【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.23】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24NM0153
利用課題名 / Title
各種ポリマーのラマン分析
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
高強度・生分解性プラスチック/ High-strength, biodegradable plastic,赤外・可視・紫外分光/ Infrared/visible/ultraviolet spectroscopy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
大西 雅之
所属名 / Affiliation
三井・ダウポリケミカル株式会社
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
顕微ラマン分光法は光学顕微鏡とラマン分光による定性分析法で、非破壊で材料の構造解析を行うことができる。特にポリマーの結晶性や配向に加えて赤外分光法と比較して空間分解能が高く、微少材料の評価に広く用いられている。今回、以下の2つの分析を通じて顕微ラマン分光法の可能性を調査する。
①フィルムの定性
我々は、様々なポリマーを検討開発し、それらを使用してフィルムを作製している。まず初めにフィルムをポリエチレンなど構成するポリマーの基礎データを取得する。次に赤外分光法では定性できなかった極薄い層について定性可能であるか確認する。
②結晶性の確認
顕微ラマン分光法では、分子の振動エネルギー準位が周囲の分子配列の不均一性に応じて変動するため、結晶構造が乱れているラマンピークはブロード化する。これによって結晶性を評価することができる。今回の検討では、基礎データとしてPE3種類の結晶性を確認するとともに結晶化度を変えたポリマーを作製しラマンスペクトルに違いが見られるか確認した。
実験 / Experimental
①フィルムの定性
ポリマーの基礎データについてはポリエチレン(LDPE,LLDPE,HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などフィルムに使用するポリマーデータを取得した。次にフィルムの定性については検討用フィルムと市販品フィルムを用いた。検討用フィルムは、PE/EVA/PEのフィルムを作製しEVA層の厚みが3μmになるようにした。
②結晶性の確認
①で取得したポリエチレン3種(LDPE,LLDPE,HDPE)のラマンスペクトルについて解析した。また、結晶化度を変化させたEVAをを作製し、ラマンスペクトルから違いを解析できるか検討した。
③顕微ラマン分光法条件
今回はレニショー社製の顕微ラマン分光装置を使用した。いずれの試験もレーザーは532 nmを使用し、対物レンズは50及び100倍を使用した。
結果と考察 / Results and Discussion
①フィルムの定性
ポリマーの基本データを図1~6に示す。次に検討用フィルムのマッピングデータを図7に示し、各層のラマンスペクトルを図8及び図9に示す。この結果、PE層とEVA層については見分けることができた。しかし、EVA層は上手くスペクトルを得ることができなかった。また、図10に市販品のフィルム断面を示し、図11にターゲット層のラマンスペクトルを示す。他層との区別はできるもののこちらも層を定性できるほどのスペクトルは得られなかった。今回の測定条件でこれまでIRでは区別できなかった層を区別することができた。来年度条件を再検討し、更なる検討を進める。
②結晶性の確認
図12にPE(LDPE,LLDPE,HDPE)のラマンスペクトルの重ね書きを示す。PEはCH伸縮(2900~3100cm-1)とCH2はさみ、ひねり(1250~1500cm-1)の範囲で違いみられることが知られている。今回の結果からもHDPEとそれ以外では違いがみられた一方でLDPEとLLDPEは、既存の報告にあるような差異は見られずCH伸縮に僅かに違いが見られる程度であった。この点は、定性の際に注意が必要である。結晶化度に関して本検討では1416cm-1の結晶相と1440cm-1アモルファス相から算出する予定であったがそこまでは解析できなかった。ただ、図12からもスペクトルに違いは見られたことから今回測定した3種類のPEについて弊社で密度測定を行い、顕微ラマン分光法と比較してみたところ良い相関が得られた。密度と結晶化度には相関があることからこれを利用して、今後顕微ラマン分光法からフィルムの密度測定を検討していきたい。また、結晶化度を変えたEVAについてはラマンスペクトルから違いを確認することはできなかった。PEに比べて結晶化度が低くであることから結晶性ピークが得られなかったことが要因と考える。今回は測定条件を大きく変更せずに実施したが今後条件を再検討し、結晶化度の低いポリマーの比較等を検討していく予定である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 HDPEのラマンスペクトル
図2 LDPEのラマンスペクトル
図3 LLDPEのラマンスペクトル
図4 PPのラマンスペクトル
図5 EVAのラマンスペクトル
図6 PETのラマンスペクトル
図7 フィルム断面のマッピング像
図8 PE層
図9 EVA層
図10 フィルム断面
図11 a層のラマンスペクトル
図12 PEのラマンスペクトル比較
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件