利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.21】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24KU0018

利用課題名 / Title

強加工Al材結晶組織の3D-EBSD観察

利用した実施機関 / Support Institute

九州大学 / Kyushu Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies

キーワード / Keywords

Al合金,電子顕微鏡/ Electronic microscope,易循環型材料設計技術/ Recycling-friendly material design technology,集束イオンビーム/ Focused ion beam


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

佐々木 勝寛

所属名 / Affiliation

株式会社UACJ

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

中川凌吾

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

GAO HONGYE

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

KU-013:キセノンプラズマ集束イオンビーム加工・走査電子顕微鏡複合機


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 電子材料基盤Al合金は、圧延などの強加工後、調質、研磨、バッファ層めっき後に表面に機能材料をコーテイングする。要求される表面平滑度を満たすためには、バッファ層めっき後のAl合金表面近傍の残留歪を極限まで減らす必要がある。人為的な歪を導入せずにバッファ層を取り除き、Al合金表面近傍の残留歪の厚さ方向分布を測定するには、集束イオンビーム(FIB)加工法によるバッファ層および表面層の除去と、電子線後方散乱回折(EBSD)法による結晶方位分布測定が有効である。局所的な歪分布のばらつきを抑えるため、100μm角以上の広い領域での加工・観察を行うために、加工速度の速いキセノンプラズマFIB(XePFIB)を用いて、Al合金表面近傍の三次元EBSD(3D-EBSD)測定を行い、表面近傍の三次元Kernel Average Misorientation (KAM) Map得ることにより、Al合金表面近傍の残留歪の厚さ方向分布を求めた。

実験 / Experimental

 試料には、Al-Mg系合金を用いた。圧延後、調質、研磨後、8.5μm厚のNi-Pめっき後、10 mm角、1 mm厚に切り出したものを用いた。FIBには、九州大学のThermo Fisher Scientific製のHelios 5 Hydra DualBeamを用い、Xeイオンビームで加工を行った。試料表面に垂直に150 μm角、高さ30 μmのピラーを切り出し、5 μm程度Ni-Pめっき層を取り除いたのち、Cut&See機能を用い空間分解能0.3μm、スライス厚さ0.1μmで3D-EBSD観察を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

 一般に表面近傍のCut&Seeによる三次元観察は、表面に対して垂直にスライスする場合が多いが、表面に沿った歪の平均値を得るために座標変換を行う必要がある。その際の計算誤差を低減するため、本実験では表面に沿った方向でスライスし、各スライスの二次元像ごとに歪を求めた。このため、Fig. 1に示すように150 μm角、高さ30 μmのピラーを表面から垂直に削り出した。その後、Fig.2に示すように試料を回転し、ピラーのイオン銃に向いた側面にドリフト補正用のマークを加工し、側面表面にイオンビームアシストWデポジションにより保護膜を形成した。加工したピラーを再度回転させ、イオンビームが試料表面に平行になる向きに調整し、まず、Ni-Pめっき層を5μm削り取った後、3D-EBSD観察を開始した。表面のNi-P層は非晶質であるため、回折パターンは得られなかった。Cut&See開始後106スライス目(加工開始点より10.6μm)よりAlの結晶パターンが観察され始め、結晶組織のInverse Pole Figure (IPF)が得られた。これは、表面の削り残しが発生するのを避けるために、Cut&See開始位置を表面より上に設定したためと、Ni-Pめっき層の厚さが設計値より厚くなっていたためと考えられる。また、Alの結晶パターンが観察され始めてから、全表面で観察されるまで10スライス程度の遷移層があった。Ni-Pめっき層とAl合金基盤層の界面に対し、イオンビームが完全に平行となっていなかったためと考えられる。ずれ角は150μm幅で1μmの遷移幅であるため、0.3°程度と考えられる。得られた試料面に垂直な方向Zを<001>の基準方向とした場合のIPF Zの一例をFig. 3に示す。イオンビームは図中下部から上部へと向かって試料表面を削っている。図中下部は、ドリフト補正のためのピラー側面の位置合わせマークの画像走査時のダメージにより、明確なEBSBパターンが取得できていない領域が存在するが、150 μm角ほぼ全面で、明瞭に方位を決定できている。結晶粒サイズは5 μm以下のものから、50 μm程度のものまで存在する。このためGaによるFIBでは、観察位置によっては十分な数の結晶粒を含んだ領域を観察できない場合があることが分かる。スライス毎の二次元IPFマップより、Kernel Average Misorientation (KAM)マップを作成したものがFig. 4である。図中青1°未満、緑1~2°、黄色2~3°、橙3~4°、赤4~5°でMisorientationを示す。特定の粒界や粒界三重点で高い値を示すことが分かる。表面より深さ方向の各Misorienteitionの面積率を示すとFig. 5のようになり、3°以上の領域は深さによらず一定値を示し、1~2、2~3°の領域のみが、表面から0.8~0.9 μmでピークを示し、その後低下している。Misorienteitionは局所ひずみと関連している[1]事より、表面歪は深さ1 μm以下の領域に分布していることが分かった。
 一般的に行われている断面方向へのスライスによるIPFマップを三次元化した後に、表面に平行方向のスライスに変換してKAM値を求めた場合、座標変換による計算誤差の入り込む余地があるが、表面に平行にスライスすることで、誤差を回避することを試みた。しかし、イオンビーム入射方向を完全に表面に平行にすることが出来ておらず、厚さ方向の分解能がスライス厚さに対して厚くなってしまい1 μm程度になったと考えられる。試料の向きの設定に改良が必要と考えられる。また、より鮮明なIPFマップを得るには、ドリフト補正時のイオンビーム走査によるダメージの低減も検討する必要がある。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 The SEM image of the prepared pillar shape with 150 x 150 μm width and 30 μm height perpendicular to the sample surface.



Fig. 2 The SEM image of the pillar coated with W as a protective layer after the formation of the fiducial mark for drift compensation.



Fig. 3 The IPF of z direction corresponding to surface normal at a slice. The color-coded map and index of directions are shown in left side of the figure.



Fig. 4 The KAM map corresponding to the IPF in Fig. 3. The color codes and index of directions are shown in left side of the figure.



Fig. 5 The area ratio of KAM values as a function depth.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

参考文献
[1] J. F. Nye, Some geometrical relations in dislocated crystals, Acta Metallurgica 1, (1953) pp. 153-162.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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