【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.19】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24MS1081
利用課題名 / Title
種々の形態を有する遷移金属ドープ酸化チタンの形態観察
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
酸化チタン, ナノワイヤー, ナノ粒子, 異種金属ドープ,電子顕微鏡/ Electronic microscope
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
才田 隆広
所属名 / Affiliation
名城大学理工学部 応用化学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators Excluding Supporters in the Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Supporters in the Hub and Spoke Institutes
伊木 志成子,平野 佳穂
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
固体高分子形燃料電池用の広範な市販化を実現するには,電極触媒の製造コストの低減および触媒耐久性の大幅な向上が望まれている.しかし,貴金属を使用する既存の白金合金系触媒では,低コスト化に限界がある.また,合金ナノ粒子では,負荷変動や起動停止時に起こる電位変動による溶解・再析出も避けることが難しい.このため,安価かつ耐久性に優れた非白金系酸化物触媒が,白金系触媒の代替材料の候補の1つとして挙がっている.これまでの報告から,第4族および第5族元素の酸化物が,酸素欠損サイトを導入することで,高い触媒活性と安定性を示すことが知られている.しかし,その触媒活性は,一般的な白金触媒に及ばない.非白金系酸化物触媒の触媒活性を向上させるには,触媒活性点を増加させること,作動温度を上昇させる必要がある.
これまでに酸化チタン系触媒における反応サイトの特定を行ってきた.その結果,酸化チタン表面の低配位数の金属原子が活性点であり,活性発現にはその電子構造を変化させる必要があることを見出している.しかし,酸化チタンナノ粒子の粒子サイズ関する検討が不十分であり,粒子サイズ効果や結晶性に関する議論が不十分である.したがって,合成した酸化チタンの粒子サイズを出来る限り正確に観察する必要がある.そこで,本研究では,異種金属をドープした酸化チタンの粒子サイズやナノ粒子の結晶性と触媒活性の関係を明らかにすることを目的とする.加えて,形態の異なる触媒担体(活性炭とカーボンナノファイバー)との複合化により,触媒である酸化物の形態を制御し,活性点密度と触媒利用率を向上させた新規酸化チタン系触媒の観察も併せて行った.
TEM観察の結果から,合成した酸化チタンナノ粒子は,3次元的な粒子というよりも2次元的なシートに近い厚さが薄い粒子であった.XRDなどから明確な結晶構造を確認することが出来なかったが,TEMでは明らかな格子像が確認された.このため,合成した酸化チタンナノ粒子は,全て結晶性を有していることを確認した.二次処理前の全ての酸化チタンにおける粒子径は,凡そ10 nmの大きさであり顕著な変化が観察されなかった.ただし,恐らく粒子の厚みが非常に薄いために格子像が確認されるが,粒子の外形を確認することが困難であった. 本研究にて,これまで結晶性を確認することが出来なかった酸化チタンナノ粒子の結晶性と凡その形態を確認することが出来た.その結果,触媒活性がナノ粒子の結晶性や形態から受ける影響が小さいことを見出した.
実験 / Experimental
本研究では,組成比が凡そTi:dopant = 99:1の異種金属ドープ酸化チタンナノ粒子を合成している.このとき,dopant種として,各種遷移金属元素を用いた.合成した異種金属ドープ酸化チタンナノ触媒は,炭素担体(carbon nanofiberもしくは活性炭)に担持している.その担持率は,担体種(活性炭もしくはカーボンナノファイバー)により異なるが,異種金属をドープした酸化チタンナノ粒子が活性炭に対して,重量比で10~20 wt%の範囲に収まる.
合成した各種酸化チタン担持触媒を超純水およびエタノールの混合溶媒中に分散させ,その分散溶液中にTEMグリッドをくぐらすことで,TEMグリッド上に各種触媒を載せた.また,事前にTEMグリッド上におけるサンプルの分散状況をFE-SEMにより確認したうえで,TEM観察を実施した.TEM観察は,主に100,000倍,200,000倍および500,000倍の倍率にて実施した.加えて観察領域は,少しでも恣意性を減らすためにランダムに4もしくは5箇所の観察領域を選び観察を行った.
結果と考察 / Results and Discussion
合成した異種金属ドープ酸化チタンナノ触媒に対して,XPSを用いた電子状態変化および表面組成,XRFによる組成分析,X線回折による結晶構造評価の結果から,合成した異種金属ドープ酸化チタンナノ触媒の粒子サイズが2 nm付近であることが予想されていた.TEM観察を行うと,二次処理を行う前の各種酸化チタンは,粒子の輪郭が不明確であり,僅かにコントラストが異なる程度であった.しかし,そのコントラストが僅かに異なる部分に明確な格子像が確認された.この格子像は,担体に用いた炭素材料の格子像と異なっていたため,合成した酸化チタンに基く格子像であると判断した.この格子像のサイズは10 nmの大きさであり,他の実験データから予想していた粒子サイズの5倍程度であった.仮に合成した酸化チタンが,酸化チタンでは一般的なアナターゼ構造を有する単純な3次元的な粒子であると仮定すると,粒子径が10 nm程度であれば加速電圧が200 kVのTEMを用いると明確に粒子の形態が観察されるはずである.しかし,実際には明確な格子像が観察される一方で,粒子の形態を観察することが非常に困難であった.このため,合成した酸化チタン粒子の厚みは非常に薄く,3次元的な粒子ではなく,2次元的な粒子であると考えた.先に述べたXPSやXRF,XRDなどの測定は構成原子の数に敏感であるため,得られた結果を球状の酸化チタンに当て嵌めた場合に2 nm程度の粒子径となると予想していた.構成元素数が同じであっても粒子の高さが低くなると,2次元的な広がりを持つ粒子となる.このため,合成した酸化チタンは,凡そ10 nmの2次元的な広がりを有する薄い粒子であると結論付けた.ただし,各種酸化チタンが示す触媒活性の傾向と,本研究にて観察された粒子サイズに相関性を確認することが出来なかった.今後は,ドーパントの種類と格子間隔の関係について詳細に検討を行う予定である.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件