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グラフェンがテフロンに大変身〜Graphene gets a Teflon makeover〜

 英国のマンチェスター大学(University of Manchester)は2010年11月8日に今年のノーベル物理学賞受賞者のAndre Geim教授らの研究グループが,世界で最も薄い材料のグラフェンをテフロンに似た化学的性質を持つ1分子層厚のフルオログラフェン(Fluorographene)に変えることに成功したとのニュースリリースを行った.詳細は11月4日に「Small」誌オンライン版に掲載され(注),日経産業新聞は11月10日に「極薄炭素の表面にフッ素」と題して海外ハイテクフラッシュ欄で報じた.

 グラフェンは6年前に行われた同大学の画期的な研究以来,超高速トランジスタ,毒ガス1分子を検出するセンサ,航空機の構造材など幅広い応用が期待されて来た.今回,Geim教授らはグラフェンという巨大分子を化学的に変えてみようと考えた.一方,テフロンは完全にフッ素化された長い炭素の鎖であり,焦げない鍋などに広く利用されている.そこで,グラフェンの結晶をフッ素原子でフッ素化することによりフルオログラフェンを作った.大量に作るにはグラフェンの粉をフッ素化すれば良く,フルオログラフェンの紙を作っている.工業的量産に問題はないという.

 フルオログラフェンは各炭素原子にフッ素原子が結合した化学量論的なグラフェンの誘導体で,非化学量論的誘導体とは異なる性質を示す.電気的には抵抗率1012Ω以上の絶縁体で,光学的エネルギーギャップはギャップのない半金属のグラフェンに対し3eVに広がリ,可視光に対し透明になる .機械的強度はグラフェンの性質を受け継ぎ,100N/mのヤング率を持ち,15%の歪みに耐える.テフロン同様,化学的には不活性で,空気中で400℃に加熱しても安定である.

 Geim教授は応用を考える前に電子的性質を改良する必要があるという.筆頭著者のRahul Nairは「テフロンに似ているがプラスチックではなく,1分子厚の結晶だ.LEDやダイオードのトンネル障壁に使おうと思っている.日常的な用途ではテフロンの代替になり,極薄保護膜,複合材のフィラーなどに使える.グラフェンの強度は保たれ,電気は通さず,透明といった特徴がある.」と語る.彼等は実証デバイスを作るのが次のステップと考えている.Geim教授は「テフロンの置き換えを考えるのは無駄だ.グラフェンとテフロンの性質を混ぜ合わせた信じられない性質を活用するよう夢を膨らまそう.」と語っている.

(注)Rahul R. Nair, Wencai Ren, Rashid Jalil, Ibtsam Riaz, Vasyl G. Kravets, Liam Britnell, Peter Blake, Fredrik Schedin, Alexander S. Mayorov, Shengjun Yuan, Mikhail I. Katsnelson, Hui-Ming Cheng, Wlodek Strupinski, Lyubov G. Bulusheva, Alexander V. Okotrub, Irina V. Grigorieva, Alexander N. Grigorenko, Kostya S. Novoselov, Andre K. Geim, "Fluorographene: A Two-Dimensional Counterpart of Teflon", Small, Early View (Articles online in advance of print) Article first published online: 4 NOV 2010, DOI: 10.1002/smll.201001555