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水に浮くほど軽い熱電変換材料を実現 ~ミクロな蜂の巣構造のガラスを半導体に変換~

 東北大学,山形大学,北海道大学および名古屋工業大学は2020年11月26日,東北大学材料科学高等研究所 藪 浩准教授,同多元物質科学研究所 山田 高広准教授,山形大学 松井 淳教授,および北海道大学,名古屋工業大学からなる研究グループが,熱電変換材料として知られるマグネシウムシリサイド(Mg2Si)ハニカム(蜂の巣)多孔体の新規合成法を開発し,合成した多孔体で熱電変換効率の向上に必須の高電気伝導率と低熱伝導率が両立することを確認したと発表した.本成果は米国化学会刊行Chemistry of Materials誌に掲載された(注).

 発電所や自動車などの熱効率は40~60%程度であり,廃熱として環境に放出されている残りのエネルギーを熱電変換材料により電気として取り出すことが望まれる.そのための熱電材料は,高効率かつ軽量,資源制約の無い化合物から形成されることが望ましい.従来主流の熱電変換材料のビスマステルル系の金属間化合物は,希少元素である上に,密度が大きく,熱電変換効率が最大となる温度が室温付近であるなど,産業や自動車などの廃熱利用には不向きであった.Mg2Siは資源が豊富な元素から成る熱電変換材料であり,軽量でその最適温度は300℃程度と,産業廃熱に適した性能を持つ一方,熱伝導率が高いため,変換効率が低いという課題があった.この熱伝導率を下げるため粒状のMg2Siを押し固めて加熱するなどして多孔体化することで断熱層を設ける試みでは,電気伝導率も低下するという問題があった.

 これまでに研究グループでは,プラスチックポリマーの溶液を塗布し,高湿度の条件で乾燥・製膜すると水滴を鋳型としてサブμm~数十μmサイズの空孔が規則正しく形成したハニカム膜が作製できることを見出し,またごく最近,ポリマーハニカム膜にガラス(SiO2)膜をコートする技術を開発した.今回研究グループでは,ガラスコートしたポリブタジエン(PB)ハニカム膜をMgと共にステンレスチューブ中に封入し,725℃のアニーリングでMg蒸気処理を行い,シリカコートPBハニカムをMg2Siハニカムに形状を保ったまま変換することに成功した.例えば,壁厚~1μmで3~4μmの孔のハニカムができた.

 得られたMg2Siハニカムは,多孔構造により6割以上の気孔率を持つため,無機材料でありながら水や有機溶媒に浮くほど軽く(密度0.8g/cm3),電気伝導率を保持したまま,1層のハニカム構造あたりの熱伝導率を11%低減できることが明らかとなった.シリカコートPBハニカム膜は積層可能が確認されており,Mg2Siハニカムについても積層が可能と考えられ,高効率で軽量な熱電変換素子の実現への道が造られた.今後デバイス化を進めることで,高効率で軽量な熱電変換素子による廃熱からのエネルギー変換を実現させ,低炭素社会実現への貢献が期待される.

(注)Hiroshi Yabu, Yasutaka Matsuo, Takahiro Yamada, Hirotaka Maeda, and Jun Matsui, "Highly Porous Magnesium Silicide Honeycombs Prepared by Magnesium Vapor Annealing of Silica-Coated Pol-ymer Honeycomb Films toward Ultralightweight Thermoelectric Materials", Chemistry of Materials, 2020, DOI: 10.1021/acs.chemmater.0c03696; Publication Date: November 25, 2020