利用報告書 / User's Reports

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【公開日:2025.06.10】【最終更新日:2025.03.31】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

24TU0148

利用課題名 / Title

酸化物表面の高分解能組織観察

利用した実施機関 / Support Institute

東北大学 / Tohoku Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

原子薄膜/ Atomic thin film,電子顕微鏡/ Electronic microscope,集束イオンビーム/ Focused ion beam


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

加藤 真也

所属名 / Affiliation

早稲田大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

今野豊彦,長迫実,竹中佳生

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

TU-504:超高分解能透過電子顕微鏡
TU-507:集束イオンビーム加工装置
TU-508:集束イオンビーム加工装置
TU-521:プラズマ集束イオンビーム加工装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 光通信の分野で積極的に用いられる酸化物として、シリカガラスは可視、近赤外域全般で高い透明度を誇り、光・通信産業デバイスの基盤材料として広く使われている。特に光ファイバーが可能にした長距離光伝送技術は今日の情報処理技術の重要なインフラ技術といえる。その光ファイバーをベースに、一部を光の波長よりも細く加工したデバイスが光ナノファイバーである。光ナノファイバーは通常の光ファイバーと低損失に接続が可能であり、なおかつ光ナノファイバー部から導波路外に染み出すエヴァネッセント場を用いて導波路外の原子系とのインターフェイスも実現できる特異な光デバイスである。光ナノファイバーを伝搬する光は波長よりも狭い導波路部分に集中するため、容易に高い電場振幅を実現が可能で、非線形光学、量子光学に応用できるデバイスとして注目されている。
 光ナノファイバーを含め、エヴァネッセント場を用いた光デバイスは近接場の効果を巧みに利用することで通常の自由空間で結像、集光する光デバイスとは異なる機能を実現できる。しかし、近接場の効果はその表面状態に強く影響を受けるため、シリカガラス表面状態の制御や機能化がデバイス設計において非常に重要になる。
 そこで本研究では、様々な条件で作成したシリカガラスデバイスの断面サンプルを、FIBを用いて作製し電子顕微鏡でその構造の詳細を調べた。特に原子層堆積装置(ALD)を用いたアルミナ成膜の影響や、原子系として想定しているイッテルビウム原子の影響を精査した。

実験 / Experimental

 観察するサンプルは、シリカガラス製の光ナノファイバーと、平板でより観察が容易なシリコンウェハー上に形成した熱酸化膜を利用した。それぞれ光デバイスとして利用する時に想定されるイッテルビウム原子蒸気にさらした形でサンプル準備を行い、アルミナのALD成膜の有無やデバイスの加熱処理の有無でその違いを検証した。 電顕サンプルは最表層をグラファイトペースト等で保護した後、Gaイオンを用いたFIBで作製、観察は加速電圧200kVの原子分解能を有する収差補正電子顕微鏡を用いて行った。
 FIBで作製した断面サンプルと電子顕微鏡での観察の例を図1に示す。このサンプルはシリコンウェハー上の熱酸化膜に対し、アルミナALD成膜を行いさらにイッテルビウム蒸気にさらしたものである。さらにこのように準備したサンプルに対してSTEM-EDSを通じて原子分析と位置のマッピングを行い、その構造の同定を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

 今回準備したサンプルではいずれのケースもALD成膜されたアルミナ、イッテルビウム蒸気由来の堆積した酸化イッテルビウム層といった層構造が観察できた。シリコン、アルミニウム、イッテルビウムといった構成元素から考えると、それらの間での酸化還元反応によってシリカの構造に変化が出ることが想定された。ところが今回の観察の範囲では特徴的な構造変化や結晶化といった変化は観測されなかった。ギブズエネルギー変化からは、酸化シリコンと酸化イッテルビウムの中間に位置する酸化アルミニウムがデバイス上に存在することで、シリカから酸素が奪われる過程が緩和されることが期待できる。デバイスの晒される環境条件や温度によってアルミナによるシリカの防護効果に相応の変化が想定されるのでその過程を定量的に測定することが次の課題の一つと言える。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 断面サンプル像(それぞれの素性に応じた層構造が観察できる)


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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