NanotechJapan Bulletin

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文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム 卓越した技術スタッフ
<令和2年度優秀技術賞>
AN-2500バンデグラーフ加速器と共に37年
~装置の保守・改良・分析手法拡大でイオンビーム分析を支援~

受賞者 広島大学 微細加工プラットフォーム 西山 文隆氏に聞く

 

加速器操作卓前の西山 文隆氏

 

 文部科学省の委託事業:「ナノテクノロジープラットフォーム事業」(NPJ)は,ナノテクノロジーに関する最先端の研究設備とその活用のノウハウを有する機関が緊密に連携して,全国的な設備の共用体制を共同で構築する.ナノテクノロジー関連科学技術において基本となる3つの技術領域:「微細構造解析」,「微細加工」,「分子・物質合成」に応じて,25の法人・大学,延べ37の機関が参画し,各領域のプラットフォームを構成する.NPJ前身のナノネット事業,それに続く2012年から9年を経たNPJで,共用が根付き,年間3,000件の利用,1,000件の論文,3,000件の発表という成果が生まれるようになった.多くの成果が生まれたのは,各機関に支援スタッフが置かれ,装置利用のノウハウを提供したことによる.このため,NPJは平成24年度から,それまでの利用成果表彰に加えて,技術スタッフ表彰を行うようになった[1].令和2年度は,優秀技術賞1件,技術貢献賞3件,若手技術奨励賞1件が選ばれ[2],表彰式は2020年12月9日に東京ビッグサイトとオンラインで開催された第20回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2021)に於いて行われた[3].優秀技術賞は,「AN-2500バンデグラーフ加速器と共に37年」と題し,広島大学 微細加工プラットフォーム 西山 文隆氏に贈られた[4].2019年度までは支援の現場に受賞者を訪ね,どのような支援が行われ,どのようなご苦労があったかなどを伺ってきたが,年初からの新型コロナウイルス感染拡大が収まらず,Web会議で受賞者の広島大学 ナノデバイス・バイオ融合科学研究所 技術職員 西山 文隆(にしやま ふみたか)氏にお話を伺うこととなった.Web会議には広島大学 微細加工プラットフォーム 運営責任者の同研究所 黒木 伸一郎(くろき しんいちろう)教授が同席された.

 

1.広島大学 微細加工プラットフォームの概要

1.1 広島大学 微細加工プラットフォームの成り立ち

  広島大学微細加工プラットフォーム(PF)は,シリコンナノ加工及びデバイス技術に関する支援を行う.クラス10のクリーンルームと電子線描画によるナノデバイス試作ラインを用いた高度な微細シリコンデバイス試作を支援する[5].広島大学組織としては,学内共同教育研究施設の一つ:ナノデバイス・バイオ融合科学研究所(Research Institute for Nanodevice & Bio Systems:RNBS)の一部門と位置付けられている(図1).

  ナノデバイス・バイオ融合科学研究所は,1986(昭和61)年に学内共同利用教育研究施設として集積化システム研究センターが設置されたのに始まる.当時のミッションは「基礎研究を通して半導体技術開発に貢献し時代の要求に応える人材の育成」であった.その後,ナノデバイス・バイオ融合科学研究所に改組され,ミッションは「半導体技術とバイオメディカルサイエ ンスを融合する基盤技術の開発」となり,2016年に生体医歯工学共同研究拠点」に指定された.現在は,ナノテクノロジープラットフォーム,生体医歯工学共同研究拠点,およびRNBS各競争的資金プロジェクトの3つが重なり合って研究開発を進めている.2020年には,地域イノベーション企業ネットワークのハブとして,経済産業省「J-Innovation HUB地域オープンイノベーション拠点 国際展開型」に選抜されている.

 

図1 広島大学 ナノテクノロジープラットフォームプロジェクト 微細加工プラットフォーム

 

1.2 広島大学 微細加工PFの共用設備

  広島大学 微細加工PFは多数の設備を供用し(表1),半導体デバイス一貫試作ラインを提供し,併せて電子デバイス物理特性評価を支援する.スーパークリーンルーム西棟にSi-CMOS試作ラインを設置する(図2)が,SiCやパワーデバイス,バイオチップの試作も支援する.超高精度電子線ビーム描画装置は世界最小加工寸法の原子数十層オーダー6 nmの超々微細加工を可能にしている.本稿の対象であるAN-2500バンデグラーフ加速器は電子デバイス物理特性評価装置の一つの施設として運用され(図3),共用装置のリストには,「ラザフォード後方散乱(RBS)測定装置」の名で登録されている[5].

 

表1 広島大学 微細加工PFの共用設備

 

図2 スーパークリーンルーム西棟 Si-CMOS試作ライン

 

図3 バンデグラーフ加速器施設

 

1.3 広島大学 微細加工PFの支援活動

  広島大学 微細加工PFは8人のメンバーで運営している.8人のうち2人は他の組織から兼務で加わっている.その一人は2018年度に,「シリコンのトータルソリューション」の題名で若手技術奨励賞を受賞した[6].

  利用形態は他のプラットフォームとほぼ同じで,その内容を表2に示した.成果非公開の利用も可能であるが,民間企業等との共同研究が成果非公開型へ移行した場合は,NPJ事業から自主事業での実施に変更となる.中国・四国の半導体関連メーカーとの共同研究が多い.共用機器の中には,「技術代行専用」と指定されたものがあり,本稿の対象となる「ラザフォード後方散乱(RBS)測定装置」にはその指定がなされている.機器利用に高度の技術が必要なためである.

 

表2 広島大学 微細加工PFの支援形態

 

 利用実績(図4)では技術代行が多い.令和元年度は52件のプロジェクトを支援し,内23件が技術代行,8件が非公開だった.平成24年度以降の支援プロジェクト件数は,40件以下になったこともあるが概ね50件前後で推移している.LSIの試作など,100ステップに及ぶ長い工程のプロジェクトもあり,そのため支援プロジェクト件数は限られがちである.

 

図4 広島大学微細加工PFの支援件数推移

 

 広島大学 微細加工PF はNPJの教育活動も分担する.夏季セミナー:月~土 設計~作製~測定の「短期試作CMOS-IC」を行っている.広島大学の社会人向け教育プログラムの一環として全国の企業から参加者を募るが,NPJの学生の夏の研修プログラムにもなっている.NPJの研修コースは英語で研修できる.2020年はコロナ禍のため,WEB経由で実践コースを開催した.2日で設計し,3日で作り,土曜日にプローバーに載せて特性を測定する.製造工程の空き時間には講義を行う.

 

2.静電型加速器を用いたイオンビーム分析

 2.1 バンデグラーフ加速器

  物質の究極の姿を明らかにしようと,加速器で荷電粒子を加速・照射して原子核や素粒子の振る舞いを調べる.加速器が生み出す高速イオンビームの物質との相互作用から,LSI製造の要素プロセスとなったイオン注入技術が生まれ,散乱・生成した粒子を検出して分析が行われるようになった.

  加速器の形態には,サイクロトロンのような円形加速器,電荷を積み上げる静電加速器などがあり,分析機器の多くは静電加速器を用いる.これには,整流管(整流器)とコンデンサを組み合わせた倍電圧整流回路を積み重ねるコッククロフト型,絶縁性のベルト表面にコロナ放電で電荷qをスプレーし,高電圧電極(ターミナル)とグラウンドとの静電容量Cに蓄えてV=q/Cで電圧を発生させるバンデグラーフ(Van de Graaff:VdG)型(図5)がある.静電気を積み上げて電圧を発生させるという単純な原理のため,卓上に載るような小型のVdGはベルト起電器として高校理科の教材になっている.この単純な構造のため電圧の安定度が高く,分析に用いた時は,バックグラウンドノイズが低く高感度になる.高電圧を得るには大型にする必要があり,20MVくらいまで電圧を上げられるが,加速管の全長は20m近くになる.

 

図5 バンデグラーフ加速器原理図

 

2.2 イオンビーム分析

 イオンビームを物質に照射すると,様々な現象が起こる(図6).物質内に入ったイオンは物質を構成する原子に阻まれて物質中に止まる.イオンは物質中で不純物となり,LSI製造工程で多用されるイオン注入となる.結晶格子はイオンビームから見る方向によっては原子の存在しない空間が筒状に存在する.この方向に入射したイオンは原子に衝突せずに通過してしまうチャネリングが起こる.イオンはそのエネルギーを物質中の原子に与え,原子が励起状態から定常状態に復帰するときに励起エネルギーを電磁波として放出する.物質中の原子をイオン化し,二次イオンとして放出させる.イオンビームは原子に散乱され,エネルギーや進行方向を変える.このように,放出される電磁波,イオンなどは物質の影響を受けているから,これらを検出・測定すれば物質の分析ができることになる.

  表3にイオンビーム分析法を列挙した.*のついた分析法は,西山氏が豊富な経験・実績を持っているものである.

 

図6 イオンビームと物質の相互作用

 

表3 イオンビーム分析法

 

 表3のいくつかについて説明を加えると,RBSは,MeV領域のHまたはHeイオンビームを 固体表面に照射し,散乱されたイオンのエネルギースペクトルを測定することにより試料を分析する方法である.また,PIXEは,MeV領域のHまたはHeイオンビームを固体表面に照射し,元素の内殻電子を弾き出し,外側の殻から電子が遷移して発生した特性X線のエネルギースペクトルを測定することにより試料を分析する.さらに,ERDAは,イオンビームを固体表面に照射し,反跳によって放出されたより軽いイオンのエネルギースペクトルを測定することにより試料を分析する方法で,RBSでは検出不可能な水素などの軽元素を高い感度で検出できる.NRAは,入射イオンビームを固体表面に照射し,核反応によって生じた粒子線やγ線のエネルギースペクトルを測定することにより試料を分析する.このほか,AMS(Accelerator Mass Spectrometry:加速器質量分析 AMS)は,試料をイオン化・加速して質量分析を行い,試料中の元素の同位体存在比を測定する方法で,試料の年代測定に用いられる[7].

  イオンビームはイオン注入や微細加工にも用いられる.これらの用途での加速電圧は数十kVのものが多い.集束イオンビーム加工装置(FIB)は,イオンビームで試料を切削する過程を,SIMSで観察する機能を持っているが,加速電圧は30kV程度である.これに対し,広島大学にあるVdGの加速電圧は2.4MVとはるかに高いため,RBS,PIXEなどのイオン分析ができる.

 

2.3 イオンビーム分析法の特徴と分析成果

 イオンビーム分析法の特徴は,①非破壊分析,②多元素同時分析,③高感度,④深さ方向分析(Depth Profiling)が可能な点にある.バンデグラーフ加速器の特徴は,先に挙げた電圧安定性に加え,加速器を立ち上げてすぐ測定に入れ,構造簡単のためメンテナンス容易,2.5MV以下の加速電圧では放射化物の生成が少ない,などにある.

  この特徴を活かし,西山氏は,NPJに先立ち,図7のようなイオンビーム分析を広島大学に設置されたAN-2500で実施した.

 

図7 バンデグラーフ加速器AN-2500で実施されたイオンビーム分析

 

3.AN-2500バンデグラーフ加速器の導入・保守・分析機能整備

3.1 装置導入・分析機能整備

 広島大学は1982年の工学部を皮切りに,広島市内に散在していた施設を,東に隣接する東広島市の東広島キャンパスに統合移転することとなった.旧工学部キャンパスには1962年に設置された600kVコッククロフト型加速器があったが,老朽化やトリチウム汚染の懸念から,設備を更新することになり,日新ハイボルテージ(NHV)社のバンデグラーフ加速器AN-2500型(図8)が,1983年3月に納入された.最大加速電圧は2.5MVである.圧力容器は長さ約3m,容積1.5m3で,図5と異なり絶縁ベルトは水平方向に走る横型になっている.図8右中央の先端が球形になっているところに電荷が溜まる.蛇腹部分は絶縁カラムで1層ごとに電圧勾配を一定に保つための抵抗が接続されている.西山氏は1965年からコッククロフト型加速器の運転・保守,中性子計測用エレクトロニクスの組み立て・調整等に従事していたので,バンデグラーフ加速器AN-2500の担当となった.

 

図8 バンデグラーフ加速器AN-2500(左:圧力容器、右:加速器本体)

 

  当初の導入の目的は中性子散乱実験だったが,納入された頃には原子核実験の興味が中・高エネルギー領域に移っており,この加速器で出来る原子核の実験はもはや残っていなかった.一方,1970年代後半から,原子核研究から撤退した小型加速器をイオンビーム分析に転用する流れが起こっており,AN-2500は中性子を発生させることなく,分析専用機としてスタートした.

  ところが,加速器に続いて納入された分析チャンバーは,直径・高さとも600mmもあり,試料をセットしてビームを通せるまで真空度が上がるのに1時間以上かかる上,試料ホルダーに装着できる試料数が少ないなど使い勝手が悪かった.小容量,スループット向上,二次粒子バックグラウンドの低減等を念頭に,西山氏は,設計・製図の教科書と真空材料のハンドブックを首引きで調べ,何度も図面を引き直して新チャンバー設計し,内径・高さとも200mmの小型チャンバーを製作した.排気に要する時間は大幅に短縮された.さらに,既存のGe X線検出器に加えて新たにSi(Li)X線検出器を導入,加速電圧の安定化,イオン源ガスボトルの増設(ビームのイオン種を3から5に)等様々な改良を行って,分析のニーズに応えた.分析チャンバー同様,西山氏が図面を引き,半田付けや機械加工,組み立てを自ら行って,加速器実験室が出来上がった(図9).写真の壁の背後に加速器が遮蔽・設置されている.

 

図9 広島大学 AN-2500バンデグラーフ加速器:加速器実験室と仕様・性能

 

3.2 AN-2500バンデグラーフ加速器の保守・地震後の修復

  バンデグラーフ加速器本体および付随する真空装置・冷却水循環装置・計測用エレクトロニクス等すべての装置・機器のメンテナンスは,すべて西山氏が行っている.

  例えば,加速器本体は,原則として年に1回タンク(圧力容器)を開けてチャージングベルトのテンション・トラッキング調整,チャージングスクリーン・コレクタースクリーンのクリーニング,RFイオン源のチューニングなどを行うが,トラブルが発生したらその都度タンクを開けて修理を行う.運転時間が1000時間を超える毎に加速器を分解し,すべてのパーツの点検・クリーニングを行い,再組立・調整を行って運転を再開する.保守のための分解・組立てに加え,使用する分析法ごとに部品を交換することが多く,重い部品の装着にはクレーンを使う(図10).絶縁のために入っているSF6ガスの回収・再充填の作業もある.トラブルや修理の詳細を記録したノートは現在21冊目という.

 

図10 チャネリング測定のためにゴニオメータを装着

 

  計測用エレクトロニクスでは,エネルギースペクトルを取得する計測システムが3系統あり,同時に3個の検出器を使用することができるが,計測用エレクトロニクスモジュールの多くは購入後30年以上経過しており,しばしばトラブルが発生する.取扱説明書についている回路図を見ながら,信号をオシロスコープで追って不良部品を見つけて交換している.

  2001年3月24日の芸予地震(M6.7,震度6弱)から7ヶ月以上経過した11月4日に,操作卓の前にいたら突然ジェットエンジンの逆噴射のような音がした.急いで圧力容器を開けて見たら,絶縁カラムと加速管が破断していた.横置き型の加速器はカンチレバー構造のため地震に弱い.軽量化が必要と考え,ターミナルアセンブリーを解体して再構築,不要部品を取り外し,重量部品は軽量品に交換,ターミナルシェルをステンレスからアルミ合金に換えた.復旧には2年かかったという.

  手厚い装置改良・保守のもとで,適切な手法選択,これに伴う測定系セッテイングを行って,数多く,様々なイオンビーム分析が行われた.

 

4.AN-2500VdG加速器を用いたイオンビーム分析

  分析目的に応じ,分析法を選び,分析チャンバー内の測定系セッテイングを行って,多様なイオンビーム分析が行われた.

  一つの例は,ある企業からSi基板上に成膜したYSZ(イットリウム安定化ジルコニア)のYとZrの比を出してほしいという分析依頼である.YとZrは原子番号と質量数が1しか違わないのでRBSでは分離が難しいがPIXEと組み合わせると分離できる.図11左の分析チャンバー内のセッテイングによりRBSとPIXEによる元素分析を行い,その結果を元に計算した結果がRBS測定に重ねて記され(図11右),図中にZr,Yと記された高さに相当する量がそれぞれ存在することが分かった.YSZ中に存在するOのピークが見え,また多くのZrに不純物として入っているHfの小さなピークが見えている.

 

図11  RBS/PIXEセッテイングによるSi基板上に成膜したYSZのRBSスペクトル

 

 結晶の組成比は,化合物半導体についてRBSで求めた例もある[8][9].光通信帯光源が利用可能なテラヘルツ(THz)波発生検出用光伝導アンテナ(PCA)用低温成長GaAs系半導体を分子線エピタキシャル(MBE)法を用いて成長し,その結晶構造をRBSで評価した.220℃で成長したIn0.45Ga0.55AsのRBSスペクトルの内,In信号に着目し,試料の表面に対して[100]方向と[110]方向に関して角度スキャンを行い,400℃と550℃で1時間アニールした試料と比較した(図12).実験結果を解析し,結晶内の置換型原子の割合を算出した結果,全In原子の内,約40%が格子間に含まれていることが明らかになった.

 

図12 InGaAsにおけるRBS[9]

 

 図13はSiGe/SiにCを0.7%加えた試料の共鳴散乱による測定例で,RNRA測定により,検出感度が通常のRBS測定の100倍以上になるため,Cの検出ができている.

 

図13 RNA/RNRAセッティングと共鳴核反応(RNRA)よるSiGe/Si中のCの分析

 

 結晶格子のある特定方向からイオンビームを照射すると,イオンビームは結晶を構成する原子に妨げられずに通過するチャネリング現象が起こる.不純物が入って格子が乱れるとチャネリングが妨げられるので,チャネリング測定によって不純物の位置や結晶性の評価ができる.SiC単結晶にArイオンを照射し,照射量により結晶性が変化した例を示す(図14).

 

図14 ゴニオメータをセットしてチャネリングによりSiCの結晶性の変化を測定

 

 イオンビーム分析に限らず,検出対象に適した分析法がある.ERDAとRBSとをセッテイングし,Si基板上DLC(ダイヤモンドライクカーボン)中のCをRBSで,HをERDAで定量した(図15).

 

図15 ERDA/RBSをセットしてSi基板上DLC中のC,Hを定量

 

5.おわりに

  1983年にAN-2500バンデグラーフ加速器が広島大学に導入されてから37年,西山氏は導入時からこの装置を担当してきた.中性子実験用からイオンビーム分析用に生まれ変わらせ,独りで測定系・装置の維持・管理・改良を重ね,バンデグラーフ加速器でなければできないイオンビーム分析を支援してきた.技術代行の形で支援を行っているが,企業からの依頼は半ばを超えるという.核反応で元素比がわかると聞いたからと頼んできたりする.守秘契約を結んでも,目的を知らされずに依頼されることもある.ユーザーにはもっと情報を提供してほしいという.成果事例が広まれば利用は拡大しよう.

  一方,メンテナンス要員の後継者難,補修部品の入手困難などで,国内の小型バンデグラーフ加速器は10台以上あったのが現在は3台になってしまった.広島大学の他は,法政大学と受託分析の住重アテックスにあるだけになった.西山氏は代替可能な部品を自作し,シャットダウンした他大学から補修部品を譲り受けたりして,維持してきた.1983年に設置した時より安定で,分析手段は増えているという.特色ある分析手法とそのための装置の今後のあり方,という課題が投げかけられた.

 

参考文献

[1] 文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業 技術スタッフ表彰
https://www.nanonet.go.jp/ntj/award/
[2] ナノテクノロジープラットフォーム令和2年度秀でた利用成果と技術スタッフ表彰者が決定!!
https://www.nanonet.go.jp/ntj/topics_gov/?mode=article&article_no=5391
[3] nano tech 2021 第20回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議 開催
https://www.nanonet.go.jp/ntj/topics_gov/?mode=article&article_no=5405
[4]「AN-2500バンデグラーフ加速器と共に37年 優秀技術賞受賞」
https://www.nanonet.go.jp/pages/research_support_award/R02_Award_1.pdf
[5] 広島大学微細加工プラットフォーム
https://www.nanonet.go.jp/ntj/insti/hiroshima-u/nf/
http://www.nanofab.hiroshima-u.ac.jp
[6] 若手技術奨励賞 佐藤 旦「シリコンのトータルソリューション」NanotechJapan Bulletin Vol. 12, No. 4, 2019
https://www.nanonet.go.jp/magazine/feature/outstanding-staff/15.html
[7] 笹川 薫 「イオンビーム分析概論 (I) (HEIS, MEIS, LEIS)」,Journal of Surface Analysis Vol.12 No. 4 (2005) pp. 435 - 441
[8] NPJ成果事例F-RO-2014-001:ラザフォード後方散乱法を用いた低温成長InxGa1-xAsの結晶構造の作製及び解析
https://www.nanonet.go.jp/case/content/case/NP/F/RO/F-RO-2014-001/H26-F-RO-01.pdf
[9] 富永 依里子,角屋 豊,「InP 基板上低温成長 InxGa1-xAs の結晶構造の成長温度およびアニール温度依存性」,「材料」(Journal of the Society of Materials Science, Japan), Vol. 64, No. 9, pp. 696-700, Sep. 2015

(図は全て広島大学から提供された)

 

(古寺 博)