【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.23】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24NM0053
利用課題名 / Title
材料の熱物性最適化を通じた抵抗変化メモリの高性能化に関する研究
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
エレクトロデバイス/ Electronic device,膜加工・エッチング/ Film processing/etching
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
島 久
所属名 / Affiliation
産業技術総合研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
高橋 慎,内藤 泰久
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
渡辺 英一郎
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NM-662:低ダメージ精密エッチング装置 [Spica]
NM-663:分光エリプソメーター [UNECS-2000A]
NM-625:エリプソメーター [MARY-102FM]
NM-624:顕微分光膜厚計 [F54-XY-200-UV]
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
酸化物薄膜の抵抗変化を利用した不揮発性メモリReRAM (Resistive Random Access Memory)は、その抵抗値をアナログ的に変化させることができるため、ニューラルネットワーク(NN)をデバイスで実装する際の重みとしての研究開発が行われている。この用途では、学習の過程で最適化した重み、言い換えれば、抵抗値の経時変化やノイズのような非理想的な特性はNNの計算精度を低下させる要因となるため、ReRAMの動作信頼性をより高めることが重要である。本研究ではReRAMの素子を構成する材料と抵抗値の安定性との関連を評価するための素子の微細加工に向けて、ReRAMを構成する多層膜のドライエッチング工程の開発を行った。ReRAMの基本的な素子構造は上部電極/酸化物薄膜/下部電極という構造であるが、本研究の素子の場合、抵抗変化層としてTa酸化膜(TaOx)、下部電極としてTa窒化膜(TaNx)を用いており、上下の電極間で電気特性を測定するために、下部電極を十分に残した状態でドライエッチングを完了させる必要がある。そこで、反応性イオンエッチングやアルゴンミリングの様ないくつかのドライエッチングプロセスでTaOxとTaNxを加工した場合のエッチングレートの比率(選択比)を調べ、下部電極を残した状態で加工を完了させる工程に適したプロセスの検討を行った。
実験 / Experimental
エッチングレートを評価するためのTaOx膜とTaNx膜はどちらも、マグネトロンスパッタ装置のカソードにTaメタルターゲットを取り付け、反応性スパッタリングで成膜した。基板には熱酸化膜付きシリコン基板を用いた。熱酸化膜の厚みは100 nmである。今回、ドライエッチングプロセスとして、アルゴンミリングプロセス(利用者のグループで管理するアルゴンミリング装置)と、低ダメージ精密エッチング装置による反応性イオンエッチング(RIE)プロセスについて検討した。RIEプロセスに関しては、エッチングガスがCl2の場合とSiCl4の場合の2条件でエッチングレートを評価した。基板上の熱酸化膜が露出するまでドライエッチングを行い、熱酸化膜の残量をエリプソメーターや顕微分光計で測定した結果と熱酸化膜のエッチングレートをもとに、TaOx膜とTaNx膜のそれぞれのエッチングレートを決定した。
結果と考察 / Results and Discussion
図1(a)はArミリング、Cl2によるRIE、SiCl4によるRIEプロセスにおけるTaOx膜とTaNx膜のエッチングレートである。Arミリングと比較して、RIEプロセスではどちらのエッチングガスを使用した場合でもエッチングレートが大きく、例えば、Arミリングの場合に対して、SiCl4によるRIEプロセスで加工する場合のエッチングレートはTaOx膜では約10倍、TaNx膜では約20倍であった。本研究の金属元素の中でTaはスパッタ率が低い元素の1つであり、本研究のTaOx膜とTaNx膜はTaの組成比が高い条件としているため、Arミリングによるエッチングレートが低下していると推察している。図1(b)は図1(a)の結果をもとに評価したエッチングレートの比率(TaOx/TaNx)である。ArミリングではTaOx > TaNxであったが、RIEではどちらのエッチングガスを使用した場合でもTaOx < TaNxであった。本研究のReRAM素子ではTaOx膜とTaNx膜の膜厚はいずれも20 ~30 nm程度に制御する計画である。従って、プロセス時間の制御性、および、TaNx膜を十分に残した状態でドライエッチングを完了させるという両方の観点から、Arミリングによる加工が適していると考察している。また、Arミリングでは軽元素の選択エッチングが起こる可能性があるため、Arミリング後の薄膜の組成や化学結合状態などについての評価を行う必要があると考えている。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 (a) Etching rate and (b) ratio of etching rate for TaOx and TaNx thin films by Ar milling, reactive ion etching (RIE) using Cl2 gas, and RIE using SiCl4 gas processes.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件