博士後期課程物質生物工学専攻 修了(博士(工学)取得)
1994年4月
〜1994年4月
訪問研究員(オーストラリア・マクアリー大学)
1995年4月
〜1996年10月
日本学術振興会 特別研究員
1996年11月
〜2000年12月
東京農工大学工学部生命工学科 生体機能工学講座 助手
2000年4月
〜2000年10月
東京農工大学在外研究員(米国・コネチカット大学)
2001年1月
〜2003年6月
東京農工大学工学部生命工学科 生体機能工学講座 講師
2003年7月
〜現職
東京農工大学工学部生命工学科 生体機能工学講座 助教授
2003年11月
〜2003年12月
文科省日瑞国際交流プログラム研究員(スウェーデン・シャルマー大学他)
2004年11月
〜2004年11月
文科省日瑞国際交流プログラム研究員(スウェーデン・カロリンスカ研究所)
 
専門分野
細胞工学。学生時代から一貫して単一細胞にこだわってきた。最近では、ES細胞やES細胞から分化した細胞およびクローン技術を駆使した「疾患モデル細胞」という新しい概念の確立に取り組んでいる。
 
受賞等
2000年4月「多機能型微小電極による単一細胞計測・制御」により電気化学会佐野賞(進歩賞)
E-mail:
東京農工大学大学院 共生科学技術研究部 生命機能科学部門 助教授
斉藤 美佳子 氏

単一細胞操作支援ロボットを用いたES細胞へのナノインジェクション

(Issued in English: March 8, 2007)

遺伝子を改変する技術は改変された遺伝子の機能を評価するために行われるもので、人の様々な疾患に関連すると思われる原因遺伝子の解明に役立つ。人およびマウスの全ゲノム配列が明らかにされたことで、ある遺伝子を改変してその表現型からその遺伝子機能を評価するという考え方が可能となった。それゆえ疾患を遺伝子レベルで理解し、それに基づく治療法の検討や新規薬剤の開発が試みられるようになってきている。疾患関連遺伝子それぞれについての遺伝子改変細胞をライブラリーとして得ることができれば、動物個体の代替として、薬剤の評価や治療法の開発などに利用できると期待される。

扱う細胞としてES細胞は非常に魅力的である。ES細胞を遺伝子改変してES細胞チップを作ることが可能となり、そこから分化させた細胞を用いて疾患関連機能の解析が可能となる。ES細胞を遺伝子改変する方法として、細胞内へ複数の物質を直接導入することができるインジェクション法は極めて有用である。しかし、インジェクションを行うには、顕微鏡を覗きながら細胞の選択、保持、細胞へのキャピラリーの刺入などの一連の操作が必要なため煩雑で多くの時間を費やす。そこで、これらの作業を高効率で行えるように、駆動部の集中制御、細胞位置登録機能などを有する、単一細胞操作支援ロボットを開発した。このロボットを用いて接着性の細胞へ遺伝子のインジェクションを行ったところ、従来に比べて10倍以上高速に処理できるようになった。さらに、これまでES細胞のインジェクションに成功したという論文報告例はなかったが、この単一細胞操作支援ロボットを用いてES細胞への遺伝子導入に見事な成功を収めた。

今後、ES細胞内の細胞質に導入しなくてはならない場合が生ずるであろうことは、容易に想像できる。ES細胞の細胞質は非常に少ないため、これまでのマイクロインジェクションでは非常に狭い空間領域内のみに導入することは極めて難しい。ナノインジェクション法は、それを可能にするものと期待される。


図1
図1. 拡大
左右一対の3次元(XYZ)マニピュレーターを一対のジョイスティックで操作する。左側のマニピュレータには細胞保持用マイクロピペットを取り付ける。右側マニピュレーターには細胞刺入用マイクロピペットを取り付ける。
図2
図2. 拡大
ES細胞で恒常的に発現している遺伝子のプロモーターにレポーター遺伝子を挿入したプラスミド(pCMV-EGFP)をインジェクションしたところ、24時間培養後にGFPの蛍光が観察された。

関連論文:
  1. Matsuoka, H., Komazaki,T., Mukai,Y., Shibusawa,M., Akane,H., Chaki,A., Uetake,N. and Saito,M.
    High throughput easy microinjection with a single-cell manipulation supporting robot.
    J. Biotechnol. in press.
  2. Saito,M., Saga,A. and Matsuoka,H.
    Production of a cloned mouse by nuclear transfer from a fetal fibroblast cell of a mouse closed colony strain.
    Exp. Anim. 53 (5), 467-469 (2004).
  3. Saito,M., Mukai,Y., Komazaki,T., Oh, Ki-Bong, Nishizawa,Y., Tomiyama,M., Shibuya, N. and Matsuoka,H.
    Expression of rice chitinase gene triggered by the direct injection of Ca2+.
    J. Biotechnol. 105, (1/2), 41-49 (2003).