NanotechJapan Bulletin

      

企画特集 ナノテクノロジーPick Up ~新展開をもたらすナノテクノロジープラットフォーム~
<第2回>
新規な金属ナノ粒子の原子分解能状態解析と新たな触媒機能性の開発
京都大学 草田 康平,小林 浩和,北川 宏
九州大学 鳥山 誉亮,山本 知一,松村 晶

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(左から)京都大学 草田 康平,小林 浩和,北川 宏

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(左から)九州大学 山本 知一,鳥山 誉亮,松村 晶

1.はじめに

 金属ナノ粒子はその体積に対して大きな比表面積を有するため,反応触媒として広く使用されている.特に白金をはじめとする白金族貴金属のナノ粒子は,様々な化学合成や環境汚染物質の分解,燃料電池の電極反応など多彩な反応において高い触媒活性を示す.そのため,白金族金属ナノ粒子は,これからの持続的発展が可能な科学文明社会に不可欠な存在の一つになっている.例えば,Pdは燃料電池の電極触媒や排ガス浄化触媒(三元触媒)に実用されている[1][2].しかしながら,これらの用途で使用されるPd触媒はCOが存在すると触媒能が低下してしまうという問題を抱えている[3].すなわち,燃料電池スタック反応で重要な役割を果たす触媒にCOが付着して化学反応を妨げてしまい(COによる「被毒」),燃料電池スタックは次第に発電できなくなる.それを防ぐためには,燃料電池スタックに送り込まれる水素ガス中のCO濃度を10ppm(0.001%)以下に保たなければならず,燃料電池の長時間駆動のためにはCOの除去が不可欠である.Pdより原子番号で2つ前にあるRuは,表面上でCOとO2を反応させてCO2に変換する最も高い性能を有する金属触媒であり[4],例えば家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」において,CO被毒を防ぐCO除去触媒として使用されている.エネファームは2009年から販売を開始してまだ7年しか経過しておらず,短くとも10年以上の耐用年数を実現するにはCO除去触媒の性能と安定性も重要である.一方,原子番号でRuとPdの間にあるRhもCO酸化反応やNOx還元反応等に高い活性を示すことから,最も有用な自動車の排ガス浄化触媒(三元触媒)として使用されている[5].しかし,これらの白金族金属は稀少かつ高価であり,将来的にその需要とともに使用量を拡大させていくことはできない.そのため,その使用量を削減する新たな代替物質の開発や,限られた資源をより有効に活用するための機能性や耐久性の向上など,様々な観点から貴金属ナノ粒子に関する研究が精力的に行われている.

 金属ナノ粒子を作製する方法は,トップダウン法とボトムアップ法に大別される.トップダウン法は大きな物質を微細加工によりナノスケールまで小さくする方法であり,ボトムアップ法は原子や分子を組み立ててナノスケールまで成長させていく方法である.ボトムアップ法の一手法である液相還元法は,溶液中で金属イオンを還元して原子を粒子状に凝集させると同時に,添加したポリマーや界面活性剤などの保護剤によりその成長をコントロールしてナノメートルサイズの微粒子を作製する手法である.液相還元法では合成条件を変えることにより,図1に示すように,立方体や八面体等に形状を制御したり[6],ある金属粒子をコアとしてその周囲に別の金属を被覆したコアシェル合金を作製することも可能である[7].さらには,大きなバルク状態では互いに混合しない元素同士が固溶した合金ナノ粒子を合成することも可能である.筆者らは,このような特徴を有する液相還元法を活用して,バルクでは得ることのできない構造や相を有する様々な金属や合金のナノ粒子の合成と,それらの新たな機能性の発現を目指した研究を進めている.Pdは水素を多量に吸蔵することでもよく知られているが,周期表においてPdの両隣に位置するRhとAgは水素を吸蔵することはできない.筆者らは,バルクでは2000℃以上の液相でさえ混和しない水と油のような合金系であるRhとAg[8]をナノ粒子にすることで固溶することに世界で初めて成功し,AgとRhが1:1で固溶した合金がPdと同様に水素吸蔵能を発現することを見いだした[9].Pdが示す水素吸蔵能はその電子構造と密接に関係していると考えられている[10][11].すなわち,AgとRhの元素が融合して新たな電子構造を造り,それぞれにない新規の物性・機能を発現することに成功した.筆者らは,このAg-Rh合金の成果を基に同様のコンセプトで様々なナノ合金粒子の創製と新たな機能性の探索を進めてきている.この本稿では,最近特に注力して研究を進めているRuを含む金属ナノ粒子に関する成果を紹介する[12][13][14].

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図1 金属ナノ粒子の形態制御.

 なお,ここで紹介する研究成果の多くは,JST・戦略的創造研究推進事業CREST「元素戦略を基軸とする物質・材料の革新的機能の創出」研究領域(研究総括:玉尾皓平 京都大学名誉教授)における研究課題「元素間融合を基軸とする新機能性物質・材料の開発」(研究代表者:北川 宏)と,それを継続発展させる同事業ACCEL研究課題「元素間融合を基軸とする物質開発と応用展開」(研究代表者:北川 宏)によるものであり,その研究遂行にあたって文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業・微細構造解析プラットフォームにより九州大学超顕微解析研究センターの電子顕微鏡研究施設を利用した.

2.Pd-Ru固溶型ナノ合金粒子の創製と機能性

 図2に見られるように,Ru,Rh,Pdは周期表上で順に並んでおり,これらは様々な反応の触媒として広く用いられている.この中でRhは特に稀少な元素の一つで,2016年10月時点で約2,600円/グラムと非常に高価である.一方,RuとPdはそれぞれ約180円/グラム,約2,000円/グラムと,Rhに比べると安価であり,前述のAg-Rh合金と同様にPd-Ru固溶合金ができて,周期律表でその間にあるRhに似た性質を示すことになれば『元素戦略』[15]の観点からも有用である.しかし,RuとPdは,安定な結晶構造がそれぞれ最密六方格子(hcp)と面心立方格子(fcc)と異なっており,それらの2元合金系平衡状態図は包晶系で,1000℃以上の高温までRuリッチのhcp相とPdリッチのfcc相の2相領域が広がっており[10],広い組成範囲で固溶合金を創製することはできていなかった.

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図2 周期律表とPd, Ruの構造的性質.

 そこで,筆者らは液相還元法によって,保護剤にpoly(N-vinyl-2-pyrrolidone)(PVP)を,還元剤にtriethylene glycolを使用してPd-Ru合金ナノ粒子の作製に取り組んだ[13].図3に示すように,金属組成を調整したPd塩とRu塩の混合水溶液を,加熱した還元剤溶液にゆっくりと加えることによりナノ粒子は生成される.一般に,それぞれの金属イオンは異なる還元ポテンシャルを有しており,PdイオンはRuイオンに比べて容易に還元される.そのため穏やかな反応条件では,その還元速度の違いによって固溶状態を得ることはできない.筆者らは両イオンが十分早く還元される条件として,両金属イオンの還元速度の差をほぼ無くすよう努めた.

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図3 液相還元法によるPdRu合金ナノ粒子の合成.

 図4は,Pd:Ru = 1:1の組成で得られたナノ粒子の高分解能TEM像である.粒径が約10nmのナノ粒子となっているが,その内部はさらに細かなグレインに分かれている.内部の原子構造をよく見ると,fccの{111}面のABC積層を示す領域やhcpに対応する2面周期の積層の領域が確認され,両構造がナノスケールで混在している.還元反応によってまずこのような2nm程度のfcchcpの結晶子が生成して,それらが集合してナノ粒子になっているものと考えられる.

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図4 Pd0.5Ru0.5合金ナノ粒子の高分解能電子顕微鏡像.

 図5に,Pd0.5Ru0.5組成のナノ粒子のHAADF-STEM像とXEDSによる元素マップを示す.図5(b)(c)(d)のPdとRuの固有X線による元素マッピングでは,多少の局所的な濃淡が見られるが両元素ともに粒子内の全域に存在していることがわかる.詳しく元素の分布を調べるために,図5(e)の粒子について,白矢印で示す範囲に沿って線分析を行った結果を図5(f)に示す.PdとRuの強度プロファイルがほぼ一致して,粒子の内部において半円の円弧状を描いている.円弧状のプロファイルは電子線入射方向での粒子の厚さ変化を反映しており,図5(f)はPdとRuが粒子内部でほぼ同じ割合で固溶した状態にあることを明確に示している.図5(f)の縦軸に着目すると,固有X線シグナルが最大で100カウント程度得ることができており,プロファイルの信号ノイズによる強度変動が小さく抑えられている.九州大学は,電子顕微鏡メーカーに強く働きかけて世界に先駆けて有感面積100mm2の透過電子顕微鏡用のXEDS検出器を開発し[16],収差補正高分解能電子顕微鏡に搭載した.これによってTEM-XEDSの信号検出感度が従来の標準と比べて5倍程度も向上し,このようなナノ粒子の局所組成に関する定量解析の可能性が大きく拓かれた.100mm2クラスの高感度XEDS検出器は昨今急速に普及してきているが,ナノテクノロジー・プラットフォーム事業によって,研究の早い段階から世界に類がない最先端の装置を活用できたことが,研究を加速して世界を先導する成果を生み出す原動力になった.

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図5 Pd0.5Ru0.5合金ナノ粒子の状態観察.
(a)HAADF-STEM像,(b)Pd-L線のマッピング,(c)Ru-L線のマッピング,
(d)Pd-L とPd-Lの重ね合わせ,(e)線分析,(f)Pd-L とPd-Lの強度プロファイル.

 

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図6 本研究で活用した収差補正高分解能走査・透過電子顕微鏡.JEM-ARM200F(左)とACCELARM(右).
JEM-ARM200Fは,有感面積が100mm2の大口径シリコンドリフトX線検出器を世界で初めて搭載した.
ACCELARMは高次の球面収差まで補正する新しい補正器を搭載した1号機であり,30,60,80,120,200kVで
収差補正がなされており,観察対象に合わせて加速電圧を設定して高分解能観察・解析が可能である.
また上記の大口径SDDを2機搭載している.一連の研究成果を眺めて見ると,この5年間で
原子構造・状態解析の精度が格段に向上していることに気づかされる.


 図7に,様々なPdとRuの混合比で得られたナノ粒子のHAADF-STEM像と元素マッピングを示す.PdあるいはRuの組成が10 at%に希薄になっても両元素ともに粒子形状に対応したマッピングが得られており,広い組成範囲にわたってPdとRuがほぼ均質に固溶した合金ナノ粒子が得られている.HAADF-STEM像では,粒子の外形がPdリッチ側では多面体的であるのに対して,Ruリッチ側は金平糖のような細かな表面凹凸をもつ形状に変化している.これは,次に示すように,結晶構造がPdリッチ側ではfcc構造が,Ruリッチ側ではhcp構造がそれぞれ支配的になることによる.

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図7 様々な組成のPd1-xRux合金ナノ粒子のHAADF-STEM像と元素マッピング.
(a)Pd0.9Ru0.1,(b)Pd0.7Ru0.3,(c)Pd0.3Ru0.7,(d)Pd0.1Ru0.9

 図8(a)に,得られたPd1-xRuxナノ粒子の粉末X線回折プロファイルを示す.純Pdから30 at%Ruまでは,fccのパターンを示しているのに対して,Ru組成が70 at%以上になるとhcpのパターンに変化しており,等組成の50 at%では両方が重なったのプロファイルが得られている.この結果は,先に示した図4の高分解能TEM像の観察結果や,図7で見られたナノ粒子の外形変化とよく対応している.これらのX線回折プロファイルのリートベルト解析から求めた結晶の格子定数を図8(b)に示す.fcchcpはともに最密充填構造であり,fccの格子定数はhcpa軸の長さの√2倍と対比較できる.図8(b)が示すように,PdとRuの組成比とともに格子定数がほぼ線形に変化しており,いわゆるベガード則(Vegard's law)が成立している.このことからも,全組成にわたってPdとRuが原子レベルで固溶した合金相が形成していることが明らかとなった.

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図8 様々な組成のPd1-xRux合金ナノ粒子の粉末X線回折プロファイル(a)と格子定数(b) [13].

 このようにして得られたPd-Ru合金のナノ粒子の触媒としての可能性であるが,図9に,γ-Al2O3に担持したPd0.5Ru0.5合金のナノ粒子によるCO酸化反応転換率の温度依存性を,関連する他のナノ粒子と比較して示す.COからCO2への転換率が50%となる温度T50を比較すると,Pdナノ粒子が195℃,Ruナノ粒子ならびにRhナノ粒子,さらにPdナノ粒子とRuナノ粒子を1:1の割合で物理的に混合した場合がそれぞれ165℃である.一方,これらに対し,Pd0.5Ru0.5合金のT50は125℃とこの中で最も低い.すなわち,CO酸化反応の触媒として広く用いられているRuナノ粒子やRhナノ粒子よりもT50が40℃も低く,Pd0.5Ru0.5固溶合金は非常に高い活性を有することが明らかになった.Ruナノ粒子とPdナノ粒子の物理混合と比べて高い触媒活性を示すことから,PdとRuが原子レベルで固溶したことにより電子状態が大きく変化していることが示唆される.

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図9 γ-Al2O3に担持したナノ粒子のCO転換率の温度依存性 [13].
Pd0.5Ru0.5合金,× 純Ru,純Rh,純Pd,純Ruと純Pdの物理混合.

 先に述べたように,稀少で高価なRhはNOx還元反応等にも高い活性を示すことから,有力な自動車の排ガス浄化触媒(三元触媒)として使用されている.上記のナノ粒子を触媒としてNOx還元反応についても作用させたところ,Pd0.5Ru0.5合金ナノ粒子はRhナノ粒子と同等かそれより優れた活性を示した[14].併せて,第一原理計算により電子状態を解析したところ,Pd0.5Ru0.5合金のそれは純Pdや純Ruの場合とは大きく異なり,Rhに似た状態密度を有していることが明らかとなった[14].すなわち,原子番号で2つ隣りのPdとRuを原子レベルで融合させたことによって,その間にあるRhと同様な電子状態が人工的に作り出されたことになる.

 ここで作り出されたPd-Ru固溶状態は,もちろん非平衡状態であるために構造的な安定性は高くない.本研究結果でもってすぐにPd-Ru合金ナノ粒子でRhを代替えすることはできない.しかし,このような元素間の融合で新たな機能が創出できることが実験だけでなく理論も含めて具体的に示されたことは,今後の研究の指針を明確に与えるものとして非常に大きな意義を有する.筆者らは,この成果を基に,さらに第3元素の添加などにより安定なPd-Ru固溶合金の創出や新たな機能の発現を目指して,元素間融合による材料実用化の可能性を明らかにする研究を展開している.

3.結晶構造を制御した新しいナノ粒子の創製と機能性

 Ruナノ粒子は,先に述べたようにCO酸化触媒能に優れており,燃料電池などにおいてCO除去触媒として使用されているとともに,水蒸気改質反応や炭化水素の水素化反応などにおいても有用な触媒である[17].これらの反応は触媒粒子の表面で生じているため,表面状態は触媒活性を左右する重要な因子の一つである.すなわち,粒子のサイズだけでなく形状なども制御して活性な結晶面を多く露出させることによって,触媒活性を高めるとともに貴金属の使用量の削減や耐久性の向上にも繋げることが期待できる.ここでは,Ruの結晶構造を制御して触媒能を向上させることに成功した例[12]を紹介する.

 金属Ruの結晶構造は前節で述べたようにhcpが安定である.我々は化学的還元法によるRuナノ粒子の生成において,使用する金属前駆体と還元剤の種類を変えることによってその結晶構造を制御することに成功した.すなわち,Ru(acac)3を金属前駆体,triethylene glycolを還元剤として使用するとfcc構造を有するRuナノ粒子が,それらにRuCl3nH2Oとethylene glycolを使用すると従来のhcp構造のRuナノ粒子が作製できる.この新規のfcc構造は準安定相であるが,温度可変粉末X線回折を行ったところ,図10で示すように450℃でもfcc構造は保持されており,比較的安定な構造であることが明らかとなった.

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図10 fcc-Ruナノ粒子の各温度におけるX線回折プロファイル [12].

 このようにして作り分けられたfcc構造とhcp構造のRuナノ粒子を高分解能電子顕微鏡で観察した例を図11に示す.hcpの粒子は単結晶状態で,外形はhcpの[001]方向に成長した樽状を呈している.一方,fccのナノ粒子は,他の貴金属ナノ粒子でもよく観察される多重双晶を含む10面体形状をしている.このほかに,20面体形状をしたfccナノ粒子もよく観察されている.図12は,観察中の試料ドリフトの影響を抑えて撮影したfcc構造を有する粒子の原子分解能STEM-HAADF像である.得られたSTEM-HAADF像は,表面が{111}面のみで覆われた多重双晶の正20面体を仮定した原子配列の投影モデルとほぼ一致している.このように最新の試料ドリフト補正法によって,高い分解能で非常に細かな原子配列を直接明らかにすることができる.

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図11 hcp-Ruナノ粒子(a)とfcc-Ruナノ粒子(b)の高分解能電子顕微鏡像[12]と原子モデル.


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図12 fcc-Ruナノ粒子のHAADF-STEM原子分解能像(左)と正20面体粒子モデル(右).

 fcc構造と従来のhcp構造のRuナノ粒子をγ-Al2O3に担持して,それぞれのCO酸化触媒能を評価した結果を図13に示す.ここでは,50%のCOがCO2へと変換される温度T50を粒子の平均サイズに対してプロットしている.触媒活性が高いほど,より低い温度で反応が進むのでT50の値も低下する.通常のhcp構造の粒子では,粒径が大きくなるにつれてT50は上昇しており活性が低下している.これは,サイズの増加と共に比表面積が減少していることによると理解できる.一方,新規のfcc構造の粒子では粒径が大きくなるにつれて逆に活性が高くなるという,極めて特異な傾向を示している.粒径3nm以上のfcc-Ruは2nmのhcp-Ruよりも高い活性を有している.図11,図12に見られたように,結晶構造の違いにより表面に露出している結晶面が異なることが触媒活性に影響を与えていることが考えられるが,それだけでは一般とは逆のサイズ依存性は説明できない.格子欠陥構造や粒子形状がサイズによって変わっている可能性も含めて,さらに詳しい電子顕微鏡観察による構造・状態解析と第一原理計算による理論検討などを現在進めている.

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図13 hcp-Ruナノ粒子とfcc-Ruナノ粒子のCO酸化転換率のT50の平均粒径依存性[12].

 このように,新たに合成に成功したfcc-Ruのナノ粒子は従来の金属ナノ粒子にない特異な性質と既存性能を凌ぐ高い触媒活性を示しており,それらの原理解明に根ざした更なる研究展開により画期的な触媒材料の実用化が大きく期待される.

4.おわりに

 本稿では,筆者らが主としてJST-CREST,JST-ACCELにより展開している,新規ナノ粒子の合成とその新たな機能性の開発に関する研究成果の一部を紹介した.これらの成果を得るにあたって,収差補正機能を有する最先端の原子分解能走査・透過電子顕微鏡による構造・状態解析は非常に重要な役割を演じている.物質の機能発現機構の理解のために,最近では第一原理計算による理論解析が盛んに行われているが,研究対象とする物質の精緻な構造・状態の知見なくして正確で信頼性の高い理論計算は成立しない.特にここで紹介したナノメートルサイズの金属粒子については,現在では丸ごと第一原理計算が可能になってきており[18],ますます電子顕微鏡解析の重要性が高まっている.平成25年度に九州大学に設置された,収差補正電子顕微鏡JEM-ARM200F ACCELARM(図6右)は,新規開発の球面収差補正器を内蔵した最先端装置であり,30~200kVの広い加速電圧での原子分解能解析を可能にした.それによって,ナノ粒子も含めて様々物質・材料について,これまでにない高い精度の構造・状態解析の可能性を切り拓いている.そのため,筆者らのグループの他にも国内外の大学・企業によるナノ粒子に関する利用課題がここで実施されている.このように,ナノテクノロジープラットフォーム事業は,従来にない最先端の解析研究を,必要としている様々な研究分野に速やかに波及させて新たな先端研究の展開を可能にしかつ強力に加速しており,もはや我が国の最先端研究の発展になくてはならない研究インフラである.

参考文献

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(京都大学 大学院理学研究科 化学専攻 草田 康平)


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