【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.14】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24RO0013
利用課題名 / Title
Bone-BBB(Blood-Bone Barrier)連関マイクロ流体デバイスの作製
利用した実施機関 / Support Institute
広島大学 / Hiroshima Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
PDMS,,流路デバイス/ Fluidec Device
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
吉本 哲也
所属名 / Affiliation
広島大学病院 口腔検査センター
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
黒木伸一郎,岡田和志,水野恭司
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
歯周病が認知機能に影響を与えることが近年報告されている。しかし, その実態や分子制御機構について明確な解答は得られていない。本研究では, 顎骨組織が口腔内機械受容性感覚の主体であると考え, 骨組織と認知機能には重要なネットワークがあるのではないかと仮説を立てた。しかしながら, マウス等を用いたin vivo研究では, 全身が複雑に関連するため骨組織と脳との連関を直接観察することは難しい。また従来の2D細胞培養を用いた研究では, 生体と大きくギャップがある。そこで, マイクロ流体デバイスを用いた研究を実現するため, 広島大学ARIM支援室に提案したデバイスの作製を依頼した。具体的には, 本共同研究において, 骨組織が脳ニューロンに与える影響に着目し, これまでに確立されていない新規Bone-BBB(blood-brain barrier, 血液脳関門)連関流体デバイスの確立を目指した。
実験 / Experimental
広島大学ARIM支援室にて, 昨年度作製した血液脳関門を再現する2層流路マイクロ流体デバイス用4インチSi基板鋳型(上層, 下層)を使用して、PDMS調合液(主剤:硬化剤を10:1)を自・公転ミキサーにより撹拌(20秒)脱泡(20秒)し, 真空吸引機にて脱気後, 加熱処理により硬化させた(80℃, 1時間)。硬化したPDMSブロックはPDMS加工装置により上層, 下層それぞれ切り出された。PDMS下層ブロックは, クリーニングのため卓上真空プラズマ装置によりプラズマ照射されたのち, スライドガラスと加熱接着された(PDMS下層ブロック−スライドガラスユニット)。上層ブロックは, まずインレット・アウトレットチューブ装着のため穴あけ治具により加工された。メンブレンフィルターはSterlitech社製のPolycarbonate Membrane Filters (0.4 Micron, 13 mm, PCT0413100)を用いた。まずメンブレンを卓上真空プラズマ装置によりプラズマ照射したのち, 1.5%APTES (3-Aminopropyltriethoxysilane)希釈液に浸漬することでカップリング処理した。メンブレンを上層ブロックに静置した後, 張り合わせ装置によりPDMS下層ブロック−スライドガラスユニットと加熱接着させた。インレット, アウトレット加工部にチューブの装着を行い, 目的とするメンブレンフィルター内蔵2層流路デバイスの完成とした。デバイスの機能的な検証を行うため, デバイスを申請者研究室へ持ち帰り, 上層に赤インク, また下層に青インクを流し込んだ。液漏れ等の損傷がないことを確認したのち, 実際の細胞培養を実施した。細胞は、ヒト脳血管内皮細胞を用いた。
結果と考察 / Results and Discussion
本支援での特徴は、上層・下層の単純なマイクロ流路作製だけでなく、以下のように平行性を必要とする構造の作製である。 すなわち、上下の流路間に10μmのメンブレンフィルターを挟んだサンドイッチ構造において、下層流路のマイクロピラー部の上に、上層流路の幅が合うように配置し、さらに要求されるピラー数により約10mm長で50μmの平行度を確保する3層構造のデバイス作製が要望である。メンブレンフィルターを挟む為、その向こう側の流路に対する視認性が悪く、この平行度の確保が最重要課題となる。今回、図1の独自に開発した貼り合わせ装置により、上下2層平行流路の安定的な貼り合わせ位置を確保することができた。
また、従来のBBB流体デバイスは、メンブレンフィルター厚の10 μmの段差による上下層間での培地コンタミが克服できずにいた。この問題に関して、適切な量のPDMSを中間に流す技術を応用し、防ぐ構造にすることで解決しており、上下層の精密な解析を可能にしている。また、培地コンタミのない十分な機能性も確認されている。これらの技術革新は、将来的な骨組織−認知機能ネットワークの統合的な理解を推進する新たな戦略を生み出す可能性個もの細胞培養に成功している点である。すなわち、上層流路と下層流路を隔てるメンブレンフィルター上に播種されたヒト脳毛細血管内皮細胞hCMEC/D3が、広範囲に亘り、細胞死や細胞の漏出等の問題がなく、隙間なく正常に接着し、細胞骨格が維持されていることが確認された(図2A-D)。さらに、下層への漏出もなく、精度の高い培養系を樹立することができた。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1
図2
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究は、黒木伸一郎先生を始め、広島大学半導体産業技術研究所の多大なご支援により実施されました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 吉本哲也、マイクロ流体デバイスを用いた骨-臓器連関の解明 〜臓器チップ、骨組織、血液脳関門〜 、2024/1/23 「第2回革新的なエネルギー変換を可能にするマテリアル領域」シンポジウム、東京大学武田ホール (浅野キャンパス)
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件