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分子の空間配列により高分子の重合度を制御 ~分子の並び方でつながる分子の数を制御できる可能性~

 北海道大学は2019年4月22日,同大学大学院 理学研究院の佐田 和己教授,小門 憲太助教,阿南 静佳博士研究員らの研究グループが,固定された分子同士をつなぐことで高分子を合成する新しい方法を開発した,と発表した.本研究は,独立行政法人日本学術振興会(JSPS)の科学研究費助成を受けて行われ,成果はAngewandte Chemie International Edition誌にオンライン公開された(注).

 モノマー分子が長く連なって出来た高分子は,そのつながりの長さ(重合度)により性質が変化するので,高分子の製造において重合度の制御は重要な役割を有している.一般に高分子は,溶液や液体の状態にある自由に動ける分子同士が,ランダムに衝突し結合することを繰り返して合成される.重合度を制御するには分子の反応性を制御する必要があり,反応性を制御しないと環状の高分子が生成するなどの問題も生じて重合度の制御は困難とされていた.本研究で研究グループは,2種類の分子が交互に結合した高分子の合成において,一方の分子(A-Aモノマー)を規則的な状態に固定し,他方の分子(B-Bモノマー)を自由に動ける状態とし,これらを交互に結合させることを試みた.B-Bモノマーは,互いに隣接する二つのA-Aモノマー間を連結するが,隣接するA-Aモノマーが多数ある場合,どのA-Aモノマー同士を連結するかは確率的に決まる.近隣のA-Aモノマーが既に反応している場合はそれ以上連結することができず,最終的に得られる重合度は,固定されたA-Aモノマーの配列により決定されることになる.

 実験では,A-Aモノマーを規則的に固定するため,A-Aモノマーと金属イオンからなる多孔性の結晶(金属有機構造体;MOF)が作製された.この結晶をB-Bモノマーが溶解した溶液に浸すことで,結晶の内部にB-Bモノマーを取り込みながら,固定されたA-Aモノマー同士をB-Bモノマーで連結し高分子が合成される.研究グループは,A-Aモノマーにターフェニルジカルボン酸(Aztpdc),B-Bモノマーには両端にプロパギル基を持つ架橋剤(CL2)を用いた.Aztpdcは,亜鉛イオンや銅イオンと反応させて多孔質なMOFとして空間位置が固定される.両者を反応させた後,MOFを分解するとpolyAzCL2が得られる.比較として,AztpdcをMOFとして固定せず,AztpdcのメチルエステルとCL2とを溶媒中で反応させる実験も行われた.サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によると,MOFを経て得られた高分子の分子量分布は104付近にピークを有する単峰曲線であるが,溶液反応で得られた高分子の分子量分布には多数のピークが存在し,MOFを経由して合成したpolyAzCL2とは大きく異なる分布を呈した.MOFの結晶構造に合わせた合成反応シミュレーションにおいても,実験と良く一致した重合度が得られている.結晶構造を変えると,異なるシミュレーション結果となることも,モノマーの空間的な配列により重合度が決定されることを裏付けるという.

 研究グループは,本研究の成果は,モノマーの空間的配列を固定することで高分子の重合度を制御するという新たな高分子合成方法を提供する可能性があるとしている.

(注)Shizuka Anan, Yumi Mochizuki, Kenta Kokado, and Kazuki Sada, "Step-growth copolymerization between immobilized monomer and mobile monomer in metal-organic frameworks", Angewandte Chemie International Edition, Accepted Articles, doi: 10.1002/anie.201901308; First published: 08 April 2019