ナノテクノロジー研究の歴史を振り返ってみます。

年号 / トピックス 内容
1959 ファインマン教授の講演
「There's Plenty of Room at the Bottom」
リチャード・ファインマン教授がカリフォルニア工科大学でのアメリカ物理学会で「There's Plenty of Room at the Bottom」という講演を行いました。
「ナノスケール領域にはまだたくさんの興味深いことがある」と題されたこの講演の主題は、原子数個というナノスケール領域では、マクロな世界とは全く違う性質が現れるだろうということです。
彼はその研究を行うことは、人類にとって大変重要なことだと主張しています。
そして、将来は原子を1つずつ配置して思い通りの物質を作れるようになるだろう、と予言しています。
これがナノテクノロジーの始まりと考えられています。
1962 久保効果の提唱 久保亮五教授が金属もナノサイズの微粒子になるとエネルギーギャップが生じるので、その性質は、エネルギー準位統計で決まるという考え方を導入しました。
1966 10nm級の超薄膜における量子閉じこめ効果の発見  
1969 超格子の提案 江崎玲於奈博士による超格子の提案がなされました。
これはボトムアップでナノサイズの人工物質を作る試みです。
1974 「ナノテクノロジー」の概念を提唱 谷口紀男教授が国際生産技術会議において初めて「ナノテクノロジー」という言葉を用い、その概念を提唱しました。
精密加工の精度が2000年には1nmの程度になると予測し、そのための総合生産技術が必要になると予測しました。
1975 量子細線・量子ドットの提唱  
1980 HEMTの開発 HEMT(高電子移動度トランジスタ)が開発されました。衛星放送などで使われる高速電子デバイスとして実用化されています。
1981 STMの発明 STM ゲラルド・ビニッヒ博士とハインリッヒ・ローラー博士によりSTM(走査トンネル顕微鏡)が発明されました。
STMでは探針を試料表面に近づけ、トンネル電流を測ることにより、表面の原子一つ一つを観測します。これにより、ナノの世界をはっきりと見ることができるようになりました。この2人はこの発見により1986年にノーベル物理学賞を受賞しました。
( 画像提供: IBM Zurich Research Laboratory
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1984 フラーレンの発見
フラーレン(C60)
ハロルド・クロトー教授、リチャード・スモーリー教授、ロバート・カール教授がフラーレンを発見しました。
これは炭素60個からなるサッカーボール状の球形構造を持つ分子です。彼らは1996年にノーベル化学賞を受賞しました。

( 画像提供: 名古屋大学大学院 工学研究科 量子工学専攻 齋藤研究室 )
1986 AFMの発明 AFM ゲラルド・ビニッヒ博士によりAFM(原子間力顕微鏡)が発明されました。
原子間力を利用するため、導体以外のものも観察することができるようになりました。

( 画像提供: 物質・材料研究機構 若手国際研究拠点(ICYS) )
1986 エリック・ドレクスラー教授の
『Engine of Creations』
エリック・ドレクスラー教授が著書『Engine of Creations (創造する機械)』を発行しました。
その中で分子ナノテクノロジーを提案し、原子レベルから望みの物質を合成するナノサイズのロボットを想定しました。
1989 STMによる原子操作 ドン・アイブラー博士がSTMでの原子操作に成功しました。
35個の原子を並べてIBMの文字を作りました。
1991 エリック・ドレクスラー教授の
『Nanosystems』
エリック・ドレクスラー教授が著書『Nanosystems』を発行しました。
前著より具体的な議論に進み、分子ナノテクノロジーという分野を確立しました。
1991 カーボンナノチューブの発見
カーボンナノチューブ
飯島澄男博士がカーボンナノチューブを発見しました。
グラファイトのシートをまるめた直径数ナノメートルの筒状物質で、そのまるめ方により半導体や金属になります。


( 画像提供: 名古屋大学大学院 工学研究科 量子工学専攻 齋藤研究室 )
2000 米国においてNNIを策定 米国はナノテクノロジー国家戦略、ナショナル・ナノテクノロジー・イニシアティブ(NNI)を発表し、産学官連携で「ナノテクノロジー」を国家の戦略的研究分野に定めました。
2000 経済団体連合会・産業技術委員会のもとにナノテクノロジー専門部会を設置  
2001 経済団体連合会が「ナノテクが創る未来社会 n-Plan21」を策定  
2001 第二期科学技術基本計画策定
(ナノテクノロジー・材料分野を重点分野の一つに指定)
 
2002 文部科学省 ナノテクノロジー総合支援プロジェクト  
2007 文部科学省「先端研究施設共用イノベーション創出事業 ナノテクノロジーネットワークプログラム」  
2012 文部科学省 ナノテクノロジープラットフォーム