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極端紫外線レーザーにより熱影響が極めて少ない材料加工を実現 ~レーザー加工メカニズムの解明や最適加工の実現に期待~

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研),東京大学,早稲田大学,国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(QST),宇都宮大学は2018年10月23日,極端紫外線フェムト秒(fs)レーザーで合成石英への極めて熱影響の少ないレーザー加工を実現したと共同発表した.産総研分析計測標準研究部門 放射線イメージング計測研究グループ 澁谷達則特別研究員ら,東京大学 物性研究所 小林洋平教授ら,早稲田大学 理工学術院 鷲尾方一教授らが共同で,X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser)利用実験グループであるQST量子ビーム科学研究部門 錦野将元グループリーダーと宇都宮大学学術院工学研究科 東口武史教授らの協力の下に,得た成果である.本研究は,国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」の一環として実施され,成果の詳細は米国物理学協会発行の学術誌Applied Physics Lettersにオンライン掲載された.

 現在,紫外線から遠赤外線領域のさまざまな波長のレーザーを用いた材料加工が行われている.より短波長・短パルスのレーザー光を用いる次世代レーザー加工では,波長120nm以下の極端紫外線(EUV)レーザー光を用いた非熱的加工が期待されている.一方,小型電子デバイス用の次世代電子回路基板としてガラスが注目され,ガラスへの微細穴開け加工ニーズは高い.しかし,従来のレーザー加工技術では,熱溶解によりレーザー照射部周辺にリムと呼ばれる隆起構造が生成するなど,加工品質上の課題があった.

 本研究チームは今回,従来の近赤外線fsレーザー(波長800nm,パルス幅70fs)とSACLAのEUV fsレーザー(13.5nm,70fs)を用いて合成石英の加工を行い,その損傷閾値や加工形状を比較した.近赤外線fsレーザーによる損傷閾値は3.8×103mJ/cm2に対し,EUV fsレーザーでは0.17×103mJ/cm2と約20分の1になった.加えて,切削速度を支配する有効吸収長は58 nmと算出され,これまでのEUVナノ秒レーザーと比較すると約2.5倍向上し,EUV fsレーザーが従来のレーザー照射に比べて極めて高い加工性能を示した.

 続いてEUV fsレーザーをマルチパルス照射して深掘り加工を行い,形成されたクレーター表面を観察し加工形状を評価した.レーザー照射によって熱溶解した際に一般に見られるリム構造や,加工によるクラックは観測されず,合成石英に対し熱影響の少ない高品質のクレーター加工ができることが実証された.

 今後はfsレーザー加工のメカニズムを解明し,産業ニーズに応じた最適加工の実現を目指すとしている.

(注)Tatsunori Shibuya, Takashi Takahashi, Kazuyuki Sakaue, Thanh-Hung Dinh, Hiroyuki Hara, Takeshi Higashiguchi, Masahiko Ishino, Yuya Koshiba, Masaharu Nishikino, Hiroshi Ogawa, Masahito Tanaka, Masakazu Washio, Yohei Kobayashi, and Ryunosuke Kuroda, "Deep-hole drilling of amorphous silica glass by extreme ultraviolet femtosecond pulses", Applied Physics Letters, Vol. 113, p. 171902 (2018); doi: 10.1063/1.5046125; published online 22 October 2018