【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.05.23】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24UT0298
利用課題名 / Title
レーザーアブレーション法で作製したナノ微粒子の形状観察
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion
キーワード / Keywords
パワーエレクトロニクス/ Power electronics,ナノ粒子/ Nanoparticles,電子顕微鏡/ Electronic microscope,ワイドギャップ半導体/ Wide gap semiconductor
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
宮島 顕祐
所属名 / Affiliation
東京理科大学先進工学部・物理工学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
横田 葵,余 希
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
森山 和彦,押川 浩
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
我々の研究室では,SiCのナノ構造化による発光効率増大を目指した研究を行っている.液中レーザーアブレーション法によって作製したSiCナノ微粒子には,微粒子表面にダングリングボンドが存在し,その不均一性により微粒子の酸化が促進されると推測されている.そこで,溶液を炭素過剰にして,微粒子表面にOnion-like-carbon(OLC)シェルを作製すると,酸化が抑制され,さらに微粒子同士の凝集も抑制されることが期待される.本研究では,炭素過剰な溶液中でのレーザーアブレーション法によって作製したSiCナノ微粒子の形態観察を行い,OLCに被膜されたSiC(SiC@OLC)ナノ微粒子の作製に取組んだ.
実験 / Experimental
SiCナノ微粒子の形態観察にTEM(日本電子製JEM-2010F)を使用した.
結果と考察 / Results and Discussion
アブレーションに用いたレーザー光はパルス幅~3 ps,繰り返し周波数1 kHz,波長800 nmである.ターゲット上でのスポットサイズは 51.6 mmであり,50 mm/sのスピードで照射位置を走査しながらアブレーションを行った.まず,ヘキサン中でGraphite基板のアブレーションを行うことでGraphiteコロイド溶液を作製した.次に,そのコロイド溶液中で4H-SiC基板のアブレーションを行うことでSiC@OLCナノ微粒子の作製に取り組んだ.Graphiteと4H-SiCそれぞれのアブレーション時間のセットは,Graphite: 0 minと4H-SiC: 90 min,Graphite: 30 minと4H-SiC: 90 min, Graphite: 6 minと4H-SiC: 10 minの3種類であり,以下,それぞれG0S90 Sample,G30S90 Sample,G6S10 Sampleと呼ぶ.アブレーション光の照射密度はGraphiteに対して0.96 J/cm2,4H-SICに対して2.87 J/cm2で一定とした.作製したそれぞれの試料を相対遠心加速度2000 Gで60 min遠心分離し,TEMグリッドに滴下してTEM観察を行った.Fig.1にG0S90 Sampleの拡大図,Fig.2にG30S90 Sample の(a) 縮小図,(b) SiC@OLCナノ微粒子の拡大図,Fig.3にG6S10 Sampleの(a) 縮小図,(b) SiC@OLC ナノ微粒子の拡大図のTEM明視野像を示す.全Sampleにおいて形状は球形に近いものが多いが,歪んだ形の粒子も存在していることがわかる.Fig.1のように,G0S90 SampleではOLCに被膜されていないSiCナノ微粒子が多量に存在していた. Fig. 2 (a)のように,G30S90 Sampleでは微粒子の周囲にアモルファス物質が多量に存在し,それらが凝集して存在していた.アモルファス物質はG0S90 Sampleではほとんど観測されなかったため,これはGraphite由来であると考えられる.また,Fig. 3 (a)に示すように,G6S10 SampleではG0S90 Sampleと比較するとアモルファス物質が非常に少ない. 拡大図に注目すると,Fig. 2 (b)およびFig. 3 (b)に示すように,G30S90 SampleおよびG6S10 Sampleでは数十 nmオーダーのSiC@OLCナノ微粒子が存在していた.SiC@OLCナノ微粒子は,G6S10 Sampleにおいてより多く観測された.Graphiteに対するアブレーション時間が増大すると,Graphiteコロイド溶液密度は高くなる.SiCナノ微粒子生成領域に存在するGraphiteナノ微粒子が過剰すぎる場合,Graphiteのアモルファス化および微粒子の凝集を招きやすくなり,OLC形成が阻害されることが,以上の結果から示唆されている. 本研究では,炭素過剰な環境下でのアブレーション法により,数十 nmオーダーのSiC@OLCナノ微粒子の生成に成功した.しかし,SiCが発光に寄与するためには数nmオーダーである必要がある.そのため, SiC@OLCナノ微粒子の微細化が課題として挙げられる.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1. Enlarged TEM bright field image of G0S90 Sample.
Fig.2. TEM bright field image of G30S90 Sample. (a) Reduced image. (b) Enlarged image.
Fig.3. TEM bright field image of G6S10 Sample. (a) Reduced image. (b) Enlarged image.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
横田葵, 原口遼, 余希, 宮島顕祐, "ヘキサン中でのレーザーアブレーション法によって作製したSiCナノ微粒子の発光特性評価" ナノ学会第22回大会 (仙台), 2023.5.22-24 23UT0125 に掲載した。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 横田葵, 原口遼, 余希, 宮島顕祐,"ヘキサン中レーザーアブレーション法によって作製したSiCナノ微粒子の構造評価と発光スペクトル" 第85回応用物理学会秋季学術講演会(新潟), 2024.9.16-20
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件