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加工技術

「高出力深紫外ピコ秒レーザー加工装置」を開発 ~世界最高出力でガラスなどの高速微細加工を実現~

 三菱電機株式会社,大阪大学,スペクトロニクス株式会社は2021年6月22日,次世代のレーザー加工装置として,高速に微細加工できる「高出力深紫外ピコ秒レーザー加工装置」の試作機を共同で開発したと発表した.本開発の一部は,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」において実施され,本成果はOPIE'21(2021年6月30日~7月2日,於パシフィコ横浜)のNEDOブースで紹介された(注)

 電子機器の小型軽量化・高性能化に伴い,電子部品を高速に微細加工するレーザー加工装置へのニーズが高まっている.一方,高出力を得やすい近赤外レーザーは透明なガラスや樹脂に対して吸収されずに通過してしまうため加工が難しく,新たなレーザー加工装置の開発が求められている.今回,共同開発チームは,材料を分解する能力が高い266nmの深紫外レーザーを平均出力50Wで照射することで,近赤外レーザーでは加工が難しかったガラスなどの高速微細加工を実現した.深紫外レーザー加工装置では,まず赤外半導体レーザーの光を増幅,非線形光学結晶で周波数逓倍し,得られた深紫外光をビームサイズ調整,集束して加工対象物の微小スポットに照射する.開発した特徴技術は以下の3つである;

(1)世界最高 50W深紫外レーザー光源の実現,加工時間を1/10に短縮;
波長266nmの深紫外レーザーは,波長1064nm,出力100 W級の短パルス近赤外半導体レーザーからの光を増幅して300Wの高出力基本波とし,LBO結晶(LiB3O5)で532nmへ,さらにCLBO結晶(CsLiB6O10)で266nmへ波長変換して得た.大阪大学が内部欠陥の少ない世界最大級(重量1.5kg)の超大型CLBO結晶を開発したことにより,平均出力50Wの安定した深紫外レーザー光源を実現した.現在商用化されている5W深紫外レーザー加工装置と比べ,加工時間を1/10に短縮できる.

(2)低歪み反射型加工光学系を開発,直径4μmの精密加工が可能;
ビームサイズ調整は従来,レンズを用いた透過型光学系で行われていたが,光学系が深紫外レーザー光を吸収・発熱・変形して,ビームが歪む問題があった.そこで,非軸対称の2つのミラーを組み合わせた反射型光学系を三菱電機が開発し,レーザービームの歪みを透過型光学系の1/15に低減した.直径が最小4μmの微細穴をガラス基板に形成する精密加工が可能になった.

(3)ハイブリッドMOPA方式の基本波レーザー光源を開発,制御性に優れたピコ秒パルスを実現;
材料が瞬間的に加工され,熱の影響が小さく高品質な加工ができるようピコ秒パルスを用いる.その種光源として,超高速電流パルスによって直接半導体レーザーからピコ秒レーザーパルスを任意のタイミング(シングルショット~1.5GHz)で発生させるゲインスイッチパルス光源をスペクトロニクス社が開発した.種光源の光パルスを高出力基本波に増幅するには,ファイバー光増幅器とバルク光増幅器を組合せたハイブリッドMOPA(Master Oscillator Power Amplifier:主発振器出力増幅器構成)方式の基本波ピコ秒レーザー光源を三菱電機が開発し,制御性に優れたピコ秒パルスを実現した.

 今後は本試作機の早期実用化を通じて,スマートレーザー加工の実現を目指す,としている.

(注)OPIE'21 (OPTICS & PHOTONICS International Exhibition), レーザーEXPO No.F-41, スペクトロニクス(株)<NEDOブース>