利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.15】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24NM0007

利用課題名 / Title

超伝導量子計算素子の作製プロセス

利用した実施機関 / Support Institute

物質・材料研究機構 / NIMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

量子効果デバイス/Quantum effect device,リソグラフィ/ Lithography,膜加工・エッチング/ Film processing/etching


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

佐藤 哲朗

所属名 / Affiliation

日本電気株式会社

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

野口将高

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NM-614:CCP-RIE装置 [RIE-200NL]
NM-617:ICP-RIE装置 [RV-APS-SE]
NM-660:マスクレス露光装置 [MLA150]


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

我々はムーショット型研究開発事業における超伝導量子回路の集積化の一環として、超伝導量子ビットのコヒーレンス改善を目的とした共振器作製プロセスを検討している。従来共振器内の超伝導材料として適用してきたニオブ(Nb)は大気中の酸素との反応により表面に酸化層を形成する。この酸化層による損失が大きいため、安定して高いQ値を示すNb製超伝導共振器の作製が困難な状況にある。現在Nbに代わる新材料として表面酸化層が成長しにくい窒化チタン(TiN)を用いた窒化物共振器作製プロセスを検討しており、表面酸化層による損失の影響を受けにくく大気中で安定して高いQ値を示す共振器の実現を目指す。本報告はまずマスクレス露光装置を用いたTiN薄膜のリソグラフィ、および反応性イオンエッチング装置(RIE)を用いたTiNドライエッチング条件出しを報告する。 第二の課題として、超伝導量子ビットの損失低減を目的とした界面損失量の評価を目指している。本実験では超伝導共振器内における損失源である4つの界面、すなわち超伝導金属/Si界面:Metal-Si(MS)、超伝導金属/空気界面:Metal-Air(MA)、Si/空気界面:Substrate-Air(SA)、バルク基板:Si substrate(SI)のそれぞれの損失量を評価するための試料を作製する。誘導結合型反応性イオンエッチング(ICP-RIE:Inductivery Coupled Plasma-Reactive Ion Etching)装置を用いて共振器設計やエッチング時間を変えて基板のSiを等方的に深堀エッチングすることでSi断面形状の異なる共振器を複数作製し、希釈冷凍機温度で測定した共振器の内部Q値を各界面のparticipation ratioを考慮しながら解析することで各界面の損失量抽出を目指す。

実験 / Experimental

【マスクレス露光装置MLA150】前年度までに、NIMS微細加工プロセスデータベース(MiNaPro)を参考にして表1に示す露光条件にて条件出しをおこない、露光量:65 mJ/cm2、Defoc:0の時に所望の形状を有するパターン形成が可能なことを確認している。今年度はこの条件をもとにして素子を試作した。なお、処理するウェハサイズは3インチで、TiN(90-100 nm)/Si基板の構成となっている。また、Nb共振器も比較対象用として作製しており、Nb(100 nm)/Si基板の構成となっている。Siウェハ上へのNbおよびTiN薄膜成長は他機関で実施した。 【CCP-RIE装置RIE-200NL】 現在の試作に適用しているエッチング条件とNb、TiNエッチング速度を表2および図1に示す。Nb、TiN共に条件出しの際に取得したエッチング速度から顕著な変化はなく、このエッチング条件でデバイスを試作した。なお、処理するサンプルサイズは3インチで、薄膜構成は、Resist(1300nm)/Nb(100nm)/Si基板、Resist(1300 nm)/TiN(90-110 nm)/Si基板であった。 【ICP-RIE装置(RV-APS-SE)】 Siウェハ上へのNb薄膜成膜、共振器パターンのリソグラフィ、およびNb薄膜のRIEエッチングは他研究機関で実施した。Nb薄膜の膜厚は500 nmで、レジストの厚さは2200 nmであった。その後、昨年度までに条件出しした標準条件を基にしてICP-RIEによる等方性エッチングでSi深堀エッチングを実施した。標準条件ではSi被エッチング面の表面粗さのエッチング時間依存性が認められ、これが正確な界面損失量評価の妨げとなっていると推測された。今年度も引き続きこのSi被エッチング面の平滑性改善を主たる目的として、表3に示すエッチングレシピにてエッチング条件最適化を目指した。また、装置の4インチ化に伴い、これまでの高耐熱性グリースによる搬送ウェハへの貼り合わせから、He冷却機構によりウェハ裏面を直接冷却する4インチウェハ単独での処理についても表4に示す条件のとおり調査した。

結果と考察 / Results and Discussion

【TiNリソグラフィおよびRIEエッチング】 前年度の検討結果から得られた条件Dose:65 mJ/cm2、Defoc:0で、本年度も所望の形状を有するレジストパターンが得られることを確認した。図2、3にレジストパターンの平面SEM像および断面SEM像を示す。また、図4にTiNドライエッチング後の共振器パターンの断面SEM観察結果を示す。TiNパターン側壁が逆テーパー形状になっているが、概ね良好な形状が得られている。オーバーエッチング時間の調整やその他エッチングパラメーターの微調整によりパターン形状改善が見込めると推察しており、必要に応じて最適化していく予定である。今年度は上記の条件をベースにして現在までにいくつかの共振器デバイスを低温評価に供給した。 【Nb共振器におけるSi深堀エッチング】まず搬送トレイに貼り合わせた個片試料において、標準条件に対してO2添加量、ガス圧およびICPアンテナパワーを変化させ条件出しをしたが、標準条件でエッチングした試料が最も優れており、条件を変えた場合はいずれも平滑性の良いSi被エッチング面を得ることができなかった(図5(a),(b),(c))。次に貼り合わせなしの直接冷却処理について評価した。図6に4インチウェハによるSiドライエッチングレートのガス圧依存性を示す。エッチングレートは、共振器設計のパターン開口幅が広いほど、また処理ガス圧が高いほど速い傾向にあることが分かった。Si被エッチング面の平滑性は、O2添加量10 sccm、ガス圧1.0 Paの時、側壁方向も含めて良好な結果が得られた(図7)。これは標準条件よりもガス圧を低圧側にシフトすることで、Si表面平滑性は改善傾向にあることを示唆しているが、ガス圧0.5 Paまで下げた場合は逆にSi表面平滑性の劣化が確認された(図8)。 今後は0.5 Pa-1.0 Paの範囲の低ガス圧条件下についてさらに調査を進め、表面平滑性が保たれる閾値を見極めたいと考えている。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 NbおよびTiNのRIEエッチング速度



図2(a) 共振器レジストパターンのSEM像



図2(b) 共振器レジストパターンのSEM像



図3 共振器レジストパターンの断面SEM像



図4(a) TiN共振器の断面SEM像。エッチング時間は6分7秒。オーバーエッチング時間は30%である。(a)L/S: 15 um/11 um



図4(b) TiN共振器の断面SEM像。エッチング時間は6分7秒。オーバーエッチング時間は30%である。(b) L/S: 6 um/2 um



図5(a) 表3標準条件によるSi深堀エッチング後の断面SEM像



図5(b) 表3条件1によるSi深堀エッチング後の断面SEM像



図5(c) 表3条件3によるSi深堀エッチング後の断面SEM像



図6 Si深堀エッチング速度のガス圧依存性(4インチ直接冷却の場合)



図7 表4条件3でエッチングした試料の断面SEM像



図8 表4条件4でエッチングした試料の断面SEM像



表1 マスクレス露光装置の露光条件



表2 RIEドライエッチング条件



表3 ICP-RIEエッチング条件(搬送トレイに貼り合わせ)



表4 ICP-RIEエッチング条件(4インチウェハ直接冷却での処理) 条件3が4インチウェハ直接冷却における現状の最適条件


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究はJSTムーンショット型研究開発事業(JPMJMS2067)の支援を受けたものです。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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