科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 さきがけ
「ナノと物性」研究者
須田 淳
SiC基板の表面ナノ構造制御による高品質AlNヘテロエピタキシャル成長の実現
広禁制帯幅(ワイドギャップ)半導体であるIII族窒化物(III-N)は次世代の通信用パワーデバイス材料として大きな期待を集めている。通信用パワーデバイスにおいては、大きな熱伝導率を持ち、電気的には絶縁性の基板が必要とされ、III-Nとほぼ等しい格子定数を持つシリコンカーバイド(SiC)が優れた候補として注目されている。しかし、現時点では、SiC基板上にエピタキシャル成長したIII-Nには多数の結晶欠陥が含まれており、高性能・高信頼性デバイス実現のためには結晶性のさらなる改善が必要である。
格子定数が近いにもかかわらず欠陥が多い理由として、III-NとSiCの結晶構造の違い、つまり、III-Nがウルツ鉱構造という2層周期の積層を持つのに対して、SiCは4Hや6Hと呼ばれる、4層や6層周期を持つことが挙げられる。4H-SiC(0001)基板上にIII-Nである窒化アルミニウム(AlN)を成長させると、SiCの各層上に成長したAlNの積層が、互いにずれてしまい、積層不整合境界(stacking mismatch boundary, SMB)という欠陥が多数形成されてしまうのである(図1)。原理的には、SiCのステップ高さを制御して、4層(1.0nm)となるような状態を作ることができれば、隣り合うテラス上で成長したAlNの積層が一致し、欠陥発生を抑制できると期待される(図2)。
本研究では、SiCのマイクロステップバンチング現象を利用して4H-SiC表面のステップ高さを1.0nmに制御した基板を用意した。次に、表面の極薄酸化膜を化学処理により除去し、さらに、成長装置内で表面に残留したわずかな酸素原子を除去することによりSiC清浄面を得た。この表面上にAlを先行して供給することでAlN成長開始直後からのLayer-by-layer成長を実現した[1]。約8層分AlNを成長したものを原子間力顕微鏡(AFM)により観察すると、三角形のAlN 2次元成長核が明瞭に観察された。4H-SiC基板の4層ステップを介して隣り合うテラスのAlNの核が同一方向、つまり、互いに積層が一致した(SMBの存在しない)AlNの成長に成功したことが示された(図3)。この方法で成長したAlNは、X線回折などの他の評価方法でも、SiCのステップ高さを制御しなかった場合に比べて格段の結晶性の向上がなされていることが確認されている。
本研究により、結晶の積層という観点でIII-N/SiC界面の高レベルな制御が可能になった。現在は、次のステップとして、III-N/SiC界面における原子配列を考慮した結晶成長によるさらなる高品質化に取り組んでいる。また、SiCを単に基板として使うのではなく、III-N/SiC界面それ自体をデバイスの活性領域に使用した新規デバイスの研究も進めている。
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| 図1. |
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| 通常の4H-SiC(0001)基板上に成長した2H-AlN。多数の積層不整合境界(SMB)が発生し、結晶性が悪化する。 |
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| 図2. |
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| ステップ高さを単位結晶格子である4層(1.0nm)に制御した4H-SiC(0001)基板上に成長した2H-AlN。ステップ高さ制御によりSMBが発生せず、高品質結晶成長が実現出来ると期待される。 |
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| 図3. |
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| マイクロステップバンチングを利用してステップ高さを4層に制御した4H-SiC(0001)基板上にMBEにより成長したAlN(膜厚2nm, Al-N 8層分相当)の原子間力顕微鏡(AFM)像。AlNの2次元核の三角形の方向がテラス間で同一、つまりSMBが発生していないことが確認出来る。 |
関連論文:
- Onojima, N., Suda, J. and Matsunami, H.
High-Quality AlN by Initial Layer-by-Layer Growth on Surface-Controlled 4H-SiC(0001) Substrate.
Jpn. J. Appl. Phys. 42, L445-L447 (2003).




