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エネルギー変換効率15.1%を実現したフィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発 ~軽量で曲げることが可能で多様な場所に設置できる次世代太陽電池の実用化に向け前進~

 株式会社東芝は2021年9月10日,新たな成膜法を開発することにより世界最高のエネルギー変換効率 15.1%を実現したフィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発したと発表した. 今回開発したペロブスカイト太陽電池の技術およびそれを用いたモジュールは,国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) の「太陽光発電主力電源化推進技術開発」事業の成果であり,技術の詳細は2021年9月10日からオンラインで開催された第82回応用物理学会秋季学術講演会にて発表された(注).

 カーボンニュートラル社会の実現に向けて,再生可能エネルギーの導入拡大が世界的に進んでいる.日本でも,再生エネルギーを将来の主力電源と位置付け,2030年には発電量の約36%~38%,2050年には約50~60%を再生可能エネルギーとするグリーン成長戦略が政府から発表された.太陽光発電はカーボンニュートラルの実現に不可欠であり,発電効率の向上に加えて設置場所の大幅な拡大が必要となる.一方で,現在主流の結晶Si太陽電池では,重量および形態の面から設置場所が限られ,多様な場所に設置可能でかつ結晶Si並みの変換効率を持つ太陽電池の開発が求められている.これらの要素を満たす次世代の太陽電池として,フィルム型ペロブスカイト太陽電池が注目されている.

 東芝ではこれまで,独自のメニスカス塗布印刷技術により,世界最大サイズである703cm2でエネルギー変換効率14.1%のフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールを開発してきた.メニスカス塗布法は,界面張力により塗布に用いる棒と基板との隙間に注入された塗布液の表面が作る曲面を利用した塗布技術である.従来採用してきたペロブスカイト層の成膜法は,2ステッププロセスと呼ばれる手法で,基板上に塗布したヨウ化鉛(PbI2)膜の上から,ヨウ化メチルアンモニウム(MAI;CH3NH3I)インクを塗布することでMAPbI3膜(MAIとPbI2の混合により生成された有機無機ハイブリッド型ペロブスカイト材料)を成膜する.この手法では,PbI2とMAIの反応を制御することが難しく未反応物が残ること,工程数が多いこと,塗布速度が低速であることから,より量産に適した手法が求められていた.

 今回,フィルム型ペロブスカイト太陽電池のエネルギー変換効率向上と低コスト化への貢献が見込める新たなペロブスカイト層の成膜法として,MAPbI3結晶の成長を制御することができる1ステッププロセスのメニスカス塗布法(1ステップメニスカス塗布法)を開発した.新たに,MAPbI3インク,塗布・乾燥プロセス,装置の開発を行い,大面積を均一に塗布することに成功した.成膜プロセスの工程が従来の半分となり,さらに,塗布速度の高速化が可能になる.塗布速度においては,5cm角で量産時に必要と想定するスペックを満たす速度6m/分を達成した.また,均一に塗布することで,フィルム型ペロブスカイト太陽電池としては,世界最大面積である703cm2のモジュールで世界最高エネルギー変換効率15.1%を達成した.本開発の太陽電池を,東京都23区内の建物の屋上に設置した場合,原子力発電所2基分の発電が見込める.

 今後は,実用化サイズとして想定される受光部サイズ900cm2を目指して更なる大面積化を進めるとともに,ペロブスカイト層の材料改良等でエネルギー変換効率20%以上,フィルム型ペロブスカイト太陽電池において製造コスト15円/Wを実現していく,としている.

(注)志茂 俊輔,森 茂彦,大岡 春日,天野 昌朗,都鳥 顕司,"高速大量生産に適したメニスカス塗布法による大面積フィルム型ペロブスカイトモジュールの開発",第82回応用物理学会秋季学術講演会,セッション12.5有機太陽電池,講演番号12a-N322-3(2021年9月12日)