【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.16】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24AE0022
利用課題名 / Title
高温XAFSによるMOX使用済燃料由来高レベル放射性廃棄物固化用新開発マトリックスの冷却条件および加熱保持に対する熱安定性の評価と計算予測の検証
利用した実施機関 / Support Institute
日本原子力研究開発機構 / JAEA
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
放射性廃棄物固化ガラス,高レベル放射性元素,高温XAFS,充填性能,熱安定性
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
矢野 哲司
所属名 / Affiliation
東京科学大学 物質理工学院
共同利用者氏名 / Names of Collaborators Excluding Supporters in the Hub and Spoke Institutes
加藤駿,細川恵生,畠山直也,石橋一輝,池谷柚紀子,榎枝竜之介,細葉藤和,宮部大亮
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Supporters in the Hub and Spoke Institutes
松村大樹
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
原子力発電による電力供給の継続に伴って蓄積されている使用済燃料を再処理することで再利用可能な燃料元素U, Puを抽出し新たな燃料「MOX(Mixed
oxides)燃料」として使用する計画にある。今後,MOX使用済燃料と呼ばれる異なる使用済燃料が生じ,これらから生じる高レベル放射性廃棄物も処分対象となる。申請者は,資源エネルギー庁のプロジェクトのもとにMOX使用済燃料由来の高レベル放射性廃棄物固化と処分に対し,処分場面積を最小化するのに必要な充填率のさらに1.5倍まで充填猶予のあるボロシリケートガラスの探索と開発を進め,その候補ガラス組成を複数種得た。本研究は,開発した新規ボロシリケートガラスマトリックスが「処分までの実プロセスで受ける熱履歴」に対して安定性が確保できるのかどうかを検証するためのものであり,「溶融炉からキャニスターへの流下によって冷却させるに至るまで」と「崩壊熱によって被るガラス転移温度Tg近傍で加熱保持されるまで(処分までの冷却期間)」に対する熱安定性を評価し,優れた組成を絞り込むことを目的として行う。
今後半世紀以上の中長期にわたるMOX使用済燃料についての課題は,日本だけでなく世界的にも初めての取り組みであり,原子力発電方式の変更に伴って,新たなガラスマトリックスの開発が継続的に求められることが想定され,その開発には実験的手法だけではなく,データベースと学習による計算による予測の併用が必須である。高温保持の放射性元素の化学状態変化のデータは乏しく,計算(経験的/非経験的分子動力学法が有力)の信頼性を高める元となるデータを収集できればそれらを解決できる扉を開けることが可能となる。本研究のデータは,「計算機科学の手法と結びつけるためのもの」である。
実験 / Experimental
試料には,安定同位体からなる模擬放射性廃棄物を充填させたMOX廃液固化用に新たに開発したガラス3種(Zr, Moを含む),Niを含むアルミノシリケート等である。測定は全ての試料について透過法を用い,標準物質測定によってエネルギー校正を行った後,室温測定のみの試料ガラスについては板状試料を,高温測定用試料ガラスについては,内径2mmΦの白金リングに嵌め込んだ試料を用いた。高温測定には専用に開発した小型電気炉を光学系上に設置し,通電状態を確認した後,室温,各ガラスのガラス転移温度,所定の温度という順に測定を進めた。測定元素はNi, Zr, Moの各K端であり,EXAFS領域まで測定した。高温加熱中の試料からの成分揮発を抑制するために,電気炉内部は乾燥雰囲気に保持した。
結果と考察 / Results and Discussion
図1に,MOX廃液充填用に開発したガラス3種(STDBF,BF, STDBF+BF)のうち,STDBFのMo K端EXAFSのk空間のEXAFS振動結果を例として示す。データは,室温から950℃の温度範囲においてもk~9Å-1の領域まで高いS/N比の質の高いデータが得られ,他のガラスにおいても同様の結果となった。図2にR空間にフーリエ変換した動径関数を示す。ガラス転移温度以上の温度に6時間以上保持しても,第一近接元素のMo-Oピークよりも長いRの領域にMo-Mo相関を示すピークの生成は見られず,Mo酸塩の凝集傾向は検出されなかった。このことは,開発された廃棄物充填性能の大きい新規のガラスマトリックスは,一度ガラスの中に溶解した後,ガラス固化体を閉じ込めるステンレスキャニスターへ流し込む際に受ける比較的ゆっくりとした冷却過程においてもその析出を十分に抑制できる性能を有していることがわかる。測定された室温,高温融液のNi, MoおよびZr等の廃棄物成分のXAFSデータは,ガラス固化体用ガラスおよび融液の中に安定して溶解している化学状態を示す実験ライブラリデータとして登録し,計算機科学的手法による溶解状態シミュレーションの参照実験データとして利用する予定である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1:MOX由来模擬放射性廃棄物充填STDBFガラス中のMo-K端EXAFS振動の温度依存性
図2:MOX由来模擬放射性廃棄物充填STDBFガラス中のMo-K端動径分布関数の温度依存性
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
なし。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件