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ペロブスカイト太陽電池の欠陥に迫る

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)は2021年12月10日,同大学のケシャヴ・ダニ准教授が率いるフェムト秒分光法ユニットと,ケンブリッジ大学のサム・ストランクス博士率いるOptoelectronics Ma-terials and Device Spectroscopy Groupの研究チームが,最先端のペロブスカイト薄膜内に3種類の欠陥クラスターを特定したことをEnergy & Environmental Science誌に発表した(注),とのリリースを行った.このニュースは英文でもリリースされ,海外のニュースサイト"Explore"も紹介した.本研究は,独立行政法人 日本学術振興会の科学研究費助成,欧州共同体(EU)のHorizon 2020等の支援を受けて行われた.

 2050年カーボンニュートラルの実現に向け,再生可能エネルギーの主力電源化のため,太陽電池の活用の期待が高まっている.1970年代の石油危機以来,太陽電池の開発が推進され,太陽電池エネルギーの活用が進んでいるが,太陽電池の変換効率は20%を超えたあたりで頭打ちとなっている.変換効率の高い材料を探す中で,有機材料と無機材料の両方の利点を兼ね備えたハイブリッドペロブスカイトが,次世代太陽電池の材料として期待されるようになった.しかしながら,約30%の理論上の変換効率に対し,実現されている変換効率は20%から25%程度に止まる.ペロフスカイト太陽電池の変換効率阻害要因解明が求められていた.

 太陽光のエネルギーがペロブスカイトに吸収されると,電子・正孔対が生成し,電子が上層に,正孔は逆方向に移動して電流が発生する.ペロブスカイト中に欠陥があると,電子,正孔は欠陥で再結合・消滅し,変換効率が下がる.そこで研究チームは,発光分光とシンクロトロンX線顕微鏡で欠陥を調べた.

 化学組成(FA0.78MA0.17Cs0.05)Pb(I0.83Br0.17)3(FA:フォルムアミド,MA:メチルアミド)のペロフスカイトを前駆体・原材料を基板にスピンコーテイングして作製し,光電子分光測定を行うと,5.7eV,10.4eV,4.8eVの3つのピークが見られ,3種の欠陥の存在が分かった.励起プローブ光を走査し,試料からの光電子発光を画像化して,欠陥の位置形状を求め,その場所でX線構造解析を行なって欠陥の同定を行なった.各欠陥の光電子発光の励起後の減衰時間を測定すると,その欠陥の変換効率阻害効果の大きさが分かる.この結果,3種の欠陥の第一は,ペロブスカイトの結晶粒の境界に存在 する微小な欠陥(結晶粒界の欠陥,5.7eVの発光)で,最も有害な欠陥であることが分かった.次に,前駆体材料が結晶化する際に典型的な立方晶の構造が六方晶になることによって発生すポリタイプ(結晶多形,10.4eV)のあることが分かり,結晶粒界に次いで短い減衰時間を示した.最後は,ペロブスカイト作製に用いられたヨウ化鉛(PbI2)の析出で,減衰時間が長く,効率への影響はほとんどない.さらに,光の存在下での酸素処理という欠陥の不活化を試みたが,結晶粒界の欠陥には効果が現れたのに対し, 他の欠陥には有効でなかった.

 ペロブスカイト太陽電池の変換効率向上には効率阻害要因となる欠陥に応じた対策を要するとしている.

(注)Sofiia Kosar, Andrew J. Winchester, Tiarnan A. S. Doherty, Stuart Macpherson, Christopher E. Petoukhoff, Kyle Frohna, Miguel Anaya, Nicholas S. Chan, Julien Mad?o, Michael K. L. Man, Samuel D. Stranks, and Keshav M. Dani "Unraveling the varied nature and roles of defects in hybrid halide perov-skites with time-resolved photoemission electron microscopy", Energy & Environmental Science, 2021, Vol. 14, No. 6, pp. 320-6328, DOI: 10.1039/d1ee02055b; First published 15 Sep 2021