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フェムト秒レーザー光の高次高調波によって薄膜の微細加工に成功! ~極端紫外光の回折限界集光が拓く微細加工の最前線~

 東京大学,宇都宮大学,及び国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)は2020年5月15日,東京大学大学院 理学系研究科附属光量子科学研究センターの坂上 和之主幹研究員(筆頭著者)らの研究グループが,近赤外域のフェムト秒レーザー光の高次高調波として極端紫外光(XUV)を発生させ,回折限界にまで集光して試料に照射することにより,サブミクロンスケールでの微細加工を実現した,と発表した.本研究は,文部科学省“光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)”(「光量子科学によるものづくりCPS化拠点」等)他の助成を受け,原著論文はOptics Letters誌に掲載された(注).

 Q-LEAPは光・量子技術を駆使して,経済・社会的な重要課題の非連続的な解決を目指す.その研究課題にサイバーフィジカルシステム(CPS)により生産性を高めるCPS型レーザー加工がある.レーザー加工は自動車や半導体で進展しており,レーザー加工機の世界市場規模は現在の1.5兆円から年率5~10%程度の成長が見込まれている.レーザー加工においては,如何に微細に加工できるかが最も大きな課題で,近赤外(NIR)フェムト秒レーザー光を希ガスなどの媒質に集光して発生する高次高調波のXUV(波長:10~100nm)超短パルス光は余分な熱を発生させない高精度な微細加工の光源として注目される.しかし,XUV領域では透過型レンズが使えず,回折限界集光を可能にする反射光学素子を作ることは難しかった.

 そこで研究グループは,高精度な集光可能な回転楕円ミラーを独自に開発し,NIRフェムト秒レーザー光の高次高調波を回折限界に集光することによって,XUV領域のレーザー加工を実現することを目指した.NIRフェムト秒レーザーパルス(Ti:サファイアレーザ,波長790nm,出力4mJ・40fs・1kHz)を希ガス(Ar)に集光して高次高調波(23~29次,波長27.2-34.3nm)を発生させ,厚さ300nmのAlフィルタで単色化したXUVを回転楕円ミラーで3軸スキャナに搭載した試料に集光,照射する.試料には,レーザー加工のレジスト材料として使われる,厚さ250nmのPMMAと厚さ80nmのメタアクリル酸被覆酸化ジルコニウム(ZrO2)ナノ粒子を,Si基板上にスピンコートした.XUVは照射位置にCCDカメラを置いて強度分布を測定したところ(1.48±0.18)×(0.79±0.08)μm2に集光されていた.XUV強度を変えて表面の削られる速さを測るとPMMAで~0.8mJ/cm2,ZrO2で~0.4mJ/cm2の閾値で蒸発から切削(ablation)に移行していた.PMMAに空いた穴の大きさは0.67×0.44μm2で,サブミクロンの加工を確認できた.また,顕微ラマン分光により,PMMAの高分子鎖が切断され,炭素の二重結合のできていることが分かった.

 近赤外域フェムト秒レーザー光の高次高調波として発生させたXUVにより,集光径と同程度の加工が可能であることを示せたので,今後,微細加工プロセスに高次高調波光源が活用されることを期待している.

(注)K. Sakaue, Hi. Motoyama, R. Hayashi, A. Iwasaki, H. Mimura, K. Yamanouchi, T. Shibuya, M. Ishino, T-H. Dinh, H. Ogawa, T. Higashiguchi, M. Nishikino, and R. Kuroda, "Surface processing of PMMA and metal nano-particle resist by sub-micrometer focusing of coherent extreme ultraviolet high-order harmonics pulses", Optics Letters, Vol. 45, Issue 10, pp. 2926-2929 (2020), doi: 10.1364/OL.392695; Published: May 15, 2020