【公開日:2025.07.15】【最終更新日:2025.07.15】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22SH0016
利用課題名 / Title
全固体リチウムイオン二次電池の開発
利用した実施機関 / Support Institute
信州大学 / Shinshu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
電子顕微鏡/Electron microscopy,電子分光,二次電池
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
清水 千映子
所属名 / Affiliation
TDK株式会社 技術・知財本部応用製品開発センター
共同利用者氏名 / Names of Collaborators Excluding Supporters in the Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Supporters in the Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
固体電解質材料を用いた全固体リチウムイオン二次電池の開発を進めている。オージェ電子顕微鏡では、SEMと同等の空間分解能でリチウムの分析が可能であることから、EDSやEPMA分析では得られなかったリチウムに関する新たな知見が得られることが期待できる。しかしながら、固体電解質材料は大気や電子線に非常に弱いため、大気非暴露搬送や電子線ダメージを低減する条件検討が重要となる。そのため、主な分析対象である固体電解質材料の試料固定と大気非暴露搬送方法を習得し、分析条件の検討を行った。条件確立後は、活物質と固体電解質のスペクトル分析により、リチウム周辺の化学状態を解析した。さらに、スペクトル分析結果をもとにLiマップ像を取得し、Liの分布状態を解析した。
実験 / Experimental
正極活物質(LiCoO2 )/固体電解質(開発品)/導電助剤を混合した粉体を、油圧プレスでペレット形状に圧粉成形した。これにより得られたペレットを、イオンミリング装置(日立ハイテクフィールディング製)により断面ミリング加工し、平滑な断面を得たのち、グローブボックス内でオージェ分析用大気非暴露ホルダーに固定させ観察試料とした。搬送用の大気非暴露ベッセルを使用することで、試料を大気に触れさせることなくオージェ電子顕微鏡本体へ搬送した。同様の方法で、負極活物質(Li4Ti5O12 )/固体電解質(開発品)/導電助剤試料も作製し、解析を行った。分析条件は、加速電圧:5keV, 照射電流量:2.0~3.0×10-9Aで行った。
結果と考察 / Results and Discussion
正極活物質(LiCoO2)の点分析スペクトル結果をFig.1-1、微分スペクトルをFig.1-2に示す。35eV~50eV付近 の領域に小山状のスペクトルが確認できた。これは構成元素であるLi(36eV)とCo(50eV) が重なっているものと思われる。負極活物質(Li4Ti5O12) の点分析スペクトル結果をFig.2-1、微分スペクトルをFig.2-2に示す。37eV付近にピークが確認できた。これは構成元素であるLi(36eV)とTi(39eV)が重なっているものと思われる。固体電解質(開発品) の点 分析スペクトル結果をFig.3-1およびFig.3-2に示す。構成元素であるZrのピークはほとんど検出できなかったが、その他の構成元素であるLi,O,Clのピークが得られた。Liのス ペクトル形状は、正極活物質(LiCoO2)や負極活物質(Li4Ti5O12)の形状とは異なっている。Li周囲の化学結合状態の違いによるものと考えている。Fig. 4-1に固体電解質(開発品) のSEM像を示す。Fig.4-1で“黒点”と表記したポイントは、 周囲よりも黒くみえる。黒点と黒点以外のポイントでスペクトル分析を行い、スペクト ル形状を比較した結果、黒点では、Liの化学結合に由来すると考えらえるスペクトル強 度比が、黒点以外のポイントに比べて強い傾向がみられた(Fig.4-2)。Fig.5に正極活物質(LiCoO2)/固体電解質(開発品)/導電助剤試料のマッピング分析結果を示す。Fig.6に負極活物質( Li4Ti5O12)/固体電解質(開発品)/導電助剤試料のマッピング分析結果を示す。Liのマップ像をみる と、固体電解質(開発品) のスペクトル分析結果と同様に、黒点ではLi強度が強い傾向が みられた。これらの結果から、固体電解質(開発品)では、Li濃度が異なる領域がミクロ ンサイズで点在していることが示唆された。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1-1 正極活物質(LiCoO2)の点分析スペクトル
Fig.1-2 正極活物質(LiCoO2)の点分析微分スペクトル
Fig.2-1 負極活物質(Li4Ti5O12) の点分析スペクトル
Fig.2-2 負極活物質(Li4Ti5O12) の点分析微分スペクトル
Fig.3-1 固体電解質(開発品) の点分析スペクトル
Fig.3-2 固体電解質(開発品) の点分析微分スペクトル
Fig.4-1 固体電解質(開発品) の断面SEM像
Fig.4-2 スペクトル形状
Fig.5 正極活物質(LiCoO2)/固体電解質(開発品)/導電助剤試料のマッピング分析結果
Fig.6 負極活物質(Li4Ti5O12)/固体電解質(開発品)/導電助剤試料のマッピング分析結果
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
参考文献1)Surf. Interface Anal. 2016, 48, 501–504参考文献2)ACS Appl. Mater. Interfaces 2017, 9, 33238−33249参考文献3)Chem. Mater. 2017, 29, 3883-3890
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:1件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件