【メンテナンスのお知らせ】11/1(金)16時頃~11/5(火)10時頃、本Webサイトの閲覧ができなくなります。
ご不便をおかけし、大変恐縮ですが、どうぞ宜しくお願いいたします。
 

ナノテク情報

デバイス・応用

電流励起型有機半導体レーザーダイオードの実現 ~九州大学発ベンチャー(株)KOALA Techによる実用化を展開~

 九州大学,国立研究開発法人科学技術振興機構(JST),公益財団法人九州先端科学技術研究所(ISIT),株式会社KOALA Tech は2019年5月31日,同大学最先端有機光エレクトロニクス研究センターのA.S.D. Sandanayaka(サンダナヤカ)特任教授,安達千波矢センター長らの研究グループが,有機材料を用いた半導体レーザーダイオード(OSLD:Organic Semiconductor Laser Diode)の電流励起発振に成功したと共同発表した.本研究は,JSTのERATO「安達分子エキシトン工学プロジェクト」研究活動の一環で得られ,本成果は日本発の国際科学雑誌Applied Physics Expressのオンライン速報版で公開された(注).

 半導体レーザーは光ファイバ通信や光ディスクなどで実用化されており,化合物半導体の無機材料が使用されている.有機材料を用いたレーザー光源が実現すれば,有機分子の設計自由度の高さによって実現できる任意の発振波長,機械的柔軟性や生体親和性に基づく実装自由度の拡大,透過型デバイスへの適用が期待できるが,電流励起型の有機半導体レーザー(OSLD)は今まで実現されていなかった.

 本研究グループは,OSLDの実現を阻んでいた主要因は,高電流密度に耐えうる有機材料及び素子構造,及び高電流密度下で生じる三重項励起子やポーラロン吸収による光損失であることを見出し,有機レーザー材料として光損失が少ないBSBCz(4,4'-bis[(N-carbazole)styryl]biphenyl),積層構造には逆積層型OLED(Organic Light-Emitting Diode)構造,また光共振器には周期が異なる1次と2次の回折格子を組合わせた混合型DFB(Distributed FeedBack)構造を利用することでOSLDの開発に成功した.ガラス基板上に透明電極であるITO(Indium Tin Oxide)膜,SiO2の回折格子(格子幅は70nm(1次)と140nm(2次),厚さ60nm)をスパッタリングと電子線リソグラフィで形成し,その上に20wt%Cs添加BSBCz膜(膜厚60nm),BSBCz膜(膜厚150nm)を積層し,MoO3(10nm)を挟んで陽極となるAg/Al(10nm/90nm)を回折格子と周期が重なるように真空蒸着で積層する.電流はガラス基板に対して垂直方向に流す.レーザー発振光はガラス基板の裏面から基板に対して垂直方向に出射される面発光型であるが,回折格子による光共振器はガラス基板に平行な面積30μm×90μmに形成されている.

 OSLDに流す電流を増すと,約650A/cm2以上で青色の光(波長480.3nm)の発光効率,光出力が急増し,スペクトルが狭帯化(半値幅0.2nm以下)する,明確な閾値挙動が見られ,偏光や干渉性もあるので,レーザー発振であることを確認した.

 今後,分子設計およびデバイス設計を進めることで,可視域から近赤外域にわたるレーザー発振波長を有するデバイスへ展開し,本技術の実用化を目指す目的で2019年3月22日に設立した(株)KOALA Tech(Kyushu Organic Laser Technology)と協働して新しい応用展開を開拓する,としている.

(注)Atula S. D. Sandanayaka, Toshinori Matsushima, Fatima Bencheikh, Shinobu Terakawa, William J. Potscavage, Jr., Chuanjiang Qin, Takashi Fujihara, Kenichi Goushi, Jean-Charles Ribierre, and Chi-haya Adachi, "Indication of current-injection lasing from an organic semiconductor", Applied Physics Express, Vol. 12, No. 6, doi: 10.7567/1882-0786/ab1b90; Published 31 May 2019