【公開日：2025.06.10】【最終更新日：2025.04.21】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24KU0007

利用課題名 / Title

Dion-Jacobson型強誘電体における強誘電ドメイン構造と原子変位の可視化

利用した実施機関 / Support Institute

九州大学 / Kyushu Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】（主 / Main）計測・分析/Advanced Characterization（副 / Sub）-

【重要技術領域 / Important Technology Area】（主 / Main）量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions（副 / Sub）次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials

キーワード / Keywords

電子顕微鏡/ Electronic microscope,原子薄膜/ Atomic thin film,電子顕微鏡/ Electronic microscope,電子回折/ Electron diffraction,原子層薄膜/ Atomic layer thin film

利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名（課題申請者）/ User Name (Project Applicant)

森 茂生

所属名 / Affiliation

大阪公立大学大学院工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

道地　優斗

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

工藤　昌輝,前野　宏志

利用形態 / Support Type

（主 / Main）技術補助/Technical Assistance（副 / Sub）-

利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

KU-002：収差補正走査/透過電子顕微鏡
KU-004：広電圧超高感度原子分解能電子顕微鏡

報告書データ / Report

概要（目的・用途・実施内容）/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

層状ペロブスカイト酸化物はペロブスカイトに類似した層とアルカリ金属の層で構成されており, Ruddlesden-Poper(RP)相やAurivillius相などがある. Dion-Jacobson(DJ)相は層状ペロブスカイト酸化物の一種であり, 化学式は[A‘A_n−lM_nX_3n+1]と表記される. これらの酸化物は強誘電性を示し, 新たな誘電体探察がなされている. 層状ペロブスカイト酸化物においては, 酸素八面体(MO₆)の回転と傾斜により中心対称性が消失し, 強誘電性が発現するHIF機構(Hybrid Improper Ferroelectricity)¹⁾である.本研究では, Cs(Bi₂Sr_n−3)(Ti_n−1Nb)O_3n+1（ n = 3、4、5 ）及び関連物質系に着目し、電子回折法、暗視野法、STEM-HAADF法を用いて、誘電ドメイン構造や電荷ドメイン壁での微細構造について調べた。

実験 / Experimental

CsBi₂Ti₂NbO₁₀ (n = 3) の出発化合物は、Cs₂CO₃、Bi₂O₃、TiO₂、および Nb₂O₅ (Cs:Bi:Ti:Nb = 1.1:2:4:1 のモル比) の混合物を 900 ºC で 24 時間加熱することによって合成した。 n = 4 および 5 の高次相は、SrTiO₃ との繰り返し固体焼成によって合成した。CsBi₂SrTi₃NbO₁₃ (n = 4) は、CsBi₂Ti₂NbO₁₀ (n = 3) と SrTiO₃ (1:1 のモル比) の混合物を 1010 °C で 24 時間加熱することによって合成した。次に、CsBi₂SrTi₃NbO₁₃ (n = 4) と SrTiO3 (モル比 1:1) の混合物を 1080 °C で 24 時間加熱することにより、CsBi₂Sr₂Ti₄NbO₁₆ (n = 5) を合成しました。 実験装置はJEM-2100Plus（大阪公立大学）とJEM-ARM200CF，JEM-ARM200F（九州大学超顕微解析センター）を用いて行った．TEM法では明視野像，暗視野像，電子回折を取得した．STEM法では原子分解能HAADF-STEM像を取得した．

結果と考察 / Results and Discussion

CsBi₂Sr₂Ti₄NbO₁₆ (n = 5) において、ナノメートルサイズの極性ドメインが存在することを確認するために、原子分解能 HAADF-STEM 観察を行った。その結果、Fig.1に示すように、強誘電分域壁において隣合う強誘電ドメイン間の分極方向がtail-to-tailまたはhead-to-headの配置を持っている帯電ナノドメインを構成していることを見出した。ドメイン壁の厚さは、tail-to-tailの場合では2～5 nm、一方、head-to-headの場合では約1 nm であった。これらの実験結果より、強誘電相転移が、層数、ペロブスカイト層の奇偶奇度、および A サイトと B サイトの陽イオンのランダム性の間の複雑なバランスによって引き起こされていることを示唆している。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations

Fig.1, HAADF-STEM image obtained in the CsBi₂Sr₂Ti₄NbO₁₆ (n = 5) sample. The displacement of the B-sites is calculated by fixing the Cs site at the origin. The formation of nanoscaled domains with the head-to-head and tail-to-tail configuration is clearly shown in this image.

その他・特記事項（参考文献・謝辞等） / Remarks(References and Acknowledgements)

1)      N. A. Benedek and C. J. Fennie, Phys. Rev. lett. 106, 107204 (2011).
謝辞 本研究でのSTEM観察において、九州大学超顕微解析研究センターの工藤昌輝氏と前野宏志氏にご協力いただき感謝申し上げます。

成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング（DOIのあるもの） / DOI (Publication and Proceedings)

口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.

特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications：0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents：0件