NanotechJapan Bulletin

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Vol. 1, No. 2, 2007年12月21日発行/MRS Fall Meeting

NanotechJapan Bulletin Vol.1, No.2, 2007 発行

MRS Fall Meeting 参加報告

 11/25~11/30に米国材料学会(Materials Research Society: MRS)主催の2007 MRS Fall Meetingが米国ボストンで開催された.毎年秋と春に行われ,材料の国際学会としては世界最大規模を誇るMRSの特徴は,評価が定まっていない面白い材料をテーマとして,世界中から研究者を集めて議論するというユニークなスタイルにある.参加者は,米国はもちろんヨーロッパ,アジア等広い範囲にわたり,特に日本の研究者の参加者が多く,この分野での日本のプレゼンスを反映していると思われる.

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左図:会場となったHynes Convention Centerの入口.右図:展示会場のNIMSブース


 講演会は全部で43のシンポジウムからなり,併設の展示会には245以上の企業/機関が世界中から参加した.材料の国際会議であることから,素材メーカ,材料生成装置・部品メーカ,解析・評価関連の企業が目についた.学会参加者は,トータルで5,000人以上と盛況であった.

 初日(11/25)は7つの分野でチュートリアル・セッションが行われ,材料科学の世界的な権威が若い研究者,学生を相手に充実した講義を行い,聴きごたえのある内容であった.トピックは磁性ナノ粒子,強誘電体およびマルチフェロイック材料,バルク金属ガラスの評価解析,磁気形状記憶合金,原子層堆積技術,ナノ構造の光学特性,量子ドット界面,生物学におけるナノ粒子,と幅広い.2日目(11/26)からは43のシンポジウムが同時に開催され,各会場で活発な議論が展開された.その日の夕方にはプレナリーセッションが開かれたが,それに先立ってSir Harold W. Kroto (1996年ノーベル化学賞)がKavli財団から“Fred Kavli Distinguished Lectureship in Nanoscience”を授与され,記念講演が行われた.「ナノサイエンス,社会と持続性」と題して,独特の語り口で1時間近くにわたって刺激的な講演を聴かせた.

 プレナリーでは,同じく1997年のノーベル物理学賞受賞者で現在Lawrence Berkeley National Lab. の所長を務めるSteven Chuによる講演が行われた.「世界のエネルギー問題 - 我々に何ができるのか」と題して,米国エネルギー省(DOE)所管の研究所の長としての立場から,世界のエネルギー危機の解決策に関して含蓄のある講演を聞かせた.このセッションは2人のノーベル受賞者の講演ということで,広い講演会場が超満員の聴衆であふれるほど盛況であった.

 3日目(11/27)の午後からは展示会場がオープンした.スタートアップ企業から出版関係企業,真空部品,各種測定装置メーカまで含めた多彩な展示会であった.物質・材料研究機構も,最近始まった国際ナノアーキテクト二クス研究拠点(MANA)のパンフレットを置いた展示ブースを開き,材料データベースの紹介などを行った.その日の夕方には全米科学財団(NSF)とエネルギー省(DOE)の材料科学に対する取り組みを説明するセッションが設けられた.日本ではこのような企画は少ないが,研究機関に資金を提供する政府組織の将来ビジョンを知るのには大変良い機会であると思われる.

 4日目(11/28)の朝には,朝食を兼ねて次期MRS会長であるSynthia A. Vokert主催の「材料科学と工学における女性についての朝食会」が開催された.参加者は,社会の様々な活動に女性を巻き込むためにMRSが行っている活動について討論した.女性の学会,社会への参加は世界的なテーマとなっており,このような形で特別セッションを組むのは有意義であると感じた.5日目(11/29)の夕方には3日目の夕方と同様な趣向で国防総省(DOD)に関するセッションが組まれ,空軍科学研究局(AFOSR),陸軍研究局(ARO),国防総省高等研究計画局(DARPA),海軍研究局(ONR)の材料科学戦略が示された.

 1週間にわたって開催されたMRS Fall Meetingであるが,材料分野の全体にわたってシンポジウムが企画され,世界最大の材料学会の名に恥じない活発な会議であった.


付記 ナノ構造太陽電池について

 太陽電池の分野では,主役であるシリコン系の陰で非シリコン系,特にナノ構造太陽電池の研究が勢いを増しており,MRSでもこれにフォーカスしたセッションが開かれた.発表件数と機関を日,米,欧,アジア(日本を除く)別に整理したものを表に示す.米国,欧州勢の攻勢が目立ち,アジア(日本を除く)では台湾が頑張っている反面,日本は件数,内容ともに勢いがない.この結果について豊蔵信夫氏(科学技術振興機構研究開発センター)は,「日本は現在の太陽光発電ビジネスに熱中するあまり,大学を含めて材料物理などの基礎研究がおろそかになっている.将来への備えが足りないのではないか」と警鐘を鳴らしている.

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     (注)括弧内は内訳,大は大学,研は研究,企は企業の略