利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.20】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24NM0170

利用課題名 / Title

清浄剤と摩擦調整剤が生成する鉄鋼材上のトライボフィルムの断面組成分析

利用した実施機関 / Support Institute

物質・材料研究機構 / NIMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials

キーワード / Keywords

パワーエレクトロニクス/ Power electronics,エネルギー貯蔵/ Energy storage,電子顕微鏡/ Electronic microscope,環境発電/ Energy Harvesting,集束イオンビーム/ Focused ion beam


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

佐藤 魁星

所属名 / Affiliation

東京理科大学 工学部 機械工学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

林 優美

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

永田 大介

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NM-509:デュアルビーム加工観察装置
NM-503:200kV電界放出形透過電子顕微鏡(JEM-2100F1)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

産業機械は,歯車,軸受,オイルシールなどの機械要素で構成されており,多くのしゅう動部を有する.これらのしゅう動部において,潤滑油は産業機械の性能向上に重要な役割を果たす.ジアルキルジチオリン酸亜鉛(Zinc dialkyl dithiophosphate: ZnDTP)やモリブデンジチオカーバメート(Molybdenum dithiocarbamate: MoDTC)をはじめとする潤滑油添加剤は,摩擦・摩耗特性の改善を目的として広く用いられる.MoDTC は ZnDTP と組み合わせることで効率的に MoS2(二硫化モリブデン)のトライボフィルムを形成し,相乗効果により優れた低摩擦効果を発現する.金属表面で作用する潤滑油添加剤には,これらのほかに,金属表面に物理的に吸着し,錆を防ぐ防錆剤も含まれる.特に,スルホネート系の防錆剤は油中にミセル構造を形成し,スラッジ等の極性物質を吸着し,油中に分散させる働きを担う.しかし,物理吸着作用のある防錆剤は金属表面で他種の添加剤と競争反応もしくは相乗効果を引き起こす可能性があり,添加剤特性に影響を及ぼすことがある.例えば,過塩基性のカルシウムスルホネートは,ZnDTPとの併用下では,ZnDTPの極圧性および耐摩耗性を低下させることが報告されている.一方で,カルシウムスルホネートとトリクレジルフォスフェート(Tricresyl phosphate: TCP)との併用下では摩擦面全体にカルシウム化合物が分布し,リン酸化合物と複合膜を形成して摩耗を抑制することが報告されている 3).このように,添加剤を併用した潤滑油では,予期せぬ潤滑効果を示すことがあり,産業機械の性能や機械寿命に大きな影響を与える可能性がある.さらに,実用される潤滑油のほとんどは,いくつかの添加剤が複合的に添加されているため,添加剤の併用時における潤滑効果を理解し, 潤滑設計に繋げていくことが重要である.しかしながら,このような複合添加油中における添加剤の化学的相互作用やメカニズムについては,詳細な解明には至っていない. 前報において筆者らは,ZnDTP,MoDTC,およびカルシウムスルホネートの複合添加油の添加剤特性について,マクロスケールならびにナノスケールでの評価を行い,カルシウムスルホネートの併用により摩耗低減効果があることを明らかにした 4).AFM摩擦面その場観察およびAFMスクラッチ試験法により,カルシウムスルホネート複合添加油では,カルシウムスルホネートを含まない併用油と比較して,緻密で比較的平滑なトライボフィルムを形成することにより,摩耗低減効果の発現に寄与している可能性が示唆された.本研究では,カルシウムスルホネート複合添加油の摩耗低減メカニズムについて,トライボフィルムの構造をより詳細に分析した結果を報告すると共に,摩耗低減メカニズムを提案するため.FIBを用いて断面加工を実施し,トライボフィルムの断面観察を実施した.

実験 / Experimental

摩擦試験後のディスク試験片について,集束イオンビーム(FIB; NB5000, Hitachi, JP)および透過型電子顕微鏡(TEM; JEM-2100F, JEOL, JP)を用いてトライボフィルムの断面分析を実施した.TEM 分析試料は,ディスク側の摩耗痕中央部の10 µm 領域をあらかじめ薄い炭素膜でコーティングし,FIB により断面加工して作製した.得られたトライボフィルム断面部の化学組成は,走査型透過型電子顕微鏡 - エネルギー分散型X線分光法(STEM-EDS)を用い, 倍率100万倍,加速電圧200 KVで分析した. 

結果と考察 / Results and Discussion

PAO + ZnDTP + MoDTC + HBCS の FIB による断面加工後のトライボフィルムの TEM 像と EDS マッピングおよびライン分析の結果を示す.カルシウムスルホネートを併用添加した PAO + ZnDTP + MoDTC + HBCS のトライボフィルムの厚さは約 100 nm であった.EDS 分析の結果,トライボフィルム上部の厚い層は O,P,Ca(カルシウム),Zn で構成され,下部の薄い層は S,Mo,Fe で構成されていた.さらに,ライン分析の結果,トライボフィルムの表層近傍では P および Ca の検出強度が他の添加剤由来の元素よりも高いことが示された.対照的に,S および Mo の検出強度は母材とトライボフィルムの界面で大幅に増加した.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 (a) Scanning transmission electron microscope image and (b–i) energy dispersive X-ray spectroscopy maps and cross-sectional scans of the tribofilm of PAO + ZnDTP + MoDTC



図2 (a) Scanning transmission electron microscope image and (b–i) energy dispersive X-ray spectroscopy maps and cross-sectional scans of the tribofilm of PAO + ZnDTP + MoDTC + HBCS


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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