第9回非接触原子間力顕微鏡法国際会議
9th International Conference on Non-contact Atomic Force Microscopy
(平成18年7月16〜20日)
神戸大学理学部化学科
教授 大西 洋
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| 集合写真 拡大 |
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非接触原子間力顕微鏡とは?
非接触型原子間力顕微鏡(NC-AFM)は鋭利な針の先でなぞることによって固体表面の凹凸を絵にするタイプの顕微鏡である。探針先端を試料に接触させながら走査する通常のAFM、あるいは、間欠的に接触させるタッピング方式のAFMでは、表面を構成する原子一個一個を解像することは難しい。探針が表面に接触しないように精密に位置制御することでこの困難を解決したNC-AFMは、最近10年間に急速な発展をとげ、市販顕微鏡装置をもちいた原子分解能観察は日常的な実験操作になりつつある。
単なる凹凸像だけではなく、静電ポテンシャルの計測や、エネルギー散逸の計測を介して、表面の物性を計測することができる。類似の高分解能顕微鏡として走査トンネル顕微鏡(STM)があり、STMが導電性の試料しか観察できなかったのにくらべて、NC-AFMは導電性の有無にかかわらず像を得ることができる。分子エレクトロニクスで利用されるであろう大型の有機分子や、タンパク質・DNA などの生体分子の観察も可能になると期待されている。工業的に利用されている触媒や光学素子は絶縁性の物質で作られているので、導電性に影響されないNC-AFMでの観察が適している。
このタイプの顕微鏡に関して日本は世界一の実力を誇っている。無機材料を中心とした半導体工学から柔らかい生体材料にいたるさまざまなナノ材料をあつかう研究者が世界中から集い、顕微鏡を駆使した最先端の研究成果を交換するホットな国際会議になった。
NC-AFM2006会議の概要
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| 液中NC-AFMに関する口頭発表 |
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NC-AFM2006国際会議の参加登録者は229名であった。国別内訳は、日本169、ヨーロッパ諸国48(ドイツ・スイス・英国・アイルランド・スペイン・デンマーク・フィンランド・トルコ・チェコ・スロバキア・イタリア)、北米6(アメリカ・カナダ)、アジア6(台湾・韓国・中国)である。極東での開催であるにもかかわらず海外からの参加者が60名(26%)を数えたことは(1)会議主題である非接触AFMが新世代のナノプローブ技術として注目を集めていること、(2)我が国が非接触AFM研究において世界を先導する立場にあることの証左である。国内外の企業13社から出展をえたことは、ナノメータースケールの力学を基礎とした技術発展が産業界の関心を集めていることをあらわしている。
会議第一日は、日本学術振興会第167ナノプローブテクノロジー委員会の記念事業として走査プローブの各要素技術から国際標準化にいたる未来像を提示するSPM Roadmap Symposiumを開催した。第二日目から第五日目にかけて午前午後の口頭発表と夕方のポスター発表を含めて、産学研究者による活発なディスカッションが展開された。
口頭発表48件(海外26・国内22)とポスター発表80件(海外29・国内51)によって、非接触原子間力顕微鏡とその発展技術に関する最先端の研究成果が報告された。できるだけ多数の研究グループが口頭発表できるように、プログラム編成段階で工夫をこらした。旅費援助の対象者を選考するために、十数名の国際組織委員が発表申込のアブストラクトを採点し集計したところ30〜40才の研究者が多くの票を獲得した。優秀な若手がつぎつぎに参画する発展途上の研究分野であることがわかる。
研究発表
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ポスターセッションで熱心に議論する参加者 コーヒーブレイクでは神戸銘菓が好評であった |
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発表された主なトピックスは、アトムトラッキングを併用した精密な力学分光・生体物質の動きを観察する高速走査技術・原子分子の力学的マニピュレーション・絶縁体材料の表面構造評価・放射光との組合せによる元素分析・ケルビンプローブ顕微鏡による触媒評価などである。特筆すべきこととして、2年前のNC-AFM2004国際会議(シアトル)において我が国の研究者が発表した液体中での高分解能観察が着実に進展をとげるとともに、ヨーロッパ諸国による追撃がはじまったことがあげられる。また、探針にはたらく力を、探針-表面距離の関数として精密に計測することで、単一原子レベルの元素分析が可能になることが、超高真空中の実験で示された。NC-AFMのサイエンスとテクノロジーにおいては日欧のポテンシャルが高く、アメリカはキャッチアップに懸命な状況にある。
NC-AFM2006会議で発表された最新の研究成果は、サーキュレーションの高い学術雑誌であるNanotechnology誌に査読を経たのち原著論文として掲載される。SPM Roadmap Symposiumでの講演内容を、原子間力顕微鏡の進歩・国際標準化の動向という観点から総合的にまとめた総説論文二報を、会議論文と同時に掲載する予定であり、世界的にみてインパクトのある論文特集号(2007年2月発行予定)になると期待できる。
- 9th International Conference on Non-contact Atomic Force Microscopy(NC-AFM2006)
http://ncafm.ele.eng.osaka-u.ac.jp/index.html

