NanotechJapan Bulletin

 メニュー

Vol. 1, No. 4, 2008年4月28日発行/アジアナノテクワークショップ2008報告

NanotechJapan Bulletin Vol.1, No.4, 2008 発行

アジアナノテクワークショップ2008報告

 アジアナノテクワークショップ2008は,ナノテクノロジー関係の国際ネットワーク組織であるAsia Nano Forum (ANF)の人材育成ワーキンググループと産業技術総合研究所,東京工業大学,物質・材料研究機構との共催で企画されたアジア・ナノテク・キャンプ2008の一環として開催された.アジア・ナノテク・キャンプ2008は,アジア諸国の優秀な人材育成と人的ネットワークの構築を通して,アジア諸国の発展と友好関係の強化に貢献することを目的として,産業総合研究所,東京工業大学,物質・材料研究機構,ANFの共同事業として企画され初めて開催された.

 アジア・ナノテク・キャンプ2008は2月4日から21日までの18日間におよぶ長いもので,参加者はANF加盟13カ国から選抜された修士課程の学生と助教クラスの研究者34名である.5日~8日につくば地区,12日~13日には東京工業大学で活動を行い,14日は東京ビッグサイトで開かれたnano tech2008を見学したのち,15日に同会場でワークショップを開催した.


j1-4-11.jpg j1-4-12.jpg


 参加者は,事前登録者および当日登録者が30名,アジア・ナノテク・キャンプの参加者と主催者側を含めて72名と盛況だった.アジア・ナノテク・キャンプの参加者の国別内訳は,日本(6名),中国(5),韓国(4),ニュージーランド(3),タイ(3),ベトナム(3),オーストラリア(2),香港(2),インドネシア(2),シンガポール(2),台湾(2),インド(1),マレーシア(1).テーマは,「アジア諸国におけるナノテクノロジー技術開発の展望」で,各国から1名の代表者が,自国のナノテク研究・開発の現状と展望について発表した.

 ワークショップでは,まずLerwen Liu氏(ANF)がANFの活動を説明し,次に竹村 誠洋氏(物質材料研究機構)が日本のナノテクノロジーへの取り組み体制を紹介した.続いて各国のナノテクノロジー研究開発の現状と展望について発表があった後,若手研究者からの発表が行われた.彼らの発表から見たアジアのナノテクノロジー研究開発計画では,医薬とエネルギー関連分野にウエイトが置かれていることが窺えた.

 発表者の身分は大学院の学生から助教クラスであるが,各国の技術開発の現状・規模から,どのような技術分野で自国の経済・社会を支えて行くべきか等の将来展望に至るまで非常に良くまとめられており,発表も堂々としたもので,参加者の質および意識の高さを感じた..ここに集まったアジアの若手研究者には,将来自国の政治・技術・経済の中心的な存在として国を引っ張って行くという気概が感じられた.また,今回発表した13名のうち5名が女性の研究者であり,アジア・ナノテク・キャンプ参加者の3割が女性であった.日本における女性研究者の比率に比べ,アジア諸国のトップ研究者に占める女性の比率の多さに,この地域のエネルギーを感じる.

 日本の研究者の発表も非常に良くまとまっていたが,国際的視野から見た日本の立場の解析・将来展望や,国を支えるという意識・気概に物足らないものを感じた.最近はアメリカの大学においても,理学・工学系の学部で外国人学生が増え,アメリカの優秀な学生は高収入が期待できる経済・医学・法律分野に行ってしまうため,理学・工学系に進む学生が減っているといわれている.筆者が日米若手研究者交流プログラムで訪問した米国の有名大学の研究室では,半数以上が非アメリカ国籍の学生のようであった.しかし,日本人学生の参加は年々減っているように思える.アジア諸国の学生は優秀な成績を取って自国に帰れば自国で活躍できるポストが待っており,研究意欲は非常に高い.日本も,国際的な視野と国を引っ張る気概をもったトップリーダー研究者を若いうちから育てて行く必要があると感じた.

 来年のアジア・ナノテク・キャンプは台湾での開催が決まっている.このような,国のトップリーダーを育成する活動が長く続き,日本からも優秀な学生が多数参加することを期待したい.

(NIMS 岡村 茂)