利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.02】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24MS1105

利用課題名 / Title

電子スピン共鳴法による有機半導体単結晶二次元正孔ガスのスピン状態の研究

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

有機トランジスタ,スピン制御/ Spin control


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

今城 周作

所属名 / Affiliation

東京大学物性研究所 国際超強磁場科学研究施設

共同利用者氏名 / Names of Collaborators Excluding Supporters in the Hub and Spoke Institutes

古川 友貴,松木 雅明

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Supporters in the Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-215:電子スピン共鳴(EMX)
MS-217:電子スピン共鳴(E580)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

申請者はイオン液体と有機半導体単結晶を用いた電気二重層トランジスタ(EDLT)で実現する理想的な二次元正孔ガスの電子状態を研究しており、当共同研究ではその電子状態が示す磁気的性質の詳細を電子スピン共鳴法によって理解することを目的とした。この研究では、有機半導体C10-DNBDT-NWの二層単結晶を用いたEDLTを作成し、分子科学研究所の機器センター所有のX-band ESRによってゲート電圧を印加しながらオペランド測定で5 K-200 Kにおける電子スピン共鳴の結果を得た。EDLTによって高密度キャリア注入された有機半導体は縮退した非局在的な電子を有するため、過去に報告があった通常のFETによる有機トランジスタとは異なる磁気的性質を示した。

実験 / Experimental

ブレードコーティング法によって基板上に有機半導体C10-DNBDT-NWの2層薄膜を作成し、ソース・ドレイン・ゲート電極を作成してイオン液体を塗布したデバイスを用意し、ヘリウム雰囲気下でφ5mmの石英管に封入した。それぞれの電極からは電気配線3本を石英管上部から出し、電場印加できるようにした。このデバイスを2つ用意し、分子科学研究所機器センター所有のX-band電子スピン共鳴装置EMX, E580の2台を用いて測定を行った。240 Kに冷却後、さらに低温に徐冷しながらゲート電圧を-3.0~-3.4 V印加し、キャリア注入を行った。試料の劣化を防ぐため、測定はヘリウムフロー下で5 K-200 Kの温度範囲で連続波ESRによるマイクロ波の吸収スペクトルを得た。また、スピンー格子緩和時間に関する情報を得るために、各温度でマイクロ波のパワー依存性を測定した。

結果と考察 / Results and Discussion

EMX, E580のどちらの試料もg値2.011付近でEDLTの電子スピンに由来した吸収信号を得ることができた。低温に向かって信号強度は増大したため、磁化率は低温に向かって上昇することがわかった。この振舞いは縮退電子系で期待される温度依存性のないパウリ常磁性とは異なるが、一方で磁化率上昇の大きさの点で局在電子系のキュリー的な振舞いとも異なり、非自明なスピン状態が現れている可能性がある。また、線幅は200 Kから100 Kまで減少し、100 K以下では温度にほとんど依存しなかった。これはスピンースピン緩和時間T2は低温で飽和していることを意味しており、核スピンとの超微細結合による散乱が存在しないことを示唆し、電子は局在化していないことがわかった。パワー依存性から得られたスピンー格子緩和時間T1はスピン磁化率と同様の温度依存性の温度依存性を示しており、電子系の状態密度を反映した散乱がT1を支配している可能性を示唆した結果が得られた。これはフェルミエネルギーに状態密度が存在することを意味しており、縮退電子系であることがわかった。先行研究の有機FETのESR実験の報告ではキャリア数が低かったため電子系は非縮退系として振る舞っていたが、本研究では初めて有機トランジスタの電子スピンがEDLTによる高密度キャリア注入によって縮退電子系を実現することを示した。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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