NanotechJapan Bulletin

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<第50回>
希土類フリーで耐酸化性の高性能カゴ状熱電材料 ~ナノ構造を創り入れたCoSb3-x-ySixTeyで性能指数1.6を実現~
物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 森 孝雄氏に聞く

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 省エネルギーが進んでいる我が国においても,一次供給エネルギーの約2/3が熱エネルギーとして廃棄されているのが現状である.そのような社会情勢を背景に,熱電発電素子は熱エネルギーを回収して有用な電気エネルギーに直接変換できる唯一の固体素子として注目されている.しかし,これまで研究開発されている素子は希少で高価な希土類元素を含むことも多く,性能も十分ではなかった.国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)では,微細組織制御による高性能熱電材料の研究を行っており,その成果を「希土類フリーで耐酸化性の高性能カゴ状熱電材料」として2016年1月27日~29日に東京ビッグサイトで開催された国際ナノテクノロジー総合展・技術会議に出展した.この展示は,来場者の注目を浴びると共に,nano tech大賞2016のプロジェクト賞(グリーンナノテクノロジー部門)を受賞した[1].受賞理由は「高価なレアアースを安価な材料に置き換えた高性能の熱電材料を開発,熱電材料の広範囲な普及に繋がる成果を上げたことを賞す」である.そこで,つくば市並木のNIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)を訪ね,研究を推進された ナノパワー分野 熱エネルギー変換材料グループ 無機ナノ構造ユニットの森 孝雄(もり たかお)氏(グループリーダー&MANA主任研究者)に,本研究の内容および今後の展開等についてお伺いした.

 

1.MANAにおける研究:新概念による新材料の創製

 NIMSの国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA:International Center for Materials Nanoarchitectonics)[2]は,文部科学省が創設した「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)[3]」において選定された9つの研究拠点の一つである.設立の理念は,人類の持続的発展にとって不可欠である革新的新技術の開拓を支える“新材料の開発”を,「ナノアーキテクトニクス」註1)と呼ぶ新概念に基づいて挑戦的に推進することである.本稿で取り上げる「希土類フリーで耐酸化性の高性能カゴ状熱電材料」は,その代表的研究成果の一つである.

註1)ナノアーキテクトニクス:ナノテクノロジーとマイクロテクノロジーの質的な差を正しく認識したナノテクノロジーの新パラダイムである.マイクロテクノロジーよりはるかに小さいナノテクノロジーの世界では,熱的および統計的な揺らぎがあらわになると同時に,制御法の原理的な限界に直面する.それゆえ,「曖昧さを含む構造によって信頼できる機能を実現する」という視点を重視する.また,一方,ナノスケールの構造は,しばしば新鮮で興味深い特性を示すが,単独あるいは単なる集合体としては,発現される機能には限界があり,同種または異種の“ナノ部品”の間に有機的な相互作用を効果的に生じせしめ,まったく新しい材料機能を創造する「構造の構築から相互作用の組織化へ」の視点を重視する[4].

 

2.熱電発電と熱電材料に要求される物性

 冒頭に触れたように,人類が使用する石油・石炭・ガスなどの一次エネルギーは約3分の1しか有効利用されずに,残りの2/3が廃熱となっている(図1).その膨大な廃熱を,ゼーベック効果を利用して電気エネルギーに直接変換し有効活用できる熱電変換には大きな期待が寄せられている.しかし今もって,かつての宇宙利用など特殊な限られた用途以外には,広範囲の実用化には至っていない.その原因は何か?

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図1 一次エネルギーの2/3を占める廃熱とその有効活用法として期待される熱電変換

2.1 熱電発電素子の構成と発電原理

 その答えを見いだすためには,熱電発電素子の発電原理に立ち戻る必要がある.ゼーベック効果は,熱電材料の一方を高温,他方を低温に保つことによって導電キャリヤーが高温側から低温側へ移動するために,その両端に電位差が生じる現象である.熱電発電は,このゼーベック効果を利用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電法である.熱電発電素子の構成を図2に示す.二つの熱電材料(n型半導体とp型半導体)を図のように左側を高温に,右側を低温に保持する.n型半導体材料内では高温部の電子が熱エネルギーによって低温側に移動し,p型半導体材料内では高温側のホールが同じく熱エネルギーによって低温側に移動する.その結果,n型半導体材料では電子分布は高温側が少なく低温側が多くなり高温側が高電位,低温側が低電位となり電位差が生ずる.p型半導体材料では,同様にホールの分布差によって高温側が低電位,低温側が高電位となる電位差が生じる.このような状態で,図のように高温側の二つの熱電材料を電極で結び,低温側の電極を負荷を介して連結すると,負荷に電流が流れ仕事をする(発電する).高温状態,低温状態を保つ限り電流は流れ続ける.

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図2 熱発電素子の構成と発電原理 [5]

2.2 熱発電素子の普及を阻んでいる原因と熱電材料に求められる物性

 熱電発電素子は,このように可動部がなく振動や騒音を発生せず長寿命で信頼性の高い固体素子である.にもかかわらず広く普及しないのは何故か?

  第1の原因 として,熱電材料の性能が足りないことが挙げられる.熱電材料の性能を表す指標としての無次元性能指数ZT(性能指数Zと動作温度Tの積,以下性能指数と略称する)は

ZT=α2・σ/κ・T             (式1)
(α:ゼーベック係数[V/K],σ:電気伝導度[S/cm],κ:熱伝導度[W/cmK])

で表わされる.性能指数ZTの大きな熱電材料には,ゼーベック係数(α)と電気伝導度(σ)が共に大きく,そして熱伝導度(κ)は反対に小さいことが求められる.しかし,ゼーベック係数と電気伝導度は一般的にトレードオフの関係にあり,また,熱は電気キャリヤーとフォノン(格子振動)によって運ばれる.従って,一般に電気を良く流すものは熱も良く流す性質であるため,熱電材料の飛躍的高性能化は容易ではない.即ち,熱電材料には,まず電導度が良くかつ熱伝導が小さい物性が求められるが,このような材料を見つけ出すのが難しいことが第1の原因である.

 また,これまで熱電材料として例えば図3に示されるものが知られており[5],温度領域ごとに下記のようなものが適するとされている.これらは,性能もさることながらBi,Te,Pb,Agなど稀少で高価または毒性のある元素を主成分としており,これが普及を妨げる 第2の原因 である.熱電材料は,埋蔵量が豊富で安価なそして環境負荷の小さい元素で構成されていることが求められる.

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 さらに,熱電材料には耐酸化性の大きいことが望ましいが,現状これを満たしていないのが, 第3の原因 である.合成においてグローブボックスなど特殊な装置や雰囲気を必要としない生産性の良いプロセスが求められるからである.

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図3 代表的な熱電材料 [5]

3.MANAのアプローチ:豊富で資源問題のない化合物の選定とナノ構造の創り込み

3.1 熱電材料として“かご状化合物の非充填スクッテルダイトCoSb3”を選定

 このような背景と要請に対し,森氏は第一に,熱電材料としてポテンシャルがあると考えられる“かご状化合物の非充填スクッテルダイトCoSb3”(図4a)を選択した.CoSb3は比較的高い電気伝導度と大きなゼーベック係数を有しており,熱電材料として優れているが,熱伝導率も大きい(室温で10W/cmK以上)という欠点があり,従来はかご状化合物に希土類元素を充填してこの欠点に対処している.森氏は希土類元素の充填なしにCoSb3の熱伝導率だけを下げ,熱電材料として高性能化を図ることに挑戦した.以下に従来手法と,新創出手法の原理を説明する.

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図4 CoSb3のかご状結晶構造と希土類元素のラットリング現象

3.2 CoSb3の熱伝導率低減手法

3.2.1 従来の手法:希土類元素を用いてラットリング現象を起こさせる方法

 CoSb3の結晶構造には,図4aに示すように大きな空間(かご:ホストと言う)がある.この空間に希土類(ゲストと言う)を“充填”すると,ホストとゲストの結合は非常に弱く(図5),ゲスト原子がかご内部の大きな空間でガラガラと動き回るラットリング(rattling)註2)とよばれる運動をし,この運動により,電気はよく通しつつも,格子振動が抑制されることで熱の伝導のみを妨げる.その結果,熱伝導率が一桁ほど減少し,800Kでの性能指数ZTが1程度になることが報告されている[6].かごの中の希土類の乱雑なガラガラ運動(rattling)が,フォノンを散乱し,熱伝導率の格子からの寄与を大幅に減少させるためであると考えられている(図4b).

註2)ラットリング(rattling):「がらがら」鳴るという意味であり,赤ちゃんの玩具ガラガラ(rattle)から名づけられた.通常は,各原子はまわりの原子とバネで繋がれているように2次曲線で表されるポテンシャル曲線の底で振動する(共鳴振動数ω0)(図5上).これに対しスクッテルダイトのかごの中に入っている原子は,固体の中にも関わらず,ほとんどまわりの格子の影響を受けずに局在した原子振動をする(図5下)[7].このインコヒーレント(周りと相関がない)な原子振動がかごの骨格に存在する通常のフォノンを強く散乱するため,熱伝導が低く抑えられると考えられている.

 

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図5 通常の原子振動(上)とラットリング振動(下) [7]
(赤丸はラットリングしている原子を示し,非調和ポテンシャルの中で振動している)

 この方法で高性能化を図る研究開発が世界的に流行しているが,充填する元素が希土類又はBaであり,希土類元素はその名の通り希少資源であり元素戦略上好ましくない.また,希土類とBaは共に酸化し易く,合成上も特殊な雰囲気にする必要があり好ましくない.

3.2.2 MANAの手法:ラットリングに頼らないナノアーキテクトニクス的方法

 このような世間一般の研究に対し,森氏は,CoSb3を用い,

1)結晶構造かご部の組成による改質と
2)CoSb3焼結体相に新規ナノ構造の創り込む

アプローチを採った(ナノアーキテクトニクス的アプローチ.図6 [8][9]).

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図6  CoSb3の焼結体相の中にナノ構造を創り込む [9]
(電気伝導度をほとんど低下させることなく熱伝導度を大きく下げる)

 1)は,CoSb3にSiとTeを複ドープした熱電材料として必要な導電キャリヤーを付与する手法である.即ち,Sbの一部をSiとTeで置換する.Siドープでp型,Teドープでn型となる.複ドープにより,電気的性質を調整するとともに,かごに導入される乱れにより,熱伝導率もある程度低減の効果がある.なお,Teは希少金属であるが主成分ではなく微量であるので特に資源的問題にはならないと考えている.

 2)は,希土類元素(RE)やBaを充填するラットリング現象を用いることなく,CoSb3の焼結体相の中にナノ構造を創り込むことによって電気伝導度をほとんど低下させることなく熱伝導度を大きく下げる手法である.一般的に,熱電材料のフォノンの平均自由工程が数10~数100nmと電子に比べて長いことを利用して,ナノ構造によってフォノンが選択散乱され,高性能化につなげることが世界の熱電研究で流行しているが[10][11],妥当で効果的なナノ構造を材料に創りこむことは必ずしも容易ではない.今回,森氏らは,CoSb3にSiとTeを複ドープした熱電材料において,相図を活用して意図的に発生させた不純物相をアニールして蒸発させることにより,多孔の新規ナノ構造を材料に創りこみ[8][9],①結晶粒をフォノンを選択的に散乱させるサイズにし,かつ②結晶粒間にフォノンを効率よく散乱させるサイズの空孔を導入することによって熱伝導度を下げ性能指数ZTを大きく向上させる手法をとった[8][9].

 この手法により,ZT=1.6(単一の試料で最大1.8)の高性能熱電材料を実現した(図7)[9].次章で,具体的内容について述べる.

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図7  CoSb3で希土類元素を用いることなく高性能熱電材料を実現 [9]

4.希土類フリーで耐酸化性の高性能カゴ状熱電材料CoSb3-x-ySixTeyの実現 [8][9]

 まず初めに,スクッテルダイト化合物CoSb3にケイ素(Si)とテルル(Te)とを同時にドープすることにより希土類フリーの高性能n型熱電半導体を合成した.下式に示す組成で,立法晶系である.

CoSb3-x-ySixTey      (式2)
(0.025<x<0.25,0.025<y<0.25)

(なお,さらにCoの一部をNi,Zn,Fe等の遷移元素で置換してもほぼ同等な熱電性能が得られる.当該スクッテルダイト熱電半導体の組成式は以下のように更に一般化することができる:

(Co1-zTz)Sb3-x-ySixTey      (式3)
(0.025<x<0.25,0.025<y<0.25,0<z<0.15,TはNi,Zn,Fe等の遷移元素)

 本文の説明は(式2,3)を混用して進めることとする)

 次いで,合成プロセスの制御によりCoSb3-x-ySixTey焼結体に電気伝導度はほとんど低下させることなく熱伝導度を大きく低下させるナノ構造を創り込んだ.即ち,結晶粒(grain)の成長を抑えかつ焼結相中に熱伝導を妨げる空孔を分散させた.以下,具体的な例を挙げる.

4.1 合成方法

 Co,Sb,Si及びTe粉末の混合物をプレス成型し,石英管に内包して真空中にて1050℃で焼成・焼結する.その後,より低い温度で熱処理を加え,さらにその後室温まで自然冷却する.得られた試料を粉砕し,上記の成形,焼成・焼結をもう一度行う.さらに,特性向上のためアニーリングを行う.上記(式3)に示すx,y,zの範囲内で,表1に示す組成の試料を合成した.

表1 合成試料の組成 [8][9]

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4.2 合成された(Co1-zTz)Sb3-x-ySixTeyの基礎特性と得られた知見

 焼成・焼結終了後に一度粉砕し,再度成型し焼成・焼結した試料で測定を行った.この再焼成・焼結の際には放電プラズマ焼結(SPS)法註3)を使用した.この焼結法を採用することによって,結晶粒のサイズを制御することができており,重要な焼結手法である.

註3)放電プラズマ焼結法(SPS法:Spark Plasma Sintering):機械的な加圧とパルス通電加熱(当該装置で最大~9,000A)とによって,被加工物の焼結・接合・合成等を行う加工法である.一般的な焼結に用いられる熱的および機械的エネルギーに加えて,パルス通電による電磁的エネルギーや被加工物の自己発熱および粒子間に発生する放電プラズマエネルギーなどを複合的に焼結の駆動力としている点にSPS法の大きな特徴がある.通常のホットプレスで10時間かかるものを10分位の短時間での処理が可能な場合があり,粒界制御,粒成長の抑制が容易にできる.そして,ランニングコストも低廉である[12].

 図8~図11は希土類を含まないスクッテルダイト熱電半導体の①導電率,②ゼーベック係数,③熱伝導率,④熱電性能指数(ZT)を示す.これらの結果からまず以下の事実が明らかになった[8][9].

1)Teのドーピングによって電子注入が行われて全温度域でn型(ゼーベック係数が負)になっており(図9),

2)また,Siのみのドーピング試料「CoSb2.875Si0.125」に関しては,唯一p型を示している(図9).

3)SiとTeの両方のドーピングによって,図8に示す導電率に比べて図10に示す熱伝導率が大きく低減する効果がある.この結晶構造かご部へのかご複ドーピングが,熱電性能を向上することが見出された.

4)Siのみのドーピング試料「CoSb2.875Si0.125」でp型が実現できるが(図9),熱伝導率が大きく(図10),導電率が低い(図8)ため,従ってZTは小さい(図11).P型についてはさらなる研究開発が残されている.

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図8 (Co1-zTz)Sb3-x-ySixTeyの導電率の組成と温度による変化 [8][9]


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図9 (Co1-zTz)Sb3-x-ySixTeyのゼーベック係数の組成と温度による変化 [8][9]


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図10 (Co1-zTz)Sb3-x-ySixTeyの熱伝導率の組成と温度による変化 [8][9]


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図11 (Co1-zTz)Sb3-x-ySixTeyのZTの組成と温度による変化 [8][9]

4.3 ナノ構造の創り込み-熱電性能の大幅向上と得られた知見

 繰り返しの焼成・焼結やアニーリングによって,特にSiがスクッテルダイト構造中により良好に取り込まれてSbを置換できる.また,非常に重要な発見として,アニーリングにより,熱電半導体中に空孔を形成する(焼結相中に第2相を形成する配合組成にしてあって,これがアニーリング中の空孔形成の起源になっている)ことで,導電率の大きな変化を伴うことなく熱伝導率を低下させることができる[8][9].アニール前の試料は相対密度が例えば95%~97%で,図12右側のように,空孔が少ない状態である.アニーリングによって図12左側のように顕著な空孔が形成され,アニーリング後の相対密度は空孔を意図的に形成させた試料において例えば82~92%である(通常はアニーリングにより相対密度は増加するが,この場合は反対に減少する).

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図12 (Co1-zTz)Sb3-x-ySixTeyのアニーリングによる細孔の形成例 [8][9]
(左側:アニーリング後,右側:アニーリング前)

 1)このナノ構造制御により,ZTの最高値は,当初約1.2までの向上であったが(図11),その後プロセスや組成およびナノ構造の最適化を行い,再現性良く1.6(最高値1.8)が得られるようになっている(図7).この効果は他のスクッテルダイトでは報告されたことがなく,本研究によって初めて見出されたものである.空孔を持った熱電材料は一般的に高性能が得られていなかったが,本研究により,本材料に限らず,新規な熱電高性能手法への道を拓くものである[8][9].

 2)また,通常のナノ構造熱電材料においては,熱の印可によってナノ構造が粒成長などして幾らか失われるために熱電性能の低減が起きる弱点がある.これらの試料においては,空孔によるナノ構造のためか使用温度で繰り返しの測定に対して熱電性能の低減は見られずに安定しており,高い耐久性が期待される.

5.今後の課題と展望

 森氏は「希少で高価な元素レアアースを用いることなく,耐酸化性の優れた,そして再現性良く安定した高性能のステックルダイト構造のn型熱電材料CoSb3-x-ySixTeyを通常必要なグローブボックスなどの特殊な環境を用いることなく容易に作製することができた.これで,これまで熱電素子の一般的使用・普及を阻んでいたネックが解消された.今後の課題は,同じ考え方・手法のもとでp型熱電材料の実現を急ぐことである.そして,一方,NIMSのオープンイノべ―ションセンター(熱エネルギー変換材料ラボ)を活用するなどして企業と強く連携し,具体的用途を想定したプロトタイプの熱発電素子・モジュールを5年以内に実現したい.」との今後の展望を述べられた.

6.おわりに

 独創的な熱電材料組成とナノ構造組み込みにより,性能指数1.6(最大1.8)の高性能熱電材料CoSb3-x-ySixTeyを創製する過程を興味深くお伺いした.上記展望のように,この材料が高性能で高耐久性の熱電発電素子・モジュールに進展することを願う.そして,熱電発電素子・モジュールがさらにシステム化され,図1にあるように火力発電所,自動車,工場,焼却炉のような大型設備や家電製品など身の回りの多くの機器の廃熱を,振動もなく静かに電気に換えるのに活躍し,よりグリーンな社会実現に寄与している光景が一日も早く見られることを期待している.

参考文献

 本文中の図表は,文献から引用したもの以外,図1,図4,図7は森 孝雄氏より提供されたものである.

[1] nanotech大賞2016,プロジェクト賞(グリーンナノテクノロジー部門):
http://www.nanotechexpo.jp/main/award2016.html
[2] 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA):
http://www.nims.go.jp/research/mana/index.html
[3] WPIプログラムについて:http://www.nims.go.jp/research/mana/index.html
[4] 「ナノアーキテクトニクス」とは:
http://www.nims.go.jp/research/mana/nanoarchitectonics.html
[5] 河本 洋,「排熱回収用高効率熱電変換材料の研究開発動向」,科学技術動向 2008 年9 月号,pp.20-32.
http://data.nistep.go.jp/dspace/bitstream/11035/1977/1/NISTEP-STT090-20.pdf
[6] B.C. Sales, D. Mandrus, R.K. Williams, Science Vol.272, pp.1325-1328 (1996).
[7] 固体の中の新しい原子振動:ラットリング:
http://hiroi.issp.u-tokyo.ac.jp/Pages/Research/rattling%20review.html
[8] 森孝雄,アタ ウラ カーン(国立研究開発法人物質・材料研究機構),「ケイ素及びテルルをドープしたスクッテルダイト熱電変半導体,その製造方法及びそれを用いた熱電発電素子」,特開2016-66795(公開日:2016.4.28)
[9] A. U. Khan, K. Kobayashi, D. Tang, Y. Yamauchi, K. Hasegawa, M. Mitome, Y. Xue, B. Jiang, K. Tsuchiya, D. Golberg, Y. Bando, and T. Mori, Nano Energy Vol. 31, 152 (2017).
[10] Thermoelectric Nanomaterials, ed. K. Koumoto and T. Mori, Springer Series in Materials Science (Springer, Heidelberg, 2013) pp. 1-375.
[11] C. Nethravathi, R. Rajamathi, M. Rajamathi, R. Maki, T. Mori, D. Golberg, Y. Bando, J. Mater. Chem. A Vol. 2, 985 (2014).
[12] 放電プラズマ焼結法:http://www.njs-japan.co.jp/whatssps.html

(真辺 俊勝)

 

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