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伸び縮みによって色が変化する伸縮性カラーシートの開発に成功 ~皮膚に貼って画像を表示する電子皮膚応用へ向けて~

 豊橋技術科学大学は2020年5月18日,東京工業大学は2020年6月15日,豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系の熊谷 隼人(博士後期課程),髙橋 一浩准教授と,東京工業大学生命理工学院の藤枝 俊宣講師らの共同研究チームが,膜厚400nmのシートを伸び縮みさせ,発色を変化させる可変カラーシートの開発に成功したと発表した.本研究は独立行政法人日本学術振興会 科学研究費他の支援を受けて実施され,成果はWiley社発行の科学論文誌Advanced Optical Materialsにオンライン掲載された(注).

 金属のナノ構造を周期的に配列した構造の表面では,特定波長の光に対して電子が集団振動する表面プラズモンが発生し,本来,光が通過できない狭いナノ隙間を透過するカラーフィルタとなる.また,伸縮性の材料上に金属ナノ周期構造を形成し,シートの伸縮により構造の周期を変化させて光を制御する手法が研究され,フレキシブルディスプレイや,構造のひずみを可視化するセンサ等への応用が期待されている.しかしながら,シートの膜厚がmmオーダーと厚く,マイクロアクチュエータ駆動が難しかった.

 この課題に対して本研究チームは,自動車用タイヤなどに使われているゴム材料の一種であるスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)の膜厚を1μm以下まで薄膜化したエラストマーナノシートを使用して,伸縮性カラーシートを開発した.試作したカラーシートでは,ナノ薄膜化(厚さ400nm)したエラストマー材料中に,厚さ50nm・幅250nmのAl薄膜の格子を一定の周期で埋め込んだ.シリコン(Si)基板にポリビニルアルコール(PVA)をスピンコートし,その上にSBSナノシートを塗る.これにAlを電子線蒸着し,集束イオンビーム(FIB)で格子を形成した後,再びSBSナノシートを塗り,PVAを水で溶かして基板を分離すると,Al格子を内蔵したエラストマーナノシートが出来上がる.格子の周期により透過光の波長が変わり,シートに歪を与えない状態では,周期350nmの場合に青(波長470nm),600nmの場合に赤色の光(波長660nm)が透過するフィルタができあがった.

 このナノシートへ歪みを与えると,シートを透過する光が緑(波長560nm,歪み12.1%)から青(波長495nm,歪み32.4%)へと変化することを確認し,表面プラズモンによる透過光の動的制御に成功した.また,495nmから660nmに及ぶ透過ピーク波長の連続的な変化を実現するとともに,繰り返し伸縮動作が可能なことも実証した.作製したカラーシートを伸縮するための駆動力は,従来の数値よりも2~3桁小さく,一般的なマイクロアクチュエータで十分に駆動可能である.さらに,エラストマーの接着力によりあらゆる場所へ貼り付けることができ,構造物のひずみの検出・視覚化を可能にし,さらにマイクロマシン技術との一体化により可変カラーフィルタの実現が期待される.

 本開発の伸縮性カラーシートは,マイクロアクチュエータ駆動で電子的に発色を変化させる表示素子に適用可能であり,皮膚上に貼り付けて画像を表示する電子皮膚への応用が期待される,としている.

(注)Hayato Kumagai, Toshinori Fujie, Kazuaki Sawada, and Kazuhiro Takahashi, "Stretchable and high-adhesive plasmonic metasheet using Al subwavelength grating embedded in an elastomer nanosheet", Advanced Optical Materials, Vol. 8, p. 1902074 (2020), DOI: 10.1002/adom.201902074; First published: 14 May 2020