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新たなフォトニック結晶構造を用いて半導体レーザーの高輝度化に成功 ~来たるべき超スマート社会におけるスマート製造やスマートモビリティに貢献~

 京都大学と国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)は2018年12月18日,京都大学工学研究科 野田進教授らの研究グループが,独自の「2重格子フォトニック結晶」共振器を用いて,半導体レーザーの高輝度化(高出力・高ビーム品質動作)に成功したと発表した.本研究は,JST戦略的創造研究推進事業ACCEL他の支援を受けて行われ,成果は英国の材料科学誌Nature Materialsのオンライン版に掲載された(注).

 来たるべき超スマート社会(Society5.0)においては,スマートモビリティ(自動車やロボットの自動運転)やスマート製造の核となる高度センシングや光加工のための,高輝度半導体レーザーが必要とされている.しかしながら,従来の半導体レーザーは,高輝度化のため,光出射面積を増大し高出力化を図ろうとすると,ビーム品質が劣化し,逆に輝度が低下するという問題があった.

 本研究グループは,1999年に「フォトニック結晶レーザー」を発明した.フォトニック結晶とは,光の波長程度の周期的屈折率分布をもつナノ構造材料で,様々な光制御が可能である.フォトニック結晶を活用すれば,原理的に,大面積でも単一モード動作(高ビーム品質動作)が可能で,光出力を増大させつつも,高い集束性を保ち,従来の半導体レーザーの限界を超える輝度を得ることが可能になると期待されていた.

 今回研究グループは,レーザーの心臓部となるフォトニック結晶共振器として,「2重格子フォトニック結晶」という,2つのフォトニック結晶をx-およびy-方向に1/4波長だけずらして重ねた独自の共振器構造を提案した.半導体基板上に,n型クラッド層・レーザー活性層・「2重格子フォトニック結晶層」・p型クラッド層を積層し,基板上に設けた環状電極の内側からレーザー発光を取り出す,面発光半導体レーザーを試作した.「2重格子フォトニック結晶」層内では,光路差がx-,y-方向を合わせて1/2波長の2成分間の消失性干渉のために,面内方向でのレーザー発振は抑止され,積層面に垂直方向のレーザー発振だけが可能となる.円形の面発光領域を500μmφと大きくし,従来の半導体レーザーの10,000倍以上の大面積であっても,波面が揃った単一モード動作を実現した.さらに,狭出射角(<0.3°)で,室温パルス動作10W級の高出力・高ビーム品質(M2~2,ビーム断面の光強度分布はガウス分布のM2=1に近い)動作を達成した.連続動作でも約7Wの高出力が得られた.本レーザーの輝度は300MW/cm2sr以上となることを確認した.この輝度は,大型のガスレーザーやディスク/ファイバーレーザー(≥1GW/cm2sr)に迫る輝度である.

 今後は一層の高輝度化,10~100psの短パルス動作や青紫色の短波長領域への展開,スマート化 (機械学習との融合など)を推進する.これらの研究推進により,ガスレーザーやファイバーレーザーに迫る輝度(≥1GW/cm2sr),短パルス・短波長動作が実現されると,加工 ・製造(精密加工,金属加工等含む),自動車の自動運転に向けたLiDAR(Light Detection and Ranging),さらには医療・生命科学へと,高輝度半導体レーザーが適用される分野が広がる,としている.

(注)Masahiro Yoshida, Menaka De Zoysa, Kenji Ishizaki, Yoshinori Tanaka, Masato Kawasaki, Ranko Hatsuda, Bongshik Song, John Gelleta & Susumu Noda, "Double-lattice photonic-crystal resonators enabling high-brightness semiconductor lasers with symmetric narrow-divergence beams", Nature Materials (2018), DOI: 10.1038/s41563-018-0242-y; Published 17 December 2018