【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.04.18】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
24KU0029
利用課題名 / Title
輝石内部析出相の界面構造について
利用した実施機関 / Support Institute
九州大学 / Kyushu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
光学顕微鏡/ Optical microscope,電子顕微鏡/ Electronic microscope,イオンミリング/ Ion milling,電子回折/ Electron diffraction,電子分光/ Electron spectroscopy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
藤 昇一
所属名 / Affiliation
福岡大学理学部物理科学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
福永 裕美,工藤 昌輝,鳥山 誉亮
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
南極大陸に産する超高温変成岩(九州大学理学部、宮本知治博士より提供)は、かつて超大陸の一部を形成し大陸の衝突や分裂の記録を残していると考えられているらしい。藤と宮本(2020)はこれらの岩石中の輝石に離溶組織を記載し、普通輝石(aug)内部に離溶したピジョン輝石(pig)が複数の方位を持つ特徴を確認した。 aug-pig間の離溶界面は、(100)面と(001)面からわずかに傾く場合があり、”100”や”001”と表記される。この現象を説明するために、Robinson(1977)[2]は、Optimal Phase Boundaryモデル[3]を輝石に拡張して説明した。このモデルによれば、augとpigは、1) (100)や(001)から僅かに傾いた界面によって格子のミスフィットがなく歪みエネルギーがゼロの状態になると考えた。さらに、2)これらの界面が一旦形成されると、その後冷却しても方位が変化しないと考え、界面の方位から離溶時の温度を見積もる温度計を提唱した。一方、超高温変成岩の研究においてはFeやMgの拡散を伴ういわゆる地質学的温度計は最高変成温度を示すのではなく、冷却時の温度を示していると考えられている。これらを考え合わせると、Robinsonらが提唱した温度計を適用すれば、超高温変成岩が経験した最高変成温度を知ることができるはずである。しかしながら、Robinsonらのモデル図を実際に確認した例はないと思われる。そこで、格子像観察と化学組成分析により、界面領域を明らかにする試みを行っており、それらの結果を報告し、原因について考察した。
実験 / Experimental
超高温変成岩のグラニュライトから岩石薄片を作製し、偏光顕微鏡で離溶組織をもつaugを選び出した。その際には干渉色からb軸入射と思われる結晶を選ぶよう留意した。それらを九州大学超顕微解析研究センター(URC)に設置されているイオン研磨機(gatan社製PIPS II)により透過型電子顕微鏡試料とした。URCの汎用分析電子顕微鏡(JEM-2100F)により組織観察、EDS組成分析を行った。電子回折パターンの指数付では、大阪公立大学、瀬戸博士らが開発しているReciProを用いた。
結果と考察 / Results and Discussion
“100”ラメラ;直方輝石(部分的にピジョン輝石)ラメラの界面は比較的平坦になっている。一方、ピジョン輝石ラメラでは界面がレッジ上になるとともに特に左側ではpigとaugの格子の境界がはっきりしない。“001”ラメラ;ラメラの界面が波打っているとともに(図1)、境界線が不明瞭になっている。EDSマップ;ラメラの界面がシャープではない。特に“001”ラメラのFeとCaでは界面が明らかにぼやけている。これは界面領域での構造の乱れと対応していると考えられる。以上の結果より、aug-pigラメラの界面は、Robinsonらが示したようなシャープな界面(図2)で両相が接しているとは限らず、むしろ波打った界面であり、さらにその周辺部も結晶構造の乱れがあり不明瞭な部分が存在するようである。現在までのところ、この傾向は“001”ラメラの方が顕著である。今後はマクロな界面の方位と、ミスフィットに伴う歪みにより生じる弾性エネルギーとの関係も考慮する必要があるのではないかと考えている。今後は、界面の方位、特に(100)や(001)とマクロに見たときの界面の角度、並びに界面近傍の構造を交えた系統的な分類を行い研究を進める方針である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 普通輝石ーピジョン輝石の界面構造。界面が平坦ではなく、不明瞭であることがわかる。
図2 Robinsonら(1977)に示された界面構造のモデル。赤の破線が (100)面、青線が ”100”面である。図1と結晶学的方位を同じにしています。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
参考文献;[1] Robinson et al. (1977) Am. Min, 62,857., [2] Bollmann and Nissen (1968) Acta Cryst., A24, 546-557. Kitamura et al. (1981) Bull. Mineral., 104, 278-284., Kitamura et al. (1981) Proc. Japan Acad., 57, 183., Willaime and Brown (1974) Acta Cryst., A30, 316-331., [3] Y. Motoyoshi (1998) Jour. Geol. Sco. Japan, 104, 11, 794-807. 謝辞;本研究で用いた試料は九州大学理学研究院、宮本知治博士に提供いただいた。九州大学比較文化社会研究院、桑原博士には電子顕微鏡を利用する機会をいただいた。九州大学超顕微解析研究センターの鳥山研究員、福永博士、工藤博士には技術的なサポートをいただいている。本研究は文部科学省「マテリアル先端リサーチインフラ事業」の支援を受けた。以上の各位にお礼を申し上げます。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 藤昇一、2024年度顕微鏡学会、2024年6月3日
- 藤昇一、2024年度日本鉱物科学会年会、2024年9月13日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件