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イオン液体一滴でペロブスカイト太陽電池の高性能化と長寿命化に成功 ~単結晶ドメインを成長させ塗膜の欠陥を抑制~

 金沢大学は2021年4月28日,同大学ナノマテリアル研究所のシャヒドウザマン助教,當摩 哲也教授らの研究グループが,ペロブスカイト前駆体溶液にイオン液体を少量添加するだけで,ペロブスカイト太陽電池の高性能化と長寿命化に成功した,と発表した.本研究は科研費の助成を受け,成果は,桐蔭横浜大学,東海大学,国立研究開発法人 産業技術総合研究所,クイーンズ大学(カナダ)の研究者らとの連名で米国化学会の発行するACS Applied Materials & Interfaces誌に掲載された(注).

 ペロブスカイト太陽電池は塗布法で製造される安価で,フレキシブルな次世代太陽電池として期待されているが,一層の性能向上とともに,長期安定化(長寿命化)が実用化における大きな課題である.研究グループは,以前,ペロブスカイト前駆体溶液に少量のイオン液体を加えて塗布・成膜すると数十ナノメートルサイズのナノ粒子から成るペロブスカイト結晶膜に成長することを見出している.今回の成果は,これを高性能なトリプルカチオン型ペロブスカイト太陽電池の作成に応用したものである.

 本研究で,研究グループは,先ず,最も一般的なペロブスカイトのひとつであるMAPbI3(メチルアンモニウム-鉛-ヨウ素)の前駆体溶液にイオン液体を加えてナノ粒子膜を作成した.これと,性能良好な太陽電池用素材として知られている3種のカチオンからなるペロブスカイトCsFAMA(セシウム-フォルムアミジニウム-メチルアンモニウム)を組み合わせ,MAPbI3ナノ粒子膜にCsFAMAの前駆体を加える.MAPbI3ナノ粒子が核となりCsFAMAペロブスカイト結晶の成長を促し,大きな単結晶ドメインを持つ高品質で安定なペロブスカイト膜が得られる.この手法で作製した太陽電池の変換効率は19.44%に達した.一方,CsFAMAを加えずMAPbI3ナノ粒子膜だけで作った太陽電池の変換効率は9.52%,ナノ粒子の無いCsFAMA単独膜の太陽電池の変換効率は17.33%であった.CsFAMAにMAPbI3ナノ粒子を組み合わせることで太陽電池の変換効率が向上する.未封止状態の太陽電池に太陽光(1000W/m2)を2時間照射した後の変換効率は,初期値の90%を保持し,また,湿度30-40%の室温で6000時間放置した後の変換効率も初期値の80%を保持した.さらに,イオン液体を用いず従来の方法で作成したペロブスカイト太陽電池は変換効率が稼働時間と共に低下し2500時間で発電しなくなるが,イオン液体を加えることにより長寿命化することが確かめられた.イオン液体層が外部からの水の侵入を防いだため,長寿命化したと考えられるという.

 今後は,ペロブスカイト太陽電池の実用化,およびさらなる高性能化と低コスト化を目指していくと共に,イオン液体の効用拡大を期待している.

(注)Md Shahiduzzaman , LiangLe Wang , Shoko Fukaya, Ersan Y Muslih, Atsushi Kogo, Masahiro Nakano, Makoto Karakawa, Kohshin Takahashi, Koji Tomita , Jean-Michel Nunzi, Tsutomu Miyasaka, and Tetsuya Taima, "Ionic Liquid Assisted-MAPbI3 Nanoparticle-Seeded Growth for Efficient and Stable Perovskite Solar Cells", ACS Applied Materials & Interfaces, 2021, doi: 10.1021/acsami.1c00677; Publica-tion Date: April 29, 2021