NanotechJapan Bulletin

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<第29回>
ナノメートルサイズの微粉末を作る粉砕・分散技術 ~高分散性ナノ粒子の実現による新産業創出への貢献~
アシザワ・ファインテック株式会社 代表取締役社長 芦澤 直太郎氏,開発担当 小貫 次郎氏,企画室 原田 香氏に聞く

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 微粉末の社会的ニーズは大きい.身近なところでは塗料やプリンタインクの顔料,磁気テープの磁性粉,電池の正負極活物質,医薬品等々である.そしてこれらは新機能を求める時,ナノ粒子化はさけて通れない道である.例えば,自動車用塗料は顔料の粒径がナノオーダになると艶が出る.日焼け止めに使われる化粧品の酸化チタン(TiO2)は粒径がナノオーダになると透明になり,塗った跡が残らない.医薬品では,サイズをナノオーダでコントロールすることで吸収性が良くなり,またドラックデリバリーが可能となる.

 アシザワ・ファインテック株式会社は,微粉末の製造装置メーカとして,次々に現れる社会的要求に応えるための技術開発を推進してきた.その進展の軌跡は,nano tech展(国際ナノテクノロジー総合展・技術会議)への出展歴に示されており,nano tech 2014では功績賞を受賞した.受賞理由は「nano techの第1回目である2002年から連続で出展.ナノメートルサイズの微粉末を作る粉砕・分散装置はナノテク分野の様々な新産業の創出に貢献して来た点を賞す.」である.

 そこで,千葉県習志野市のアシザワ・ファインテック株式会社(以降 アシザワ・ファインテック)を訪ね,芦澤 直太郎(あしざわ なおたろう)社長,小貫 次郎(おぬき じろう)営業第3課・開発担当マネージャー,原田 香(はらだ かおり)企画室課長代理にお会いし,アシザワ・ファインテックの粉砕・分散装置,特に粒子にダメージを与えることのないマイルド分散®を実現する“MAXナノ・ゲッター®”,およびあらゆる用途で粉砕・分散可能な“スターミル®LMZ”などにまつわる技術・ノウハウ及び今後の展開等について伺った.

1.微粒子技術で顧客と共に“新しい可能性の共創”を目指すアシザワ・ファインテック

 アシザワ・ファインテックは,微粉砕機・分散機の専門メーカとして最先端の装置の提供だけでなく,プロセスや運転条件を含めた技術コンサルティング,さらには受託加工を通して,顧客と共に“新しい可能性の共創”を目指している.

 資本金90百万円,売上高1,743百万円(2014年3月期),従業員124名の企業である.図1に示すように微粉砕・分散装置の着実な納入実績をあげており,顧客の信頼を勝ち得ていることがうかがい知れる.

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図1 製品群の納入実績 (提供:アシザワ・ファインテック)

 

 アシザワ・ファインテックは1903年に圧力容器・ボイラー等の製造を目的として創業し,以来110余年の歴史を誇っている.1946年,現在の事業の起源となる混合機・湿式粉砕機の生産を開始してからも約70年の歴史を持つ.

 研究開発においては,2012年に微粒子技術研究所を開設.専門技術者による微粉砕・分散に関する理論的解析と,学校・公的機関との連携により技術基盤の強化を目指している.また,開発部門では,顧客のニーズや市場の動向に的確に対応することを使命として,日々の製品開発に努めている.特筆すべきは,湿式の微粉砕・分散機に関して,業界最大手のネッチ社NETZSCH Feinmahltechnik GmbH(ドイツ)[1]と1984年に提携し,最先端の技術を両社で築き上げていることである.この技術提携をベースに,ナノテクノロジーの先端をいく日本企業の要望に応えるため,超微粒子化を可能にする機器・装置を独自開発している.

 製品群としては,微細化目的に応じ,最適な機種を提案できるよう,豊富なラインアップを取りそろえておりその一部を図2に示す.湿式/乾式,粉砕/分散,低粘度/高粘度,パス方式/循環方式などの仕様や,使用するビーズ径(ビーズ:粉砕メディア,使用可能ビーズ径:φ0.03~8mm)等,顧客は条件に対応した機種を選定できる.また粉砕・分散の前後機器として,固液を混合しスラリー化するプレミキサーや微細化工程の後の脱泡処理なども取りそろえ,微細化のトータルな要望にも対応できる体制を整え,先述のコーポレートスローガン「微粒子技術で“新しい可能性の共創”」を推進している.

 

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図2 製品群を示す模式図 (提供:アシザワ・ファインテック)

 

 縦軸は目標とする粒子径,横軸は「撹拌・混合」「分散」「粉砕」の使用目的を示し,顧客の要望に沿った装置を絞り込むことができる.本稿では,これ等の内,MAXナノ・ゲッター®とスターミル®LMZを中心に以下紹介する.

2.微粒子の必要性とその製法

 電子,電池,塗料,製紙,医薬等々の多くの業界において,新たな機能を求めて新規材料の開発が進められており,これ等の中で物質の微粒子化が追求される場合が多い.

 微粒子の生成方法は,砕料(被粉砕物)に機械的なエネルギーを加えて微細化する「ブレークダウン(break-down)」と,化学反応により原子やイオンあるいは分子の成長を制御することにより微粒子とする「ビルドアップ(build-up)」とに大別される.それぞれの方法で得られる粒子サイズは,ブレークダウンではマイクロメートルから数十ナノメートル領域であり,ビルドアップではサブミクロン(ナノメートル領域)となる(図3).

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図3 微粒子の製法:ビルドアップとブレークダウン (提供:アシザワ・ファインテック)

 

 ビルドアップは,ガスや溶液の化学反応,物理的な冷却などにより原子もしくは分子状の凝集性物質から核生成とそれに続く成長により,粒子へと作り上げられる.成長法には「気相プロセス(気相法)」「液相プロセス(液相法)」「固相プロセス(固相法)」があるが,いずれの場合も,凝集性物質が過飽和の状態となり,核生成による核粒子(クラスター)の発生とその後の凝縮,凝集,焼結,結晶化などにより微粒子となる.ビルドアップの具体例として例えばカーボンナノチューブ(CNT)があげられるが,生成直後の形態は通常強い凝集体になっており,これを機能性材料として使用するにはまずこの凝集体を一次粒子まで分散(解砕)する必要がある.その他の材料でも,一般にビルドアップで生成した微粒子は凝集体の形態をしていることが多い.

 一方ブレークダウンである粉砕法は,圧縮,衝撃,摩擦,剪断などの力を砕料に加え,砕料中に応力を生じさせてこれを変形し破壊させることによって微細化する.この粉砕法には「湿式法」と「乾式法」とがある.装置としてかつてはボールミルやサンドミルが使われたが,今日では短時間により微細化する方法としてビーズミルが主流となっている.またビーズミルは,ビルドアップ法で得られた凝集体の分散にも使われる.

3.ビーズミル

3.1 ビーズミルによる粉砕・分散の原理と運転方式

 図4にビーズミルの構成と作動を示す.粉砕室と呼ばれる容器の中に,ビーズを充填しておき,粉砕室中央の回転軸を回転させることにより,ビーズに運動を与える.湿式(図右)の場合は,ここに原料(粉体)を液体に混ぜたスラリーをポンプで送り込み,ビーズの衝突やずりによって微粉砕・分散する.スラリーとビーズの分離は,粉砕室の出口にある,遠心分離やスクリーン等によって行われる.乾式(図左)の場合は,原料(粉体)のみを定量フィーダで送り込む.また,粉体とビーズの分離は,粉砕室の出口にあるスクリーンで行う.

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図4 湿式,乾式ビーズミル (提供:アシザワ・ファインテック)

 

ビーズミルの構造,動きがよくわかる動画[2]

 

 使用するビーズは直径0.03~3mmの球で,ジルコニア(ZrO2)のようなセラミックスが代表例であるが,材質は目的に応じて,ガラス,金属等多様である(図5).

 

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図5 使用するビーズ (提供:アシザワ・ファインテック)

 

 また,運転方式には図6に示すようにパス運転と循環運転がある.

 

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図6 パス運転方式(左)と循環運転方式(右) (提供:アシザワ・ファインテック)

 

3.2 粉砕と分散

  粉砕は一つの大きな粒子を砕くことで,ビーズと粒子の間に働く摩擦と剪断力の複合的な作用(摩砕)によって行われる.一方,分散は微粒子の凝集体をほぐすもので,ビーズが流れの中で移動する際に生じる速度差による剪断力と,ビーズの自転による角速度差から発生する回転剪断力により行われる(図7).

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図7 粉砕と分散 (提供:アシザワ・ファインテック)

3.3 よりファインなナノ粒子を得るには

1)微小ビーズによるマイルド分散®

 図8に示すように,ビーズの径が1/2,1/4,1/8になると,①体積当たりのビーズの数は8倍,64倍,512倍になり,粉砕・分散を起す作用点の数が増加する.また,②一個のビーズの重量は1/8,1/64,1/512となり,③ビーズの総比表面積は4,8,64倍となり,粉砕・分散に小さな力を多数回与えることになる.これが“マイルド分散® (注1)で,アシザワ・ファインテックの登録商標になっている[3].例えば図9に示すように,100のエネルギーを1回で与えると,過分散になり粒子がダメージを受けやすくまた凝集しやすくなり,製品の特性も損なわれる.これに対し1のエネルギーを100回与える場合は,過分散を防止し粒子にダメージを与えることなく高品質・高精度に微細化できる.図10に示すように,小粒径のビーズを用いることによって,少ない投入エネルギーでよりファインな粒子が得られるから分散効率は高い.

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図8 ビーズの径と体積当たりのビーズの数 (提供:アシザワ・ファインテック)


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図9 マイルド分散® (提供:アシザワ・ファインテック)


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図10 ビーズ径と分散効率 (提供:アシザワ・ファインテック)

 

(注1) マイルド分散®
マイルド分散®とは,一次粒子のサイズ,形状,結晶構造,表面状態などを維持したまま分散させる技術である.

2)ビーズの流動を制御

 効率よく,よりファインなナノ粒子を得るためには,ビーズの動きを下記のように制御する必要がある.①ビーズが一部の特定位置に集中しないように,粉砕・分散室全体で均一に存在(マクロ的均一)するようにする.②総てのビーズが均一に動くようにする(ミクロ的均一).③働かない共回りビーズをなくし,ビーズの作用頻度を増やす.
 次章に述べる“MAXナノ・ゲッター®”はこれ等の条件を総て満たしたものである.

 マイルド分散®を実現するための運転条件には,小径ビーズの使用,ビーズ充填率を下げる,周速を下げるなどの方法があるが,小径ビーズは分離が困難で作業性が悪い,ビーズ充填率や周速の低減では能率が下がるなどのデメリットがある.しかし,ナノ・ゲッターシリーズでは遠心分離でビーズを分離することにより,小径ビーズが問題なく利用でき,高いビーズ充填率や高周速で運転しても一次粒子にダメージを与えないため,効率・能率を維持したままマイルド分散®が可能である.

4.よりファインなナノ粒子を実現する“MAXナノ・ゲッター®”:単段螺旋流のビーズが生み出す新しい粉砕・分散技術[4][5][6][7]

4.1 MAXナノ・ゲッター®の構成と作動プロセス

 図11にMAXナノ・ゲッター®を示す.(A)は装置外観,(B)は粉砕・分散部,(C)は作動説明図,(D)は遠心式ビーズ分離部,(E)は螺旋層流の形成を説明する図である.

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図11 MAXナノゲッター®の構成と作動プロセス (提供:アシザワ・ファインテック)

 

 図11(C)を用いてビーズの動きを説明する.回転羽(1)によって,ビーズ(2)の粉砕・分散容器(3)内周方向へ移動する流れ(一次流れ)と,続いて案内環(4)と粉砕・分散容器の内壁との間をビーズが上昇しさらに案内環上部から案内環の内部へ下降する流れ(二次流れ)との混合流れ(螺旋流)が生じる(図11(E)).

 次に粉砕・分散,ビーズの分離プロセスを説明する.

①供給口(5)から投入された被粉砕・分散粒子を含む原料スラリーは,上記のビーズの流れに乗って撹拌・混合・粉砕・分散されながら移動する.

②充分に粉砕・分散されていない大きい粒子はビーズと共に下降流となるが,粉砕・分散されたスラリーは案内環(4)上部に設置されている遠心式ビーズ分離部(6)に移動する.

③遠心式ビーズ分離部では,質量の大きいビーズは半径方向に付勢され,スラリーから分離される.ここで,被粉砕粒子のうち粉砕・分散が不十分で粒子サイズの大きいものはビーズと同様の挙動をする.

④一方,充分に粉砕分散されて質量が小さくなった粒子を含むスラリーは,出口(7)から粉砕・分散容器外へ取り出される.

 

MAXナノ・ゲッター®のビーズの動きがよくわかる動画[4]

 

 「MAXナノ・ゲッター®」の最大の特徴は,従来の概念とまったく異なった新しいビーズの流動である.粉砕室内でビーズを大流量で循環させ,そのビーズの動きをコントロールすることにより独特な“単段らせん状層流”を形成する.

 理想のビーズの動きを阻害する要素には,強すぎる衝撃力,局所的な強シェア,デットポイント,ビーズの供回り,乱流による粗密混在状態などがあるが,“単段らせん状層流”はこれらの阻害要素を排除し,粉砕室全体で均一な分散場を実現する理想のビーズ流動である.これにより高いビーズ充填率,高周速で運転しても粒子にダメージを与えることのない,つまり高能率を維持しつつ分散を実現できるようになったのである.さらに,ビーズが大量に循環することにより,多くの作用頻度を作り出すため効率的な分散が可能となる.また,ビーズ分離に独立駆動の遠心分離方式を採用したことにより,大型機においても小型機と同様の高い分離能力を確保できるため,スケールアップ性に優れている.このように,分散性とビーズ分離性の両面からみて大型化に適しており,ナノ粒子の大量生産が現実のものとなっている.

4.2 MAXナノ・ゲッター®による分散例:酸化チタン(TiO2)のマイルド分散®

 MAXナノ・ゲッター®による酸化チタン(TiO2)のマイルド分散®の結果を図12に示す.原料は30nmの一次粒子が強く凝集したものである(凝集物の粒径800nm).

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図12 MAXナノ・ゲッター®による酸化チタン(TiO2)のマイルド分散®
(提供:アシザワ・ファインテック)

 

 図12上右の写真は,原料,従来分散,マイルド分散®のスラリーで,微細処理後1年間放置後に撮影したものである.マイルド分散®は沈殿物がなくかつ透明である.数十nmオーダの小粒径に分散されていることが分かる.図12上左側のグラフは,従来分散と比較してマイルド分散®では,小さな投入動力で効率よく分散し微細化できていることが分かる.従来の分散では粒径150nm止まりであるが,マイルド分散®では,40nm近辺まで分散できている.図12上中央に示すX線回折結果では,従来分散が結晶性構造が崩れているのに対して,マイルド分散®は原料とほぼ同じ回折ピークを示しており結晶構造が保たれていることを示している.

 図12下の写真は,原料,従来分散後,マイルド分散®後の粒子形状を観察したものである.従来の分散では針状形状の一次粒子が壊れているが,マイルド分散®では針状形状を保っている.写真から求めたd50(粒径分布の中央値)は,原料が400nm,従来の分散が19.6nm,マイルド分散®が27nmで,またBET比表面積値は原料が111.8m2/g,従来の分散が144.3m2/g,マイルド分散®が111.4m2/gとなっていることからも,マイルド分散®では一次粒子が破壊されていないことを示している.

5.スターミルLMZ®[8][9[10]

 アシザワ・ファインテックは,微細化の目的に応じて,ビーズミルの機能を「粉砕向き」と「分散向き」の大きく二つに分けて提案している.先述の“MAXナノ・ゲッター®”は,粒子とビーズの剪断力が制御された「分散向き」のミルである.これに対し“スターミル®LMZ”は,粒子に大きな剪断力を与える「粉砕向き」のミルである.粉砕室はエネルギー密度の高い部分を有効に利用した狭い構造になっており,強力な剪断力によって粉砕し,高効率で微細化処理を行う.

 スターミル®LMZは大流量循環運転方式専用のビーズミルで,特許技術[9]である遠心分離スクリーンにより,ビーズがスクリーンに引き起こす様々な問題を解決し,小型機から大型機までスケールアップが可能であり,納入実績No.1の装置である.

 スターミル®LMZを図13に示す.(A)は装置外観,(B)は循環運転状況,(C)は作動説明図である.図13(C)を用いて,スターミル®LMZの作動プロセスを説明する.

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図13 スターミル®LMZの構成と作動プロセス (提供:アシザワ・ファインテック)

 

①撹拌軸(6)が回転し,棒状撹拌部材(7)によって充填されているビーズ(図示されていない)が運動している粉砕室(5)へ,スラリー入口(11)から被粉砕物であるスラリーを投入する.

②粉砕室で粉砕されたスラリーはビーズと共に矢印(20)に沿って移動し,スラリーはスクリーン(14)を通りスラリー出口(13)を経てスラリー出口管(18)から取り出される.

③質量の大きいビーズは,遠心力の作用により半径方向外向きに付勢され,スクリーンから離れてスリット(16)を通って粉砕室に戻る.

 以上の動きから分かるように,ビーズがスクリーン(14)を目詰まりさせる恐れはない.その結果,スクリーンの異常磨耗が防止され,異常発熱の問題も生じない.また,ビーズが循環運動をするので,ビーズが容器端部に集中する傾向が防止される.

 粉砕の事例を図14に示す.原料は15µmを中心に0.3~150µmと幅広い分布をしていたが,30分間の循環運転により1µmを中心に0.2~3.5µmのシャープな粒度分布を持つ微粉に粉砕されている.

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図14 スターミル®LMZによる粉砕事例(提供:アシザワ・ファインテック)

 

 以上のことから,スターミル®LMZの特徴は,

①スクリーンの目詰まりを心配することなく小径のビーズを使用することができること,

②また,攪拌軸の周速を低くして低エネルギの粉砕を行うことができること,

③この結果,被粉砕粒子の結晶構造に悪影響を与えることなく,工業的規模において,ナノメートルサイズの粉砕を行うことができること,

である.

6.エコ粉砕[11]

 次にアシザワ・ファインテックの機器・装置を組み合わせて顧客要求に応える事例を紹介する.

 消費電力を抑えて微粉砕・分散したいと言う要求がある.この要求に対しアシザワ・ファインテックは「乾式ビーズミル“ドライスター®”+湿式ビーズミル“スターミル®LMZ”」の組合せによる「エコ粉砕」を提案している(図15).これにより,湿式ビーズミルのみを使用した処理と比較して,目標粒径までの運転時間が短縮され,消費電力を大幅に削減することができる.

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図15 エコ粉砕 (提供:アシザワ・ファインテック)

 

 乾式の衝撃力主体の粉砕で大きい粒子を優先的にミクロンサイズまで粉砕し,次いで湿式の摩砕により目標粒径のナノサイズまで粉砕するのである.シリカを粉砕・分散した例を図16に示す.ドライスター®で粗粉砕を行ない次いでスターミル®LMZで粉砕・分散した「エコ粉砕」の方が,スターミル®LMZのみで処理したものと比べて目標粒径に到達するまでに時間を66%短縮,消費電力量を73%削減できている.また,「エコ粉砕」の方が,最終製品の粒度分布もシャープになっていることが分かる.さらに摩耗対策にも有効で,特に硬質材料の粉砕においては部品の摩耗寿命を延ばし,コンタミの低減ができると言う.

 

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図16 エコ粉砕の効果(対象物:シリカ) (提供:アシザワ・ファインテック)

7.今後の展開

 今後の展開の一つは,独自技術の適用範囲を拡大することである.まず,高粘度スラリー中の粒子を微粉砕・分散したい要求に応えていく.高粘度スラリーは,ビーズミルでの粉砕・分散処理が困難な対象物である.目標粒径によって具体的な処理可能粘度は異なるため一概に提示できない状況にあるが,こうした課題を解決すべく努力していく.相性の合った分散剤を見出し,これを添加することで処理可能範囲の拡大を考えている.ビーズミルの機械的な条件と処理対象物の表面処理との組み合わせにより,ビーズミルでの処理の可能性は大きく広がるはずである.一見困難に思える処理でも,アシザワ・ファインテックの豊富な実績・ノウハウをもとに最適な運転条件や分散剤の提案が可能と考え,顧客と目標課題を共有し,より一層連携を深め新技術創成にチャレンジしていく.

 また,適切な粉砕機を使用することで,コスト効率よくドラッグデリバリーシステム(DDS)のための原薬の微細化が可能となる.これは,新薬開発に対して期待できるだけでなく,既存の原薬では達成できなかった目標に対しても,原薬を超微粉化することにより実現出来る可能性もある.また,現在処方されている薬の効き目やバイオアベイラビリティを向上させることも可能となろう.この考え・アプローチによって新薬開発の時間やコストの削減に貢献したいと考えている.

 さらには,一つの産業として,例えば二次電池正極材の製造工程を例にとってみる.工程には粗粉砕,微粉砕,スラリー化,分散,脱泡など多くの工程があるが,それぞれに対応する機器をアシザワ・ファインテックは提供している.先述のエコ分散のようにこれ等を組合せて,高分散性ナノ粒子を実現し,今までにない機能創出,生産性向上,コスト低減にチャレンジしている[12].このような事例を今後も増やし,「微粒子技術でナノテク分野の様々な新産業の創出に貢献したい」とのことである.

8.終わりに

 アイザワ・ファインテックは,上記MAXナノ・ゲッター®,スターミル®LMZその他の機器・装置を単独に,あるいはこれ等を組み合わせて用いることにより,下記の市場ニーズを満足する技術・ノウハウの提供に努めている.

 ・ナノサイズに微粉砕・分散したい
 ・素材の性能を維持したまま微粉砕・分散したい
 ・コンタミネーションを抑制して微粉砕・分散したい
 ・再凝集を抑制して微粉砕・分散したい
 ・粒度分布を均一にしたい
 ・前処理を省略して一気にナノサイズにしたい
 ・消費電力量を抑えて微粉砕・分散したい
 ・乾式でより細かく,より均一に微粉砕・分散したい
 ・高粘度スラリー中の粒子を微粉砕・分散したい
 ・ラボ機から生産機へのスケールアップをしたい

 このような社会ニーズに対し顧客と徹底した協業・連携をしてチャレンジすることにより,我が国のナノテクノロジーがますますの発展することを期待したい.

参考文献

[1] Feinmahltechnik社ホームページ
http://www.netzsch-grinding.com/en/home.html
[2] ビーズミルの構造,動きがよくわかる動画
http://www.ashizawa.com/guidance/01.html
[3] アシザワ・ファインテック,「マイルド分散®」,商標登録番号 第4891867号(登録日 2005.09.02)
[4] MAXナノ・ゲッター®の動画(ビーズの一段螺旋旋回流が良くわかる)
http://www.ashizawa.com/04-tech/03.html
[5] 石川剛,「メディア攪拌式粉砕機」,特開2010-253339(2010.11.11)
[6] 石川 剛,岩澤 翔吾,田村 崇弘,「メディア攪拌式粉砕機」,特開2014-18797(2014.02.03)
[7] 田村崇弘,「新概念のビーズミルによるナノ粒子分散技術の革新」,コンバーテック,Vol.40,No.12,pp.90-93(2012)
[8] 石井利博,橋本和明,「横型ビーズミルによる炭酸カルシウムの粉砕性能の評価」,色材協会誌,Vol.85,No.2,pp.53-58(2012)
[9] 楠 真澄,石井 利博,「湿式媒体攪拌ミル及び微小粉砕媒体とスラリーの分離機構 」,特開2006-35167(2006.02.09公開)
[10] 石井 利博,針谷 香,「媒体攪拌型粉砕装置を用いる粉砕方法」,特開2006-212489(2006.06.17公開)
[11] 山際 愛,「乾式および湿式ビーズミルを利用したエコ粉砕」,Fine Ceram. Rep. Vol.28, No.3, pp.110-111(2010)
[12] 相良智之,「注目される電池の最新製造技術 ビーズミルによる電池材料の加工技術」,化学装置,Vol.54,No.3,pp.22-27(2012)

(真辺 俊勝)

 

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