NanotechJapan Bulletin

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Vol. 1, No. 1, 2007年10月30日発行/NIMSナノテクノロジー拠点長に聞く

NanotechJapan Bulletin Vol.1, No.1, 2007 発行

NIMSナノテクノロジー拠点長に聞く


 「ナノテクノロジー・ネットワーク」プログラムは2007年4月から始まった文部科学省の委託事業であり,前期の「ナノテクノロジー総合支援プロジェクト」(3月終了)をさらに発展させたプロジェクトである.本事業は,日本のナノテクノロジー先端研究拠点として選ばれた13拠点が連携し,イノベーション創出に資することを目的としている.NIMSナノテクノロジー拠点は13拠点の1つとして当プロジェクトのリーダーシップを求められている.拠点長である独立行政法人物質・材料研究機構の岸輝雄理事長に,国内外のナノテクノロジー情勢をふまえた拠点運営の抱負を聞いた.

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NIMSナノテクノロジー拠点長 岸 輝雄理事長

「ナノテクノロジー・ネットワーク」プログラムへの期待

 ナノテクノロジー分野で「世界」という言葉はまさに変わりつつあります.これまでアメリカ,欧州,日本を指していましたが,近年,アジア各国の台頭が目覚しく,これからはアジア各国が「世界」に入ってきます.アジアを含む世界中でナノテクノロジーの重要性が認識され,更なるイノベーションに向けた拠点の設立と,その施設の共同利用に力を注いでいるというのが現在の状況です.

 このような中で「ナノテクノロジー・ネットワーク」プログラムでは全国13の研究拠点が採択されました.充実した微細加工施設,優れた超高圧電子顕微鏡施設,放射光施設の整備状況,卓越したNMR施設等を考えると,世界の最先端施設として十分に対抗できる設備内容と言えます.13拠点の施設・設備を有機的に運用することによって,我が国のナノテクノロジー分野における研究を先導することが期待されています.また,産業への応用を進めるにあたっては,知的財産の確保にも充分に配慮して世界戦略を練る必要があります.さらに,ナノテクノロジーの国際標準化と社会受容を目指した国際協力に重点を置くことも必要となります.この点からも国際的な連携が重要なキーワードとなります.

 もう一つの課題は,国内外でのネットワーク形成です.13研究拠点を結ぶ情報流通はもちろん,国内外の研究・開発の状況を的確に判断し情報の受信・発信を可能とするための情報ネットワークの構築が急がれます.真のネットワークにするためには,有効な情報を抽出し,それらを統合して将来の研究を先導することを可能とすることが必要ですから,得られた情報をいかに加工して有益なものにするかが大切です.この点を考慮して今後取り組んでいきたいと思います.こうしたネットワーク構築こそが分野融合を促進し,イノベーションに結びつく基盤を与えるものといえます.


「NIMSナノテクノロジー拠点」について

 NIMSは,基礎・基盤研究の遂行,社会への成果還元,施設・設備の共用,人材の育成という4つのミッションを掲げています.「ナノテクノロジー・ネットワーク」プログラムの中で設立される「NIMSナノテクノロジー拠点」は,レベルの高い研究拠点の構築とそれを起点とするネットワーク形成を実践していく場であると考えています.当拠点は,東洋大学と共同で運営する「ナノ融合支援センター」,「超高圧電顕共用ステーション」,「強磁場共用ステーション」の3つの研究拠点と「拠点運営室」で構成しています.特に力を入れている「ナノ融合支援センター」は,超微細加工の「ナノ造型ライン」,「ナノ融合集積ライン」,「ソフトマテリアルライン」,東洋大学を中心とする「シリコンライン」から成り,日本には類を見ない多種類の材料を扱えるファウンダリの創出が目的です.ここではシリコンに加えて,III-V族の半導体,有機・高分子材料,生体材料,さらに将来的には磁性金属等も視野に入れ,新物質創製や高性能材料を狙った幅広いマテリアル開発を行う拠点にしたいと考えています.

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 他のステーションとして,「超高圧電顕共用ステーション」では1000kVの電子顕微鏡を中心に各種の分析電子顕微鏡,「強磁場共用ステーション」では最高性能を有する930MHzNMR等を共用設備として提供するなど,計測,観察,評価に重点をおいています.さらに,SPring-8内のNIMSが専用しているビームラインを含めて最先端の機器も研究支援のために提供しています.

 当拠点のもう一つの役割は情報ネットワークの構築です.このための拠点運営室を設置し,13研究拠点のとりまとめを行うと同時に,国内外のネットワークの構築およびナノテクのための人材育成を推進します.アジアを視野にいれ,世界に拡がる日本のネットワーク構築をしていくために,日米,日欧,日本とアジア各国とのワークショップや意見交換,人的交流の促進に取り組みます.

 さらに,しっかり取り組まなければならない課題は,ナノテクの標準化とナノテクの社会受容です.標準化された手法を確立し,規格化された手法によって集積されたデータに基づいて安全性を実証し,社会受容に発展させていくという,段階を踏んだ国際協力があってこそ成り立つ課題です.このための仕組みづくりが重要と考えています.この成功のためにも,「ナノテクノロジー・ネットワーク」プログラムの課題は国際的なネットワーク作りにあると考えています.