NanotechJapan Bulletin

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Vol. 1, No. 1, 2007年10月30日発行/Nano Korea 2007参加報告

NanotechJapan Bulletin Vol.1, No.1, 2007 発行

“ナノテクは基礎と出口の両端に力を注ぐべき” -Nano Korea 2007参加報告-

 8月29~31日,韓国のソウル近郊において,Nano Korea 2007(5th International Nanotech Symposium & Exhibition in Korea)が開催された.主催は科学技術部および産業資源部である.東京のビッグサイトを思わせる巨大な会場KINTEXでは展示会と同時に各種シンポジウムも行われた.


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Nano Korea 2007 会場

[展示会]

 展示会には昨年を約1000人上回る6348人の来場者が詰めかけ,出展数も30%増えて153に達した.展示を分野別にみると,測定/分析装置37.5%,加工/プロセス35.4%,素材20.8%,デバイス5.2%,バイオ1%である.韓国の展示では,ナノインク,ナノインプリント関係が目を引いた.海外からは日本(11),ドイツ(8),アメリカ(10)を含む,計31件の出展があった.存在感を示したのはドイツで,ドイツザールラント州経済振興公社が連合ブースを設け,州内のナノ産業を紹介したほか,韓独産業化ワークショップも開催した.日本からは,nano tech 2008,物質/材料研究機構,東レリサーチセンター,NTT-ATなどが出展した.ナノセンサーをテーマとする韓日ナノテク産業化フォーラムも開催された.展示会への来場者には若者,特に学生が多く,目を輝かせて出展者に質問する姿が印象的だった.学生の参加が少ない日本のナノウイークとは対照的である.


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NIMS展示ブース



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展示会風景


[国際シンポジウム]

 シンポジウムの参加登録者は昨年より23%多い875人であった.昨年注目を集めたナノテク政策や国際連携に関するセッションは影を潜め,かわって特許や産業化に関する発表,中/高校生向け教育イベントなどが行われた.高校生向けナノテク教科書といえば台湾が有名だが,韓国でも最近教科書が発行され,会場に展示された.シンポジウムは,N. P. Suh氏(KAIST総長)の「ナノテク競争力の必要条件」,J. H. Kim氏(ベル研)の「経済成長,イノベーションとナノテクの役割」という2件の基調講演で幕を開けた.Suh氏の講演は特に示唆に富むものであったので,やや詳しく紹介する.

 Suh氏は,まずナノテクの問題点として,複数のスケールを同時に扱わねばならないこと,ナノ構造の設計指針が得られていないこと,やみくもな試行錯誤的研究が多く資金が無駄に使われていること,明快な応用が少ないこと,目標がはっきりしないとプロセス開発が難しいこと,などを挙げた.次に最近の優れた成果例としてCNTをもちいた廃水処理,ナノワイヤーセンサー,ナノドットアレー,表面コートしたCNTによるガン検出,2次元構造の折り畳みによる3次元構造作製などにふれた.さらに基礎研究の重要性を強調し,トライボロジー分野の最近の発展,特に表面ナノ粒子の除去が摩擦を低減させるという発見をもとに高性能コネクターを開発し起業化したケースを紹介した.ここで研究開発政策に話を転じ,韓国では個人主導型研究とグループ研究の比が20:80だが,これはむしろ80:20にすべきだと論じた.最後に「大学は基礎研究と出口の中間に重点を置く傾向があり,これは論文数を稼ぐには有効だ.しかしナノテクで本当に力を入れるべきは基礎と出口の両端であり,これらの両端にこそ力を注ぐべきだ」というメッセージを残して講演を終えた.

 プレナリーでは,横山直樹氏(富士通)が「富士通のナノテク研究開発」と題して量子ドットレーザ,カーボンナノチューブ,タンパクチップの研究開発を中心にオーバービューを行い,日本メーカーの底力を印象づけた.またB. Sachweh氏(BASF)は,ナノ材料合成のプロセス技術について講演した.これらの全体講演に続いて,ナノ計測とモデリング,ナノツールと製造,ナノ材料,ナノエレクトロニクス,ナノ教育,ナノ化学,ナノ物理,ナノバイオの各セッションがパラレルに開かれた.発表はすべて招待講演で,最先端の成果を発表するというよりも過去数年間の成果のレビュー,という趣のものが多い.そのせいか,聴衆の主体は(展示会と同じく)若者である.35件の発表のうち日本からは2件,米国は4件,フランスは1件であった

 強誘電体エレクトロニクスの分野では.石原 宏氏(東工大)が強誘電体ゲートをもちいたSiトランジスタと有機強誘電材料をもちいたキャパシタ/ダイオードの優れた特性を紹介し,さらに強誘電体ゲートCNTトランジスタ開発に向けた最近の研究にふれた.石原氏はナノコリア賞(科学技術部長官賞)を受賞した.J. S. Harris氏(スタンフォード大)は,ナノサイズ開口を備えた面発光レーザーを例として,光の回折限界をナノフォトニクスで超える試みについて語った.また,旬な材料であるグラフェンの物理に関してPhilip Kim氏 (コロンビア大)がレビューを行った.

 これらのセッション全体を通じて,ナノワイヤーに関する発表が目立った.この傾向は,サテライトとしてナノワイヤー研究会主催のワークショップ「IT-NT-BT融合技術の要素としてのナノワイヤー」が開かれたことにも現れており,ZnOを筆頭にSi,Bi,Ge:Mn,SiGe,Se,VO2など様々な材料,製法のワイヤーとロッドについて質の高い発表があった.ナノワイヤーは最近世界的に活発な分野であるとはいえ,従来出口寄りと見られていた韓国でこうした基礎研究が盛んに行われていることは興味深い.シンポジウムのサテライトとしては,このほかに「ガン診断のためのナノテクノロジー」,「ナノ構造材料に関する第5回国際シンポジウム:ITへの応用」,「第2回英韓ナノフォーラム」,「ナノインフラワークショップ」,「エネルギー変換/貯蔵のためのナノ科学」が開かれた.

 最終日には一般向け公開講演とナノインフラワークショップが行われ,特に後者ではNanoFabセンターなどのユーザファシリティが順番に発表を行ったが,韓国語だったのが残念である.次回のNano Korea 2008 は,来年の8月27日~29日に同じくKINTEXで開催される.