利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.25】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24MS3002

利用課題名 / Title

植物の細胞成長を評価するマイクロ流体デバイスの作製

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

植物,生細胞イメージング,成長計測,リソグラフィ/ Lithography


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

四方 明格

所属名 / Affiliation

基礎生物学研究所植物環境応答研究部門

共同利用者氏名 / Names of Collaborators Excluding Supporters in the Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Supporters in the Hub and Spoke Institutes

高田 紀子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-101:マスクレス露光装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

植物の根は、土壌からの水分や養分の吸収を担うと同時に、地上部を物理的に支える器官として働く。根の成長や生理応答を調べる場合、観察が容易な寒天培地や液体培地等の均質な環境で植物を育てることが多い。一方で根が本来成長する場である土壌は、様々な大きさの鉱物や有機物から成る粒子群と、それらの表面や内部に水分や水溶性の栄養分や気体成分が混在する不均一な環境である。このように培地と土壌ではその性質が大きく異なり、両者では根の形態に相違が見られる。しかしながら、土は不透明でありその内部を直接観察する事が困難である。近年、マイクロ流体デバイスを用いて、根の成長や様々な応答を解析する手法が展開されつつある。
申請者はこれまで、植物の根、特にその表面から発生する根毛という微細な細胞群に着目して研究を行なってきた。その解析にマイクロ流体デバイスを利用している。根毛は直径10 µm程度で長さ1000 µm程に成長する細胞であり、その役割は土壌中に存在する様々な粒子と接触し、そこから水分や栄養分を吸収することである。マイクロ流体デバイス内に土壌粒子を模倣した障害物を設置することで、それに対する根毛の衝突を顕微観察することが可能になる。

実験 / Experimental

ガラス基板上にマイクロ流体デバイスの鋳型の試作を行った。作製するマイクロ流体デバイスは以下の2つの機能を有する必要があり、また実験目的に合わせたデザインの最適化が必要である。1)根毛と土壌粒子との接触を再現するため、マイクロ流体デバイス内に任意の形状をもつオブジェクトが設置されること。2)植物の根を成長させることができること。これら2つの特徴を備えるため、マイクロ流体デバイスは2層に分かれた構成をとる必要がある。根毛の直径が10 µm程度であることから、根毛の成長空間として厚さを10 µm以下にした1層目、また根の直径が150 µm程度であるため根の成長空間として200 µm程度の厚さを持った2層目から構成される。1層目を光造形し、アライメント後に2層目の光造形を行うことにより、2つの層が接続されたデバイスを構築した。

結果と考察 / Results and Discussion

2層目の形成にこれまでSU-3050を使用してきたが、200 µm程度の厚さを形成するためには、スピンコート・プレベークを2回に分けて行う必要があり、数時間を要する作業となる。そこで今回は、200 µm厚を1回で形成することのできるSU-8 2150を初めて使用して光造形を行った。しかしながら、その結果2つの問題が生じた。1点目は、造形物の周りにボケて裾が広がったような、現像で除去できない領域が形成されてしまったこと(図参照)、2点目は造形物の基板からの剥がれである。2点目は長時間現像を行ったことによるものであると考えられるため、1点目の原因究明が喫緊の課題である。考えられる原因として、露光時のZ軸オフセット設定が適当ではなかったことが考えられる。通常ガラス基板を用いた場合、オフセットを造形物の高さの半分程度(+値)に設定するが、裾が形成されたことを考慮すると、オフセット値が大きすぎた可能性が推察される。今後は、オフセット設定を主として最適な条件の探索を検討したい。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図.作成した光造形物. 造形物の周囲に現像で除去しきれなかったSU-8 2150が全体的に付着している.柔らかいが現像液へ長時間浸潤させても溶解しなかったことから,部分的に重合反応が起こったものと推察される.焦点位置の設定を中心に、条件検討が必要であると考える.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

謝辞
本研究は、科学研究費助成事業学術変革領域研究A「ジオラマ行動力学」の支援を受けて行われました。また、分子科学研究所装置開発室の高田紀子様に感謝いたします。

受賞
第13回自然科学研究機構若手研究者賞、四方明格、基礎生物学研究所、2024年7月(国内)。
受賞理由:受賞者が行ってきた植物の細胞極性研究に関する成果が評価された。評価対象となった研究には本委託事業でも作製されているマイクロ流体デバイス等が利用されている。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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