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化学工業で重要なカルボニル化合物のアミノ化反応に革新 ~安全性・耐久性・高活性を兼ね備えるスマート触媒を開発~

 大阪大学は2021年4月9日,同大学大学院基礎工学研究科の満留 敬人 准教授らが,カルボニル化合物の還元的アミノ化反応に極めて高い活性を示すナノ触媒(リン化コバルトナノロッド)を開発した,と発表した.本研究は,独立行政法人日本学術振興会の科学研究費補助金(基盤研究(B)),文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業などからの支援を受けて行われ,成果は米国化学会のオープンアクセス誌JACS Auにオンライン掲載された(注).

 カルボニル化合物を還元してアミノ化する反応は,医薬品やポリマー原料などの製造に必要な化学工業における最も重要な反応のひとつである.還元的アミノ化反応の触媒にはパラジウム,白金などの貴金属触媒も知られているが,一般には,安価な,アルミニウムとニッケルの合金から,アルカリでアルミニウムだけを抽出して比表面積の大きいスポンジ状ニッケルとし,これを触媒とすることが行われている(ラネー触媒).しかし,この触媒は酸化され易く,大気中で不安定で発火の危険があり,また,反応条件も高温・高圧が必要であるため,安価,取り扱い容易で高活性な触媒の開発が求められていた.貴金属触媒に代わる活性な非貴金属触媒は,電子が豊富な低酸化状態(0価)にあり,この状態の金属は,大気中の酸素で容易に酸化されて活性を失うという問題がある.非貴金属触媒の開発には,大気中で安定なナノ粒子を作ることが大きな課題となる.非貴金属ナノ粒子を窒素を含む炭素膜でコーティングして大気中で安定化させることも報告されているが,金属表面の活性点が炭素で覆われるため高い触媒活性は得られない.満留准教授らは,かねてより,非貴金属をリン化する(P-alloying)と,大気中安定な非貴金属ナノ合金が得られることを報告してきた.本研究では,コバルトとリンの合金でロッド状ナノ合金(Co2P NR)をつくり,これが大気中で安定で,常圧の水素下でカルボニル化合物の1級アミン変換反応に高活性を示すことを見出した.このナノロッドは直径約10nm,長さ50~150nmの単結晶で,不飽和のCo-Coが活性点として作用する.Co2P NRを触媒とし,水溶液中でカルボニル化合物をアンモニアおよび水素と反応させると高い選択率で1級アミン化合物が得られる.水素の圧力は1気圧という低圧でも反応が進行し,条件によっては反応温度100℃でも収率が90%を越える.さらに,Co2P NRは固体触媒であり,反応液から濾過で分離回収して繰り返しの使用が可能である.

 本研究で開発された触媒は,発火性がなく安全で,かつ常圧という温和な条件でカルボニル化合物のアミノ化反応を効率よく促進させることができる.この“リン化技術”は,安定で高活性な非貴金属ナノ粒子触媒の作成手法として,今後さまざまな反応への応用が期待されるという.

(注)Min Sheng, Shu Fujita, Sho Yamaguchi, Jun Yamasaki, Kiyotaka Nakajima, Seiji Yamazoe, Tomoo Mizugaki, and Takato Mitsudome, "Single-Crystal Cobalt Phosphide Nano-Rod as A High-Performance Catalyst for Reductive Amination of Carbonyl Compounds", JACS Au, 2021, DOI: 10.1021/jacsau.1c00125; Publication Date: April 7, 2021